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科学と技術

スーパーコンピュータ「京」: 科学のベストパートナー (仮訳)



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「K」は1兆の1万倍 (1016) を意味する漢字「京」の読みを表したものであり、世界で第4位の計算能力を有するスーパーコンピュータの名称だ。

日本における自然科学研究機関の一つである理化学研究所がエレクトロニクス企業の富士通の協力を得て開発した「京」コンピュータは、神戸市ポートアイランドにある理研計算科学研究機構 (AICS) に設置されている。「京」コンピュータは、文部科学省 (MEXT) が推進する革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ (HPCI) の一部である。

スーパーコンピュータは、科学上の最も難しい課題を解決するアルゴリズムの開発を目的に、数万個ものプロセッサーを使用してこれまでにない計算速度を実現する。「京」コンピュータの場合は、2.0 GHz・8コアのSPARC64 TMVIIIfxプロセッサーが82,944個も使用されており、それらは864個のキャビネットに収納されている。各キャビネットには96個のコンピュータ用ノード(計算機の集合)が入っており、さらに各ノードはプロセッサー一個と16GBのメモリーから構成されている。

理研の情報通信インフラを管理する情報基盤センター長の姫野龍太郎博士は、「それほどの計算速度を達成できたのは奇跡に近かった。これにより、不可能と思えるシミュレーションもできるようになる」と語っている。姫野博士は、6年間にわたって「京」コンピュータに関連した生命科学プロジェクトに携わっている。彼はプロジェクトリーダーとして、30を越えるソフトウェア・アプリケーションの開発に貢献してきた。

2011年6月に試験利用が開始された後、「京」コンピュータを利用した最初の公式研究プロジェクトが2012年9月に始まった。現在では、62のプロジェクトがあり、内訳は一般プロジェクトが29、若手人材育成プロジェクトが8、産業プロジェクトが25となっている。

これらの他に、最近のプロジェクトの中の一つに、NESTと呼ばれる脳神経シュミレーションソフトウェア向けの先進的データソフトの開発がある。ドイツのユーリッヒ総合研究機構、沖縄科学技術大学院大学 (OIST)、理研脳科学総合研究センター (BSI) の共同研究のもと、NESTチームは17億3,000万個の神経細胞が10兆4,000億個のシナプスで結合された神経回路に関して、「京」コンピュータの82,944個のプロセッサーを使用したシミュレーションに成功した。実時間では1秒間の神経回路のシミュレーションを行なうために「京」コンピュータを使用して40分必要であった。

国際協力はこれらの研究活動における重要な要素となっている。研究者のうち4名は、中国、韓国、ドイツ、英国の出身である。姫野博士が述べているように、「コンピュータのコーディングは海外の科学者の世界で国際的に受け入れられるものでなければ生き残ることはできない。海外ユーザーが利用しているということは、我々の成果が国際的な支持と信頼を得ていることの証拠である」。

フローレンス・タマ博士は理研における外国人研究者の一人である。彼女は元々フランスの出身だが、現在では計算構造生物学研究ユニットの研究ユニットリーダーを務めている。生体分子の運動と構造を理解することが彼女の研究グループの目標である。

タマ博士は、「『京』のようなコンピュータは、我々研究者が将来のグローバルな課題について考え、その解決策を見出す手段を提供する。私は、我々の研究活動の結果実現される進歩が社会に対して非常に大きな影響を与えると考えている。理研、そして日本は、国際協力に対して極めて開放的であり、有用な資金援助制度もいくつかある。そのような共同研究は、科学者の世界においてはアイデアを共有するために非常に重要なことなのだ」と語っている。

姫野博士がおそらく最も簡潔に表現しているように、「世界には多くの言語があるが、『京』のようなコンピュータでは共有する言語は一つである。国家間には国境があるが、科学には国境はないのだ」。



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