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Highlighting JAPAN

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科学と技術

藻類が秘める力

実用的なエネルギー源として藻類バイオマスを開発(仮訳)



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石油をはじめとした化石燃料はあと数十年で枯渇するといわれるなか、再生可能エネルギーのひとつとしてバイオマス資源に注目が集まっている。筑波大学生命環境系の渡邉信教授が中心となり、藻類バイオマスの実用開発に向けた研究が進められる。

再生可能エネルギーというと電力利用をイメージしがちだが、実際には、日本におけるエネルギー全体の利用形態のうち、電気は2割程度に過ぎず、5割は輸送用ガソリンなどの燃料や、プラスチックなどの石油製品の原料として使われている。つまり、電力を生み出すだけでなく、燃料や原料としても使用可能な石油代替資源が必要とされているのだ。

その点、藻類は光合成の代謝産物として、効率的に代替資源となるオイルを製造することができる。穀物を原料とするバイオ燃料の場合は原料として使うことで、食料や飼料の価格が高騰につながるリスクがあるが、藻類はそのような問題が起こらない。

藻類の中には細胞内に多くの脂質を含む種があり、その脂質がオイルとなる。とはいえ、藻類には記載されているだけでも約4万種もあり、未記載種を含めると30万から1千万種以上の藻類があると考えられている。効率良く、低コストで、安定的に燃料を作り出す藻類のセレクトが大変重要だ。そんな中、渡邉教授がバイオマス資源として着目したのは、ボトリオコッカスとオーランチオキトリウムという2種類の藻類だった。

ボツリオコッカスは光合成により、燃料に適した重油に相当する炭化水素を作り出すことができる。しかし、光合成により増殖するボトリオコッカスの大量培養を行うには、1年を通じて低温期が長く日照時間が短い日本の気象条件がハンデになってしまう。

そこで登場するのが、渡邉教授のチームが発見したオーランチオキトリウムだ。光合成をせず、有機物を餌に増殖するオーランチオキトリウムは、炭化水素含有量はボトリオコッカスと比べて若干少ないものの、増殖スピード、炭化水素生産効率ともにボトリオコッカスをはるかに上回る。オーランチオキトリウムは、光がなくてもいいので、深いタンクで培養できる点も、国土の狭い日本に向いている。オーランチオキトリウム増殖に必要な餌には、不要になった有機廃水や下水からの活性汚泥を使えば、できるだけ少ないコストで効率よくエネルギーを作り出すことが可能になる。

渡邉教授の構想は、この2つの藻類の強みと弱みを互いに補完し合う「ハイブリット・システム」で、有機廃水をつかったオーランチオキトリウム培養廃水の中に残った窒素やリンをボトリオコッカスの培養に利用する。さらに、オーランチオキトリウムとボトリオコッカスからオイルを抽出した後に残った残渣を家畜の飼料などに活用するなど、循環型システムとして確立することが重要だという。

研究では、さらに生産性を高めるための藻類の品種改良を含めた技術開発を行うが、技術的な問題以上に、下水処理システムや農地などと連携した大規模なシステム化が必要となってくる。「日本という国を挙げての連携体制の確立が不可欠だ」と渡邉教授は話す。藻類が日本を産油国にする日は少しずつだが着実に近づいている。



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