Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan September 2014>明日をつくるベンチャー企業

Highlighting JAPAN

previous Next

明日をつくるベンチャー企業

産地直送のアイデア

農家の女性が経営する農村レストランで地元の食材が楽しめる(仮訳)




近年、日本の農村では、地域の農産物を活用した特産品づくりや農家レストランなど、農家の女性による起業が活発に行われている。こういった起業は、農村女性の経済的自立や地域の活性化、そして都市と農村の交流に大きく貢献している。

岐阜県中津川にあるレストラン「バーバーズダイニング(おばあさんの食堂という意味)」を経営する株式会社菜っちゃん代表取締役社長の後藤展子氏もその一人。このレストランでは、地元で採れた旬の新鮮な野菜のみを使った料理をブッフェスタイルで提供している。

このブッフェでは、その日に採れた食材によって毎日メニューを変えている。旬の野菜は栄養価が高く、生産者の顔が見えるため安心・安全に食べることができる。形が不揃いで流通に乗せられない野菜も、有効に活用されている。地元野菜の味を知り尽くした農家の女性だからこそ引き出すことのできる料理は、健康志向の人をはじめとして、世代を問わずファンが多い。

後藤氏は今年で62歳。専業農家に嫁いだ後藤氏は2000年、農家の主婦約20名とともに、商店街の空き店舗を活用した「アグリハウス菜っちゃん」という野菜の直売所の運営をはじめた。直売所は、農家と消費者を直接結びつける場となり、地元農家にとっても、「野菜を直接売れる場所」として歓迎された。

その頃、後藤氏は同じ中津川で農作物などを生産している株式会社サラダコスモの中田智洋社長に出会った。中田氏は地元で農家の女性たちで運営する食堂をつくってはどうかと提案した。後藤氏はもともと人と繋がっていたいという気持ちから将来は喫茶店をやりたいと思っていた。調理師の免許を取っていたこともあり、開店を決めた。直売所のグループ内で話し合い、法人化を決意。全国各地の女性が経営するレストランを視察するなどして、2006年9月に「株式会社菜っちゃん」を設立し、3ヶ月後の12月に「バーバーズダイニング」を開店した。

農業とレストラン経営とういう仕事の忙しさによってスタッフが辞めていったり、農業の傍らで起業したことで一部の農家から陰口を言われたりするなど、会社の経営は決して順風満帆ではなかった。しかし出資者からの応援を励みに、まずは10年続けようと自らを奮い立たせた。

転機は開店4年目に訪れた。テレビでこのレストランが取り上げられたことで、全国からお客さんが訪れるようになり、お店の売り上げも一気に伸びた。

後藤氏自身、2009年に岐阜県で初めて農林水産省の「地産地消の仕事人」に選ばれた。農家が生産した野菜を納品する直売所を作り、中津川の農家と消費者を直接つないだことが、地域の農業活性化に貢献したと評価されたという。

後藤氏はあくまでも手作りにこだわっていると話す。「大きな飲食チェーン店だと一ヶ所で調理するので、どのお店でも同じ味です。チェーン店にはない温かみやおいしさを感じていただけると思います」と後藤氏。今日も彼女は自厨房に立つ。「サービスとは手間をかけておもてなしすることだ」という言葉からは、食べ物を安心・安全に、そしておいしく食べてほしいというお客さんへの心くばりが感じられた。

 



previous Next