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Highlighting JAPAN

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日本の魚

脇役の魚たちを主役に変える(仮訳)

萩市にある道の駅「萩しーまーと」では、知名度が高いブランド魚に隠れて目立たない脇役の魚たちのおいしさをもっと広めるためにユニークな取り組みを行っている。

日本南部の山口県に位置し、アマダイやケンサキイカが有名な萩漁港。全国でも有数の約250種という水揚げ量を誇るが、多くの雑魚はその美味しさを評価されずにいる。開業15周年を迎える道の駅「萩しーまーと」では、「もったいないプロジェクト」として雑魚の知名度アップに成功した。そのユニークな取り組みについて、館長の中澤さかな氏にお話をうかがった。

「県外へ向けたブランド魚以外の萩の魚のPRと、萩地域の人々の魚食の充実を目的にした道の駅の構想が、萩しーまーとでした。萩しーまーとができる以前は、この萩漁港でこれだけ多種の海産物が水揚げされるということを地元の人々以外にはほとんど知られておらず、また、品質の良い魚はみな県外に出て行くので、地元の人は新鮮な魚が食べられませんでした。そこで、観光客向けでなく地元客向けの道の駅をつくり、そのような状況を改善したいと考えたのです」と中澤氏は語る。

「今でこそ地元客向けの道の駅は全国にありますが、開業した2001年4月当時はパイオニア的存在でした。現在は萩を舞台にした人気ドラマの影響もあって、県外からの来館者も増えていますが、多くは県内の来館者であることに変わりません」という。

2009年から5カ年計画でスタートした「もったいないプロジェクト」は、地元の漁協、水産加工会社、商工会議所や飲食店などから約30名が参加し、萩しーまーとがプロデュース役を務めた市をあげてのプロジェクトだ。

「地元の漁師に聞き込みをしたところ、それまで地元で丸干しや天ぷらとして消費されるのみだったキンタロウ(標準名ヒメジ)が、実は刺身でもおいしいと言われました。刺身としておいしい魚には力がある、つまり応用範囲が広いということなのです。白身の小魚であるキンタロウは、アマダイに似ていながらもっと味が濃く、調べていくうちにフランスでは『ルージュ』と呼ばれる高級魚の近縁種であることもわかりました。そこでキンタロウを『ジャパン・ルージュ』と名付け、イタリア料理の有名シェフである奥田政行氏の力を借りて『オイル・ルージュ』というコンフィを完成させたのです」。

中澤氏は続ける。「東京の帝国ホテルでディナーの食材として採用され、2011年1月のダボス会議の晩餐会に起用されたり、ローマ法王に献上されるなど、驚くような出世を遂げたのは、奥田シェフのおかげだと思っています。それまでは獲れすぎると漁師が海に捨てていた存在であったキンタロウでしたが、今では居酒屋で刺身3種盛りにも使われるくらい地元でもメジャーな存在になりました」。

現在、新しい取組みとして行っている「萩魚食王国プロジェクト」では、イタリア料理の片岡護シェフ、和食の野崎洋光シェフなどの協力を得て、アマダイの価値をこれまで以上にプレミアム魚としてイメージアップを図る試みを行っている。また、2015年7月からは「もったいないプロジェクトpart2」として、女性のみのチームで安く個性がある魚をユニークな商品に製品化し、全国にPRしていく準備を進めている。

「他の港でも雑魚を商品化する取り組みが進められており、私も指導に行っていますが、全国には可能性を秘めた魚がたくさんあるとつくづく感じます。まずはそうした魚の魅力を国内に広め、結果として海外にも伝わってくれればうれしいです」と中澤氏。

キンタロウの市場価格は5年前に1キロ平均200円だったが、現在は平均400円となり、最高値が1800円を付けたこともあるという。魚価が高くなりすぎたジレンマはあるが、地元の漁師たちの苦労を軽減するために魚価を上げるという目標は達成されたと中澤氏は微笑んだ。



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