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Highlighting JAPAN

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地方の活性化

生活を一新する(仮訳)

上勝町


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徳島県上勝町は高齢者の雇用を生み出し、地域活性に成功した町として日本で有名である。その立役者である横石知二氏に、独自のアイデアから生まれたビジネスにおける成功までの道のりについてお話をお伺いした。

1979年、横石氏が徳島県上勝町にやって来たとき、町は人口減と高齢化に悩まされていた。その後1981年に襲った異常寒波により、上勝町の主力農産物であった温州みかんの収穫量が激減し、町の農業を支援する役割がある農協に勤務していた横石氏にとっては大問題であった。

横石氏は1986年、ある和食レストランでの食事中に、料理のつまとして添えられている葉っぱを家に持ち帰る客を多数見かけた。山岳部にある上勝町では、実にさまざまな葉っぱが採れるため、彼はこれが新しい農産物になる可能性があるとひらめいた。

しかし、葉っぱを収穫して売るという横石氏の斬新な提案に対しては反発も強く、最初の年に協力した農家はたったの4軒であった。売り上げもごくわずかなものだった。その時彼は、「顧客が何を求めているかを自分たちが分かっていない」と気づいた。

横石氏は、顧客が求めるものを知るために、初めは近くの大阪や京都を、そして後には日本全国を自費で回り歩いて調査を行い、農産物としての葉っぱの品質や見た目の向上、そしていつ何を収穫するべきかといった自らの知識を蓄えていった。

横石氏は、マーケティングと梱包の改善を計るとともに、効率向上の手法導入にも執念を燃やした。上勝町の農家に注文のFAXを送る際、生産意欲を高めるために手書きのメッセージを添えることもあった。

また横石氏は、顧客からのフィードバックを大切に受け止め、生産の計画を十分に練った。販売促進の努力も実を結び始め、1988年には売上高は18倍にも急増した。重要なことは、この町の多くの農家が参加するようになったことであり、その数は44軒に達したが、重要なことは、そのほとんどは高齢者であったことだ。

その後、横石氏はIT技術の活用にも着手し、POSシステムを利用して注文処理の迅速化を行った。特筆すべきは、平均年齢が70歳にもなる高齢者たちがPC利用に取り組み、注文処理、在庫管理、売上確認などを行っていることである。

このようにインパクトのあるビジネスを立ち上げたのだが、横石氏は単なる売上増にはとどまらない大きな波及効果があることに気がついた。彼によると、高齢者人口が同程度の他の自治体と比較して、有意義な仕事をする上勝町の高齢者は健康で、かつ病院に行く暇がないため医者にかかる回数が少なく、医療費が大幅に少ないのだと言う。

横石氏は1999年、葉っぱビジネスを本格化するために株式会社いろどりを設立した。町の人口はいまや2千人に満たないため、5年前から外部の人々、特に若者に上勝町を知ってもらうためのインターンシップ事業を開始した。その目的のひとつは、高齢化した住民が若者から新しい考え方を学ぶことができるという点にある。横石氏は、田舎では新しい情報に接する機会も少ないため、「年寄りが若者から価値ある情報をもらう」ためにインターンシップ事業が役立つのだと言う。また同様に、豊富な農業知識を持ち生活体験も豊かな高齢者から若者が学ぶことも多い。彼は、「健全な精神を保つためには、人々が知識や体験を分け合うことが非常に大切なことなのです」と話す。

また横石氏は、いろどりのプロジェクトは住民に早起きの動機を与えているのだと言う。そしてこのことこそ、まさに何よりも大切な「目的意識」に結びつくのだと強調する。そして最後に結論として、「私は、人々が目的意識を持ち、社会で果たすべき役割を自覚することが極めて重要だと考えていますが、高齢者においてはそのことが特に大切となるのです」

 



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