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Highlighting JAPAN

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和食

和食の「旨味」が世界の食を健康にする(仮訳)

村田吉弘インタビュー(京都老舗料亭「菊乃井」主人)

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2013年12月、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された。これまでも「フランスの美食術」「地中海料理」などが食に関する世界遺産として登録されているが、和食のように民族全体が日常的に食べてきた食事システムが食文化として登録されるのは、初めてのことである。和食の魅力はどこにあるのだろうか?京都の老舗料亭「菊乃井」主人であり、和食の普及活動に取り組むNPO法人「日本料理アカデミー」の理事長を務める村田吉弘氏にお話を伺った。

――和食が世界遺産に登録されましたが、最も評価された点はどこだと思いますか?

一つ目は「祭事と食の密接な関係」です。元旦の午前中に全国的におせちを食べたり、地域コミュニティにおいて「芋煮会」などの食イベントが行われたり、食生活を中心にした文化やコミュニケーションが根付いていることが挙げられます。二つ目は「季節感」。三つ目は「素材の持ち味を大切すること」。そして四つ目に「ヘルシーさ」です。

――和食文化が生まれた背景としてどのような歴史がありますか?

日本は約200年間鎖国をしていた国であり、文化的背景としては四足のものを食べない「仏教文化」がありました。この時代に、和食は独自の発展を遂げたと考えられます。また日本人の真面目さ、研究熱心さは日本の食材のクオリティ向上に大きく貢献したと言えるでしょう。野菜にしても果物にしても、日本のものは本当においしい。世界からの評価も大変高いです。これは農業を営む人々の努力の賜物です。

――和食特有とされる「旨味」に対して、海外からどのような反応がありますか?

世界のベストレストラン1位を獲得したデンマークのレストラン「ノーマ」のシェフ、レネ・レゼピ氏は和食も勉強し、鰹節ならぬ鹿節を作って自身の料理に「旨味」を与えています。他にも世界中の若手シェフたちが、和食を熱心に勉強し、「旨味」をそれぞれの料理に活かしています。現在、フランス国内だけでミシュランの一つ星、二つ星を持つ日本人シェフがいるレストランは20軒ありますが、彼らが作る料理が高く評価されていることからも、海外でも「旨味」がわかる人が増えているということでしょう。フランス料理は油脂を多用しますが、「旨味を上げれば油脂を減らしても食べた時の満足度は変わらない」という研究結果も出ています。「旨味」は、世界の食をより健康なものへ導くことができる存在なのです。

――確かに、和食がヘルシーであることは世界でもよく言われていますね。

フランス料理をコースで食べると23品目の食材を使って2500kcal。一方、懐石料理はデザート前までで69品目の食材を使いながらカロリーは約1000kcal。コース料理でこれだけの食材を使い、なおかつこんなに低カロリーなのは和食だけです。

――和食をより海外に広めるために力を入れるべきことは何だと思いますか?

和食はいま、ようやく苗木になったときです。これから和食が、世界中に枝葉を伸ばす大木になるまで、「和食はこうあるべき」といった狭い定義づけをせず、その国の人々が受け入れやすいかたちで広めてもらうことが大切です。若手シェフが日本に来て和食を勉強できる制度を整えるなど、官民が一丸となって、世界に向けて頻繁に情報を発信していくことが重要だと思います。





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