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Highlighting JAPAN

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連載|日本の博物館・美術館

本間美術館(仮訳)

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夏は、200年の歴史を誇る、美しく緑豊かな庭園を持つ本間美術館を訪れる完璧な季節だ。ジュリアン・ライオールが、くつろいだ気分で散策を楽しんだ。

山形県酒田市の豪商、本間家の当主が建てた別荘に趣を添える伝統的な日本庭園。その中心的存在かつ背景となっているのが、何キロも先に茫洋と姿を見せる鳥海山だ。まずもって庭園それ自体が1つの芸術作品である。そして伝統芸術に深い関心を寄せた本間家が蒐集した掛け軸、陶磁器、木版画の浮世絵、彫像、絵画などの見事なコレクションが、現在の本間美術館に彩りを添え、この庭園の魅力をさらに高めている。

「この山は酒田市民に愛され、この地域のシンボルとなっています」と、本間美術館の田中章夫館長は話す。「それゆえ、庭園の設計者は、庭園にこの山を組み込むことにこだわりました」

別荘の母屋である「清遠閣」(「清い鳥海山を遠くに望む御殿」の意)と庭園「鶴舞園」(「鶴が舞う庭」の意)は、1813年、本間家の4代目当主によって建築された。大名・酒井侯(1813〜73年)は、領内を視察する際しばしばこの別荘に滞在し、また、皇族や政府高官もこの別荘を訪れた。最も有名な賓客は、皇太子時代の昭和天皇である。1925年に病身の父、大正天皇に代わり、別荘を訪れた。清遠閣は2階建てで、2階部分は大正天皇の訪問に備え、1908年に増築された。広大な畳の間と金粉を吹き付けた浮雲の壁が特徴的だ。床の間には風景や動物を描いた掛け軸が飾られている。1階には六明廬(「6つの窓のある庵」の意)と呼ばれる茶室がある。2階は、広々と明るく、畳の香りが漂う。

手入れの行き届いた鶴舞園の中央には池があり、緋色と白の鯉がときおり水面を割って餌を食べにくる。トンボがスイレンの葉の間を跳びまわり、水面に浮かぶ岩に根を張ったもみじがある。岩の上を絶え間なく水が滴る。

清遠閣からは、鶴舞園がよく見渡せる。鶴舞園と名付けられたのも、あずまやのそばに鶴が舞い降り、はるかな鳥海山に向かって飛び去ったことに由来する。

散策すると、各所に驚きが待っている。石灯篭と赤い鳥居。竹林の中に隠れた小さな社。池を二分する二つの橋。木々の間では、鳥がさえずる。

清遠閣と鶴舞園は1947年に私立美術館として一般開放される。初期の展示には当地方の旧家から借りた作品も含まれていたが、作品の購入や寄付が進み、コレクションは早々に充実した。

展示品の中で特に人気の高いものの1つがひな人形である。1964年に寄贈された白巽コレクションは、70セット、200体を越える貴重な、古典的な人形から成る。

1968年には、新館も完成し、2500以上の作品を順次展示している。主な作品には、高麗時代の韓国で作られた青磁の碗、名陶芸家長次郎による手捏ねの楽茶碗、黒田清輝や円山応挙の絵画などがある。

訪問時には、鶴舞園で今なお目にすることができる魚、鳥、植物、樹木、岩、滝など、自然をテーマにした作品が展示されていた。

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