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Highlighting JAPAN

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女性の活躍

御手洗瑞子

ニッティングの友情(仮訳)

御手洗瑞子氏は、グローバルな経験とビジネスセンスを活かし、日本の小さな町でヒット商品と人のつながりを紡いでいる。


宮城県の気仙沼湾近くの小高い丘に建つユニークな建物では、気仙沼ニッティングの御手洗瑞子氏が、手編みのカーディガンやセーターを手がけ、マーケティングに打ち込んでいる。2013年6月に同社のCEO兼代表取締役に就いて以来、国内外で積んだ経験を活かし、人の絆と毛糸の商品を作る場所として、気仙沼ニッティングのブランディングに取り組んでいる。

1985年に東京で生まれた御手洗氏は、小さい頃から様々な国の人と出会ってきた。そして、世界は小さく、海外の友達を作ることは簡単であることを知った。その後、東京大学で経済学を専攻した御手洗氏は、「他人を支援する能力を身につけたいと思っていました。しかし、まずは自分自身に、人の役に立つための能力が必要であることに気が付きました」と話す。

マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社でコンサルタントとして数年勤めた後、2010年に御手洗氏はブータンの国民総幸福委員会に首相フェローとして加わった。ブータンでは自給自足と相互支援について多くを学んだ。御手洗氏はそこで同じ目線で人と接し、自分の思いを自由に伝えることが大切だと感じた。

東日本大震災後、日本に戻った御手洗氏は、コピーライターや俳優、ゲームデザイナーとして活躍する糸井重里氏のプロジェクトをリーダーとして支援するため気仙沼に入った。そこで気仙沼に暮らす人々が、ブータンで出会った人々と同じくグローバルなマインドを持っていることに気づき、気仙沼こそがみんなで力を合わせて何か新しいものを生み出す場所だと感じた。

気仙沼は漁船で溢れている。スペインのラス・パルマス・デ・グラン・カナリアといった地球の裏側にまで行き、漁をする。リスクは高いが、同じように収益も高いビジネスである。また気仙沼に住む人々の冒険心や進取の精神を揺さぶるビジネスでもある。気仙沼の人々は「海や外の世界に自然に目を向けている」のだと御手洗氏は話す。御手洗氏は、気仙沼漁師のセーターを編んできた歴史を、高品質なセーターやカーディガンを編むビジネスへと変えようとしている。

気仙沼ニッティングの第1号、MM01カーディガン (オークのボタン付き) はオーダーメイドで2012年に発売され、予約リストには現在100人以上が名前を連ねる。御手洗氏は注文品を仕上げることを急いではいない。世界に認められるブランドを作り上げるには、品質こそがもっとも重要だからだ。気仙沼ニッティングは、ニッティングのプロを養成するところから始めて徐々に編み手を増やし、100年もしくはそれ以上の歴史をかけて作っていくビジネスである。この3月には、子ども向けのニッティングワークショップを開催した。参加した子どもの多くにとっては初めての経験であった。

編み手たちは、毎週水曜日に集まってニッティング技術を磨く。みんな手に持った毛糸や針に集中しながら、楽しく健康でいるための仲間からのアドバイスや、気仙沼ニッティングの今後についての話題などにも耳を傾けている。

気仙沼ニッティングは将来的に大きな可能性を秘めていると御手洗氏は考える。同社の第4号セーターが7月に発売される。また、オランダの人気キャラクターであるミッフィーの誕生60周年記念のアートパレードの一環として編んだ、ミッフィー像のための赤いカーディガンと帽子が、国内の美術館を含む各地で展示される。

その一方、御手洗さんはフェイスブックを立ち上げるなどネットを駆使し、気仙沼ニッティングを広めるのに忙しい。「交流の場を設けることで、自分の着ているセーターを編んだ女性と友達になることができます」と御手洗氏。「質問をしたり、気仙沼について学んだりすることもできます。私たちは、商品を買ってくれる人をお客様というよりも友人として考えています」と続けた。

 



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