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Highlighting JAPAN

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観光

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外国人が安心してひとり歩きできるまちづくり(仮訳)

ミシュラン旅行ガイドで京都、奈良と並び三つ星を獲得している岐阜県高山市。人口9万2千人に対し、2014年の外国人のべ宿泊客数約28万人というこの人気観光地は、日本三大美祭のひとつである高山祭り(残りの2つは京都の祇園祭と埼玉の秩父夜祭)、日本を代表する黒毛和牛ブランドの飛騨牛、国選定重要伝統的建造物群保存地区に選定された三町や下二之町大新町などの古い町並み、飛騨高山温泉や国指定伝統工芸品の一位一刀彫りなど、実に多くの魅力を持つ。町の魅力存分に国内外にアピールすることに成功している高山市のインバウンド観光事業への取り組みについて、同市海外戦略室の葛井孝弘氏にお話をうかがった。

「高山市が外国に向けた観光事業について本格的に取り組むようになったきっかけは、1986年に旧運輸省が選定した国際観光モデル地区に高山市が選ばれたことです。同年、『国際観光都市宣言』を行うとともに、観光案内誘導看板の英文併記整備をはじめとする改善を行ってきました。1996年からは『住みよい町は行きよい町』というスローガンのもと、ホームページの多言語対応という言語のバリアフリー、歩車道段差解消や公衆トイレ80カ所・民間トイレ50カ所以上の多目的型・オストメイト対応型化、宿泊施設のユニバーサルルーム設置や浴場のスロープ設置などの身体的バリアフリーに取り組んでいます。外国からもモニターツアーの参加者を募り、くみ上げた意見を政策に反映させてきました」と葛井氏は説明する。

実際に高山駅に降り立つと、まず駅前の大きな観光案内地図が目に入る。これは市が10言語対応の持ち歩き用観光マップとして配布しているプリント版と同じ仕様で、縮尺などが異なる複数の地図を見比べる手間がないようにとの心遣いが表れている。「ビジットジャパン案内所(旧i案内所)」には英語通訳が常駐し、支柱型40カ所、路面埋込型260枚の誘導案内は支柱型が日・英・中(繁・簡)・韓、路面埋込型が日・英表記だ。さらに市の中心部及び飛騨民俗村「飛騨の里」には公衆無線LANが整備されており、7日間無料で利用することができる。

葛井氏によると、「国土交通省による『ビジット・ジャパン・キャンペーン』事業がスタートしたのを契機に、2003年以降訪日外国人観光客が増加したことで、高山市の観光客数も順調に増えていると言えるでしょう。しかし我々は受身なだけではなく、ホームページの対応言語の追加、市内の宿泊・飲食関係者へ外国人観光客受け入れサポートための冊子の配布や研修会の実施、6言語対応の高山紹介DVDやパンフレットの配布、海外の旅行博覧会参加など、積極的な活動を続けてきました。2003年の約5万人から昨年の約28万人にまで外国人観光客数が増加した要因には、そうした努力もあったと思います」という。

高山のこうした取り組みは行政だけが行っているのではない。官民一体となって世界各国からの観光客を積極的に誘致するために、観光協会やホテル組合が市と共同で「飛騨高山国際誘客協議会」を設置し、海外に向けた効果的なプロモーションについて協議するなど、観光都市としての自覚を深め、意識を共有することも大切にしている。

高山駅には今日もたくさんの外国人観光客が降り立つ。古い町並みには、出格子の連なる軒下に用水が流れ、老舗ののれんが連なり、造り酒屋には杉の葉を球状にした「酒ばやし」が下がる。日本情緒あふれる町並みを歩いていても、頻繁に外国人観光客とすれ違うが、彼らがそれぞれの言語サポートを活用できることで心から観光を楽しんでいることが、肌で感じられる。日本を訪れる外国人観光客の急増加という追い風もあり、高山市の「外国人が安心してひとり歩きできるまちづくり」はこれからも順調に進んでゆきそうだ。

 



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