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Highlighting JAPAN

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連載 47の物語

群馬県 草津温泉



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群馬県草津町は東京から約3時間のところに位置する有名な温泉地。100を超える温泉浴場があり、治癒効果を持つともいわれる天然の温泉水に浸かるために、多くの人々が訪れる聖地となっている。

草津バスターミナルは観光客を迎え入れる中心地で、3階には草津町温泉資料館がある。ここでは草津の歴史、様々な伝統、地元の名士、温泉産業の発展などについて、詳しく学ぶことができる。

温泉は自然の地質現象に由来する。火山ガスによって熱せられた地下水には、地表に湧き上がるまでに様々なミネラルが染み込む。そのため、温泉は独特な色を有しており、初めは酸性度が非常に強いものの、特別な過程を経て石灰岩により中和される。温泉は耐酸性のポンプによって高い場所まで運ばれる。また、草津市民は万代鉱を源泉とする湯を生活用温水として使用している。

町の中心部には「湯畑」がある。これは日本最大級の温泉で、エメラルド色の湯が屋外に設置された木樋を通り、小さな滝に流れ落ちる。湯畑を囲む石の手すりには、地元ゆかりの100人の名士の名前が記されている。

湯畑に隣接する「熱の湯」では、伝統的な風習である「湯もみ」を見ることができる。湯もみは踊りと唄を伴う草津の慣習だ。草津温泉の源泉は温度が高すぎて (50°Cから90°C) 入浴に適さないため、湯が多くの浴場に届けられる前に湯をかき混ぜる「湯もみ」の作業を行って温度を下げる。水を混ぜると治癒効果も薄められてしまうため、女性たちは木の板を用いて湯を冷ますのだ。

明治時代 (1868-1912) には隊長 (現在は「湯長」と呼ばれる) が、この作業を監督していた。作業が終わると、かき混ぜていた人たち自身も短時間湯に浸かり、柄杓を使って頭から水を浴びていた。今日では、一般の人たちも「湯もみ」に参加することができ、体験者には修了証が渡される。

草津の温泉を楽しむ方法はたくさんある。足湯、日帰り浴場施設、露天風呂のほか、周囲のホテルには民間のスパが数多く存在する。

草津には神社をはじめ、巡礼者たちから遥か昔に贈られた仏像も多く残っている。最も目立つのが癒しの菩薩であり、旅人や女性、子どもを守る存在の地蔵である。また、小さいながらも湯畑に勢いよく流れ落ちる美しい滝の上に位置する「湯滝灯籠」 (石灯籠) も見所だ。この灯籠は1830年に建立されたもので、内部のオイルランプが灯されると、かつてのように町の中心を照らす。

その他にも草津にはたくさんの作家や知識人を称える像がある。その中には2名の外国人医師の胸像も存在する。ドイツ出身のユリウス・スクリバ博士とエルウィン・ベルツ博士の胸像だ。明治時代、ドイツは医学の分野で最も進んでおり、両氏は東京帝国大学医学部に招聘されて教鞭を執った。スクリバ博士は日本政府のアドバイザーも務め、日本における西洋医学の発展に大きく貢献した。ベルツ博士はアドバイザーに加えて皇室侍医を務めたほか、草津の温泉の医学的な効能を研究した。ベルツ博士の功績を讃えるため、草津には記念館が建てられている。

「西の河原通り」と「湯滝通り」にはレストラン、工芸品店、軽食販売店などがあり、観光客は大いに楽しむことができる。熊本産の蜂蜜と自然食品を専門に扱う「杉養蜂園」、緑茶や饅頭を提供し、試食もできる「草津長寿店」の2店は特に有名だ。その場で蒸した新鮮な饅頭の味には、抹茶、小豆、ヘーゼルナッツがある。

周辺の群馬県山間部にも見所がたくさんある。最も有名なのは活火山の白根山で、草津バスターミナルからバスで30分 (運賃2000円) のところに位置する。標高2,160mの山頂や展望台に向かう登山道はいくつもある。周囲の景色は壮観で、火口湖の「湯釜」は氷のような青色(火山活動がなければ) をしており、徒歩で行くことも可能だ。

草津温泉のすべてを堪能するには、最低でも1泊は必要だろう。草津温泉は、群馬県に数多く存在する自然の不思議の一つを形成している。



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