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Highlighting JAPAN

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日本の世界遺産

歴史を感じながら一夜を過ごす(仮訳)

日本の2つの集落には、合掌造りという名で知られる独特な建築様式を持つ家屋が存在する。ここでしか目にすることのないこれらの家屋には、当地の環境に耐えつつ、利用する工夫が凝らされている。

丘の上に立って白川郷を見渡すと、旅行者は眼前に広がる景色に目を疑う。山あいの狭い谷には青々とした水田が広がり、厚いかやぶき屋根の伝統的な農家の家屋が立っている。この景色を前にすると2015年ではなく、まるで2世紀ほど前の景色を見ているような感覚になる。これらの独特で歴史的な家屋は1995年にユネスコの世界文化遺産に指定され、白川郷とここに近接する富山県の五箇山でしか見ることができない。

合掌造りという名前は、急勾配の屋根が合掌する時の手の形を連想させることが由来だ。これらの家屋は当地の環境に合うように綿密に設計されている。和田正人氏は合掌造りの民俗資料館「和田家」の館長を務めており、来館者に三角の屋根が日本アルプスの豪雪をどのようにしのぐかを説明する。急勾配の屋根面は東西を向いており、日照を最大限に利用して積もった雪を溶かすようになっている。さらに、屋根の間に位置する窓は南北を向いており、夏季の涼しい北風を利用するつくりになっている。屋根自体は釘を一切使用せずに組まれており、柔軟性があり地震や強風にも耐えられる。

合掌造りは農家の家屋以上の役割を持っている。上層階は当初、蚕の飼育場として使用され、1800年代に繁栄した日本の養蚕業を支えた。田島家養蚕展示館 館長の三島敏樹氏は「合掌造りと養蚕のどちらが先なのかは確かではありません」と語る。同展示館の来場者は作業中の生きた蚕を見学し、蚕の作ったマユを触ることができる。

この魅力的な集落を訪れた人の楽しみは、辺りの散策と写真撮影だけにとどまらない。白川郷は昔ながらの家屋が展示されているテーマパークではないのだ。今なお生活が営まれる生きた集落として、旅行者は数百年の歴史を持つ合掌造りの家屋に宿泊することができる。築210年の「民宿 ふるさと」を営む木村京子氏は宿泊客と同じ家屋内で眠るのだが、そのことを知った宿泊客の驚きを冗談交じりに語ってくれた。「私がどこで寝るのか聞かれることがありますが、どこかははっきりとは答えないようにしています」。

木村氏と話していると、チェックアウトを済ませたタイからの宿泊客が次の目的地に向かう準備をしていた。Supasin Laysirirojさんは、すでに日本を20回訪れているが、白川郷に滞在したのは今回が初めてだという。「私たちは日本の伝統的な生活様式を求めていたので、このような宿泊施設に泊まることにしました。東京ではこのような生活様式に出会えません」。

これらの独特な宿泊施設では、提供する食事も地元産にこだわっている。白川郷観光協会の村田朋之氏はこれを特筆すべき点に挙げている。「食べ物のほとんどは地元の食材を使用しています」。季節はもちろん一日の時間帯にもよるが、朴葉味噌焼き (朴の葉の上に具材と味噌をのせて焼いたもの)、そば、淡水魚のイワナといった白川郷の名産が宿泊客の食卓に並ぶ。なかでも村田氏のおすすめは、白川郷と五箇山の特産品である石豆腐 (固い豆腐) だ。

村田氏によると、この地域を訪れる旅行者には都市部の宿泊施設を含め多くの選択肢があるが、合掌造りの家屋に滞在するとまさに自分の家にいるかのようにくつろげる。また、世界遺産の指定を受けた伝統的な家屋に宿泊することは、「文化が形作られる様子を自分の目で見たい人」にとって、ここでしか味わえない貴重な体験になるという。



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