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Highlighting JAPAN

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水と生きる

オンリーワンの技術でエコロジカルな水処理を実現

日本原料株式会社(仮訳)



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世界の人々の多くは安全で、信頼できる飲料水を浄水場に頼っている。水道水を作るための濾過段階では、天然の砂を原材料としたろ過砂が、水の中に含まれる汚泥などの濁質の除去に使用される。

日本の水道水をつくる浄水場で使われているろ過砂の80%以上は、齋藤安弘社長が率いる日本原料株式会社が供給している。この会社は1939年の創業当初はガラスの原料となる砂をふるい分ける仕事を行っていた。戦後、壊滅的だった日本の浄水システムを再構築する際、砂の業界で経験を持つ同社に白羽の矢が立ち、日本のろ過水事業の発展の牽引していった。

「ろ過砂は一粒あたり直径わずか0.6ミリほどですが、その表面に汚れが付着して肥大化すると、ろ過能力が低下します。かつてはそうしたろ過砂は約7~8年で廃棄・交換されていましたが、ろ過砂に適した砂の絶対量が限られていることから、いずれ資源は枯渇してしまうことになります。そこで日本原料はろ過砂の洗浄リサイクルを行うようになったのですが、水道原水の水質悪化などで、1970年代に入ると従来の洗浄方法では、満足なレベルのろ過砂洗浄ができなくなっていったのです」と齋藤社長は説明する。

そこで日本原料では、さまざまな試行錯誤を繰り返し、縦横双方の渦を生じさせることで3次元での砂同士のもみ洗いを可能にする「シフォン式ろ過砂洗浄機」と名付けられたろ過砂洗浄機を開発した。この画期的な洗浄技術は薬品を使わずに物理的な作用だけで洗浄するため、従来出ていた産業廃棄物を出さない。

歩くとキュッと鳴る「鳴き砂」の原理にヒントを得た「シフォン洗浄」は、砂の粒径を壊さず汚れだけを剥離洗浄し、なおかつ砂粒の破砕や摩耗が起こらないために、その濾過能力も半永久的に落ちない。文部科学大臣表彰科学技術賞、全国発明表彰をはじめとする数々の賞を受賞し、世界33か国で特許を取得している。

2002年にはシフォン洗浄をろ過装置に組み込んだ「シフォンタンク」を開発。シフォンタンクとは、ろ過材の交換を行わなくても常に安定したろ過水水質を得ることができるろ過装置である。排水が大量に出るなど、産業廃棄物を削減したいという企業やプロジェクトから注目を集め、ゼロエミッション(生産や廃棄、消費に伴って発生する破棄物をゼロにすることを目的とする運動)へ、大きく貢献することとなった。また一般的なろ過装置では、清浄な水を装置下部から吹き上げることでろ過砂の汚れを浮かせて除去する逆流洗浄が日常的におこなわれているが、「シフォン洗浄」の導入により、逆流洗浄に使用される水量や使用電気量の削減効果もある。

2005年に開発された、移動式砂ろ過浄水装置である「モバイルシフォンタンク」は、「シフォンタンク」をコンパクトにし、軽量化した製品で、開発されたまさにその年には、九州地方を襲った台風で打撃を受けた宮崎市富吉浄水場に配置され、被災地へきれいな飲料水を提供した。国内の活動だけにとどまらず、「最近では2013年11月に台風で打撃を受けたフィリピンでもJICAと共同で支援活動を展開しました」と齋藤社長は言う。モバイルシフォンタンクが5カ所の村々でおよそ2万人分の水を供給してきた。

被災支援の人道的貢献に加えて、シフォンシリーズ製品は現在アジア全域から注文が増えている。一方ヨーロッパでは、2005年に初めて出店したドイツの展示会で、シフォン洗浄の技術に惚れ込んだエコトロン社との共同開発の結果、ドイツの公営プールでシフォン洗浄が活用されている。

今後、より一層エコロジカルなアプローチがもとめられる浄水の分野において、「これからの時代、地球にやさしいシフォン洗浄には大きな可能性があると信じています」と齋藤社長は語る。


水を再利用する“中水道”とは?

中水道とは雨水や排水を再生処理し、雑用水などに利用する水のリサイクルシステム。上水と下水の中間に位置することから中水といわれ、トイレ洗浄水、消火用水、洗車用水、冷却・冷房用水、散水など人体と直接接しない目的や場所で用いられる。
水不足への対策や排水量の削減、河川や湖などの水質保全、水道の給水制限時や災害発生時における生活支援など多くの効果があり、都市内に存在する貴重な水資源となるため多くの自治体や大型施設、新幹線などで導入されているほか、一般家庭においても風呂の残り湯を洗濯に利用したり*、雨水を溜めて家庭菜園に使ったりと中水利用への関心が高まっている。
(*日本人は入浴する前にシャワーを浴びてからバスタブに入る人が多いので、風呂の残り湯は比較的きれいである)

 



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