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Highlighting JAPAN

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国際協力60周年

フィリピン・ミンダナオ島における平和構築(仮訳)




「バンサモロ」と呼ばれるフィリピン・ミンダナオ島に暮らすイスラム教徒たちは、人口の9割がキリスト教徒というフィリピンにおいて、苦悩の歴史を歩んできた。1970年には、分離独立を求めるイスラム武装勢力「モロ民族解放戦線(MNLF)」が発足し、分離独立を求める武装闘争に発展した。その後、MNLFと政府との和平協議に基づき1990年に「ムスリム・ミンダナオ自治区(ARMM)」が設立され、1996年に政府との和平合意が締結されたが、MNLFから分派した「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」が引き続き独立闘争を継続した。2001年、政府はマレーシアの仲介によるMILFとの和平交渉を開始し、2012年10月に和平枠組み合意に署名、2014年3月包括和平合意の調印に至った。2016年にはバンサモロ新政府が設立する。40年間におよぶ紛争による死者は十数万人、国内避難民は200万人にも上るといわれ、長引く紛争による貧困の問題も大きい。

ミンダナオ島において日本は、国際コンタクト・グループ(ICG)、国際監視団(IMT)に参画し、MILFとフィリピン政府による和平プロセスを支援してきた。さらに、J-BIRD(JAPAN-BANGSAMORO Initiatives for Reconstruction and Development)と呼ばれる日本独自の支援体制により社会経済開発を通じて和平プロセスに支援を行っている。和平合意前から平和構築に関わるのは日本としても初めてのことだ。

J-BIRDによる支援は、地域住民、コミュニティレベルでの直接的支援であることが特徴で、350以上の村で学校、農業施設、保健所などの建設、インフラ整備、女性職業訓練センターや寡婦を対象としたシェルターの設立などを行ってきた。

JICA平和構築・復興支援室の落合直之氏は、フィリピン駐在を含めこれまで計13年間フィリピン支援に携わってきた。2010年にはIMTに赴任し、約2年間にわたってバンサモロの人々とともに暮らした。「豚肉や飲酒を禁じるイスラム教徒と同じように暮らし、ラマダン(断食月)も経験しました」と当時を振り返る。紛争で破壊されたままの小学校の再建工事、また、何十年にもわたって敵対していたクリスチャンとムスリムの子供たちを同じ学校に通わせるため、保護者同士の交流にも力を注いだ。こうした現地の人々と信頼関係を築きながら進める地道な活動がJ-BIRDの原動力となっている。

バンサモロ政府の本格始動までは、新政府で運用する法案作りや行政官の人材育成を行っていく。道路などの社会インフラの計画作りなど、中長期的な経済開発も進んでいる。

また、ソバ栽培やバナナ栽培に適している環境を持つミンダナオ島は、新たな一次産業の産地として日本の民間企業からも注目されている。日本企業が進出すれば経済発展も期待できるが、治安が安定しなければそれも難しい。貧困問題の解消を進めるにあたっても、平和な状況があってこそである。

「大切なのは国とコミュニティの信頼関係を築くこと」と話す落合氏。新政府樹立に向けて数々の課題はあるものの、バンサモロの人々の平和のために、これまでと変わらぬ地道な一歩を積み重ねていく。

 

駐日フィリピン共和国大使マニュエル・M・ロペス閣下インタビュー

日比関係はとても強固で、現在おそらくかつてないほど良好な関係になっております。実際に日本の海外直接投資とODAは、近年フィリピンの経済成長を著しく促進させています。日本は、フィリピンにとって第1位の二カ国間貿易輸出先であり、第3の直接投資国です。また、第1位のODA供与国であり、我々が切望するインフラを提供してくれ、大変な助けになっています。

また、ミンダナオ島における平和プロセスに対する日本のサポートに関しても、住民はとても肯定的です。日本はすでに、現地のイスラムコミュニティーに対して多くの支援をしていますが、さらにJ-BIRDによる技術的援助や雇用創出によって生活向上の機会が創出されたことで、住民は現在平和に暮らしています。この平和こそが何よりも大きな恩恵です。日本は、2011年にアキノ大統領とMILFリーダーの話し合の場を日本国内で設け、両者の間に信頼を築くことに寄与しました。それゆえ、我が国は、2014年3月27日に両者の間に締結された画期的な平和協定に至る和平プロセスの道筋をつけてくれたことに対し、日本に多大なる恩義を感じております。

今後も日本がミンダナオ島発展の促進に寄与してくれるだろうと信じています。平和協定が締結されたことにより、バンサモロ自治政府が安定し、日本政府および日本企業がその地域において投資を行えば、現地の人々に雇用創出と機会が提供されるでしょう。農業を通じて、あるいは工場の設立により、人々の雇用が生まれ、生活水準が大幅に向上されることを期待しています。

ありがとうございます。

 



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