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Highlighting JAPAN

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特集環境に優しい次世代交通システム

進化する日本のITS技術(仮訳)

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日本ではITS(高度道路交通システム)が道路交通の安全性向上、環境保全、モビリティの向上を目指し導入が進められてきた。ジャパンジャーナルの澤地治が報告する。

日本では、二酸化多炭素(CO2)排出量の約20%は運輸部門が占め、その約90%が自動車からの排出による(2010年度時点)。自動車からのCO2排出削減のために、電気自動車やプラグインハイブリッドなどのエコカーの普及の他に、ITS(Intelligent Transport Systems)の導入が進められている。

ITSは、人と道路と自動車の間で情報の発信・受信を行い、事故、渋滞といった交通問題を解決するシステムだ。道路案内をするカーナビゲーション、VICS(Vehicle Information Communication System)、料金所において自動で料金を支払えるETC(Electric Toll Collections System) などが、代表的なITSである。ITSの活用により渋滞が減少すれば、CO2排出削減につながるのだ。

1990年代以降、日本はITSの普及により、交通渋滞の緩和やCO2の排出削減を実現している。日本では、2001年からETCの本格運用を開始し、現在、一日あたりのETC利用率は87%を超え、約650万台の自動車がETCを利用している。このような結果、日本全国の高速道路の渋滞の約2割を占めていた料金所渋滞が大幅に解消され、年間約21万トンCO2削減効果があったとされている。

また、2011年3月からは、「ITSスポット」のサービスが全国各地で始まっている。ITSスポットは、全国約1600カ所に配置され、高速、大容量の通信で、これまで以上の広範囲で詳細な交通情報を、走行する自動車に自動的に送る。例えば、トラックからの落下物など、道路上の障害物の情報は1km手前から送られる。また、進行方向の静止画像が表示され、渋滞や積雪など、事前に把握することも可能だ。都内を走る首都高速道の最も交通事故が多かったカーブの手前で、注意喚起情報をITSスポットから流すようにしたところ、事故が約60%も減少した。このように、多様な情報を入手可能なITSの実用化が進んでいるのは、世界中で日本が1番である。

さらに、ITSは災害時にも有用である。昨年3月の東日本大震災では、ITSの普及に取り組むNPO「ITS Japan」は、自動車メーカーや国土地理院の協力を得て、東北地方でどの道路が、通行実績があったのか、通行止めなのかが、一目で分かる地図情報を公開し、救援活動や物資の運送に大きく寄与した。災害時に、これほどの広い地域で、ITSが活用されたのは、世界で初めてとも言われている。また、首都高速道路のITSスポットからも、震災直後に注意警戒情報が流された。

日本はこうしたITSの技術を海外にも展開している。例えば、ITS JapanやITS関連民間企業は、中国に対するITSの技術支援を行った。そして、2008年から、北京、上海など4都市で交通情報サービスが開始、現在、16都市に普及している。また、国際協力機構(JICA)はインドの中南部のハイデラバード市において、ETCなどITS導入の支援を行っている。

来年10月、3度目の日本開催となる第20回ITS世界会議が東京で開催される。本会議は、「Open ITS to the Next」をテーマに、世界60カ国、8000名の参加を予定している。メインプログラムの一つとして、東日本大震災を教訓に、レジリエント(回復力のある)な交通システム構築のために、ITSがどのように役立つが議論される予定だ。

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