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Highlighting JAPAN

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日本のヘルスケア

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ

誰もが医療へのアクセスを受けられるように(仮訳)



日本は国際的な保健分野の取組みを外交の重要課題に位置付け、日本の知見を用いて世界の健康課題の解決に貢献する「国際保健外交戦略」を2013年に打ち出した。その主柱となる考えが、全ての人が基礎的保健医療サービスを必要な時に負担可能な費用で受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)だ。

ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)は、2000年の国連ミレニアム・サミットで採択されたミレニアム宣言を基にまとめられ、貧困の半減、健康、平等や地球環境保全の推進など、8つの具体的な数値目標を掲げているものだ。そのうち3つが乳幼児の死亡率低減、妊産婦の健康改善、そして感染症予防だ。

外務省国際協力局 国際保健政策室室長の山谷裕幸氏によると、これらの課題をあらゆる途上国で解決するのは難しく、特にアジア・アフリカでは制度が未整備な国では難しいという。また、感染症だけでなく生活習慣病などの非感染性疾患や高齢化など、新たな課題への対処の必要性も高まっている。健康課題には地域格差や所得格差などがあり、すべての人に医療を届けることが急務である。

UHCの推進によって、誰もが、必要な時に経済的な不安がない状態で保健医療サービスを受けることができるようになる。「一人ひとりの人間の幸福度を上げること。それは日本の外交方針である人間の安全保障の理念です」と、山谷氏は言う。

これまで日本は、感染症を克服し、すべての国民が公的医療保険に加入することを達成し、健康長寿社会を実現しながら高齢化社会にも対応してきた実績がある。また、優れた医療機器や医薬品など、先端医療技術の分野は日本の得意とするところでもある。このような健康医療の歴史や、高いレベルの技術力を踏まえて、日本政府は健康医療分野を成長戦略の重点分野に位置づけ、官民一体で世界の保健課題の解決へ貢献しようと取り組んでいる。

UHCは各国の医療事情や発展レベルに合わせて推進されるべきものであり、画一的なものではない。例えば保健財政のシステム作りでも、租税による公的資金を投入するのか、医療保険基金のようなものを作って分担金負担を求めるのかなど、その方法は様々だ。

日本は、バングラデシュとの二国間援助として、妊産婦の健康改善に取り組む母性保護サービスプロジェクトを行っている。バングラデシュが進める母子・新生児の健康改善に係る保健政策実施のための技術協力を行うほか、コミュニティーの動員や病院施設の改修等の円借款も実施している。アフリカでは保健行政官などの人材育成や地域内ネットワークの強化を実施しており、インドネシアでも社会保障制度強化を目的とした技術協力を実施中だという。

また、開発援助終了後にその国が自律的に運営できるようなシステムを作り、サービスを供給し、そして専門人材を育成しなければならない。その点、日本の持続可能な開発支援のノウハウと蓄積は、UHCを推進する上で非常に貴重である。

2015年に8つのMDGsは達成期限を迎えるため、未達成な課題や新たに生まれた課題に対処する方法が求められている。日本はポスト2015年開発アジェンダの中でUHCを主流化しつつ、国際保健機関(WHO)や世界銀行、国連開発計画(UNDP)などのグローバルパートナーと連携し、二国間及び多国間の取組を実施していく方針だ。「究極的には,UHCの達成を通して人間の安全保障に貢献していきたいです」と山谷氏は締めくくる。

 



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