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Highlighting JAPAN

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日本の魚

日本の台所を支える市場(仮訳)

そのときもっとも新鮮でおいしい魚が日本中から集まる世界最大級の市場、築地市場に迫る。

「世界最大級の水産物取扱量と出来高」がギネスブック認定されている東京都中央卸売市場築地市場(以下「築地市場」)。仲卸というシステムが世界に類を見ない魚の品質管理と顧客ニーズへのきめ細やかな対応を可能にし、新鮮な魚が当たり前に食卓にのぼる日本の食文化を支えている。

築地市場は1935年に日本橋にあった魚市場と、京橋の青物市場が移転して開場した。取扱品目は水産物約480種、青果物約270種に及び、1日当たりの取扱数および取扱金額は水産物1779t/15億5千万円、青果物(鳥卵・漬物含む)は1142t/3億1千9百万円に上る。一日当たりの入場者数は42000人(2002年11月調査)、入場車両数は約19000台、入荷から販売までまさに24時間活動する眠らない市場といえる。

「築地市場の最大の強みは、漁港直結の産地市場ではなく、消費地市場として日本最大であることです。基本的にここではすべての産地の海産物が手に入り、鮮魚についていえば日本中の一番良いものが揃っています。自然災害などで地方の漁港が一時的に壊滅的な状態になっても、必ずどこかから品物を調達することができます」と東京魚市場卸協同組合の島津修氏は話す。

「冷凍や加工品ものも含め実に世界中から集荷されるので、単に最高級のものというだけでなく、客の予算やニーズにあわせて最適な品物を提供できるのです。同じ魚でも、刺身で食べるのか塩焼きにするのかで一番おいしいものは異なります。そこまで踏まえてもっともニーズにあったものをおすすめできるのが、仲卸の目利き力です」。

インターネットの普及もあり、地方の漁港や漁師から直に品物を仕入れる客も増えるなかで売り手と買い手を仲介する「仲卸」の必要性が議論されることもあるが、このような「卸の集荷力」とコンシェルジュ的な「仲卸の目利き力」こそが、築地市場の強みといえる。

「大きな市場であるがゆえ、それぞれの業者が切磋琢磨してよりよいものを提供しているのも築地市場の特徴です。水産物でいえば卸売業者は7社ありますが、普通の市場は1社のみのことが多い。仲卸業者の数は630以上にのぼり、それぞれが客のニーズに合わせてきめ細かい対応をしており、蜘蛛の巣のように張り巡らされたシステムの各所でプロのチェックが入る築地市場の価値が理解していただけると思います」。

仲卸の存在によって可能になるこの市場の仕組みは、海外からの関心も高く、実際にベトナムからはこの仕組み自体の輸出打診もあるという。また、魚の輸出についても近年は東南アジア、香港、台湾、北米からの注文も増えているため、2016年に予定されている豊洲への移転に合わせ、個々の業者の負担を軽減するために東京魚市場卸組合が手続きの代行や簡素化を行うサポート体制も整備していく方針だ。

「2020年の東京オリンピック開催に向けて日本への関心がより高まる中、日本の食文化の素晴らしさを海外に広げる一助になることが我々の目標です」と意気込みを語る島津氏。あたりまえのように新鮮でおいしい魚が家庭や飲食店に供給されることは、日本の食文化において魚が重要であり続けることの土台である。築地市場はそれを可能にする、まさに日本の台所だといえるだろう。




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