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Highlighting JAPAN

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日本のヘルスケア

テクノロジーとコミュニティーを通じた、

より健康的な都市づくり(仮訳)




つくばウエルネスリサーチ (TWR) はIT・データ分析を使い、各個人向けにカスタマイズされた運動プログラムを市民に提供することで、より健康的な都市づくりを創造している。筑波大学の久野譜也教授が設立し、筑波大学と連携しているベンチャー企業TWRが公言するミッションは、「日本全国を元気にする!」ことである。

TWRのe-wellnessシステムは、各参加者用にカスタマイズされた運動・栄養プログラムを提供している。プログラムの参加者は、最初に自身の体組成や食生活といった、身体および生活習慣の状態を評価される。そのデータにつき、筑波大学が過去10年にわたって蓄積した医学/生物学的データに基づいて、TWRにより開発されたアルゴリズムを用いて、解析を行う。そして、メタボリックシンドロームやその他の生活習慣病を予防するために、その解析に基づいて各参加者のための最適なプログラムを提供する。

参加者は、毎週、個別の運動指導スタッフ等による指導付きの運動教室へ参加し、推奨されたエクササイズを生活に取り込み、自身の歩数、体組成を確認していく。参加者の実施状況は、歩数計・体組成計により記録され、ITを活用することでクラウドのデータベースに蓄積されていく。集められたデータは、自動的に解析され、参加者にフィードバックするとともに、TWRにより分析され、現場の指導者に対するフィードバック、事業を展開する自治体に対する事業評価として活用される。プログラムの利用料金は各自治体が設定するが、月々の個人の負担金額は1000円から3000円程度と自治体によってさまざまだ。

低い出生率と人口の高齢化による医療費の上昇は、日本における重要な健康医療問題のひとつになっている。TWRのプログラムは、参加者の健康におけるリスク軽減を可能にしているだけでなく、個人および自治体の双方の医療費も減少させてきた。「我々は、サービスの対象範囲を個人ではなく自治体にしています。なぜなら、医療と健康は個人だけでなく地方自治体など大きな範囲で取り組むべき問題であると考えたからです」とTWR取締役、福林孝之氏は語る。

また、2011年からは、TWRは新潟県見附市や大阪府高石市など7都市と提携し、筑波大学とともにスマート・ウエルネス・シティー (SWC) e-wellnessプログラムという、歩いて暮らせるまちの創出をめざした総合特区の取り組みを実施している。e-wellnessシステムに参加した7都市3,000人を超す参加者を対象に調査を実施したところ、個人の体力を評価する指標である体力年齢が、プログラムを実施した15ヶ月間で68.9歳から60.5歳へと改善した。また別の研究では、プログラムを開始してから3年後の参加者の平均年間医療費は、非参加者群に対して10万円の抑制効果がでていることが確認された。

この取り組みは、筑波大学の調査で判明した「7:3の法則」、つまり、国民の30%のみが運動習慣があるが、残りの70%は概して健康づくりに興味がないという状況の改善にむけ、健康無関心層においても、街の再構成を図り、歩いてしまう環境・歩かされる環境を創出することをめざしている。一方、「3年間の実証をふまえ、これらの70%の人々が運動するように動かすのは難しい」と彼は語る。

そこで、SWCでは2014年10月から連携する自治体の市民に対して、ウォーキング、減量、健診結果の改善などの日々の努力と目標達成に対し、年間24,000円相当の報酬ポイントを得られるポイントシステムを実験的に導入することとした。獲得したポイントは、コンビニエンスストアで使える共通ポイントに引き換えたり、地元のお店で使える商品券に交換したりすることができ、健康づくりだけでなく子育て、地域経済にも効果が波及する可能性がある。

福林氏は、健康に関心のある人だけでなく、無関心な人にも健康づくりに参加してもらうには、地方自治体のような身近な機関が主導権を握ることにかかっており、TWRも科学的成果をもとに貢献していきたいと付け加えた。



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