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Highlighting JAPAN

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お盆



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日本の習わしである「お盆」について、学んでいきましょう!習わしとは、あることに関して年配者から若者へと伝えられるしきたりのことです。習わしにはとても古いものから新しいものまであります。お盆は大変古い習わしです。

ある夏の夕暮れに、田舎道を歩いていると想像してみてください。段々と暗くなる空には、燃えるようなオレンジ色の夕日とかすかな星が輝き、右手には、山々の影が見えます。それらの山からセミの鳴き声が流れてきて、薪火のにおいが鼻に充満します。

角を曲がると、台に置かれた大きなお皿の上で、木がぱちぱちと音を立てながら煙を出して燃えています。これが「迎え火」(迎え入れる火) です。火の横には古い農家へと続く門があります。きれいに掃かれた細い道が、玄関の扉まで続いています。門をやさしく開き、玄関先まで続く飛び石の上を慎重に歩くと、頭上には瓦屋根がぼんやり見えます。呼び鈴を鳴らすと、家の中から軽やかな足音が聞こえてきます。玄関の扉が開き、目に飛び込んできたのは、あなたの日本人の友だち、カオリの笑顔です。家の中からは、食事をしている音や人の話し声が聞こえてきます。靴を脱ぎ、廊下を通って主室に向かいます。そこでは、カオリの家族や親戚たちが長い机を囲んで座り、いろいろな料理を楽しんでいます。

日本人はお盆になるとみんな実家に戻ってくるのよ、とカオリは教えてくれた。お盆は普通、8月15日あたりから3日間続きます。お盆は大変古くからあり、その始まりを知る者はいない。日本人の多くは、お盆の時期にご先祖様が帰ってくると信じています。ご先祖様とは、亡くなった家族全員のことをいいます。カオリはあなたの腕を軽くつつき、“ご先祖様がたくさんいるので、この家は手狭になっている”と冗談を言う。少し気味が悪いと思うかもしれません。ご先祖様はもちろん亡くなっていますから、家にやってくるのはその精霊です。迎え火というのは、ご先祖様がお墓から家に辿り着けるようにするための目印なのです。家族やご先祖様の精霊を迎える準備をするために、お盆の前は家、庭、お墓の掃除をするので、とても忙しくなります。

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カオリは大きな木製の祭壇を指差します。奥には穏やかなお釈迦様の像が見えます。祭壇の前には食べ物を並べた特別な机があります。「これが『仏壇』で、机の上の食べ物は『お供え』よ」とカオリは言う。ご先祖様の精霊はお盆の間中、仏壇の中で過ごします。お盆の終わりには、「送り火」(見送る火) を焚き、精霊はお墓に帰ります。カオリは言います。「家族みんなでお墓にも行くよ。『お墓参り』といって、みんなを見守ってくれるようにご先祖様にお願いするの。ご先祖様のことを忘れていないことになるでしょ」

カオリからオレンジ色の提灯のようなものを渡されます。「これは『灯籠』で、中にろうそくを灯してお盆の最後の日に川に流すの。それを『灯篭流し』と言うのよ。精霊は灯籠と一緒にあの世に帰るの」

夜もふけてきました。カオリのお母さんが夕食の料理を小さな箱に詰め、日本の伝統的な布の「風呂敷」に包んで渡してくれました。私はお礼を言い、2人に玄関の扉まで送ってもらいます。カオリが言います。「お化けに気をつけてね」。「お化けって?」お化けは夜中に現れる奇妙な精霊とカオリは教えてくれた。私は用心して帰ると告げ、田舎道を戻って駅に向かいます。暗闇の中で、危うく小さな石像につまずきそうになりました。石像がタヌキに姿を変え、走り去っていくのに気づきません・・・あれは初めて出会った幽霊だったのです!



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