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Highlighting JAPAN

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世界一の絹(仮訳)

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福島県川俣町にある齋栄織物は、世界最高級の絹販売業者だ。この最も困難な時期にも、最高級品質の製品を追い求め続けている同社を、ギャビン・ブレアが訪れた。

福島県川俣町の齋栄織物によって開発された、人間の髪の毛1本のたった16%の薄さという妖精の羽のような絹は、世界市場で手に入る最も薄い絹だと言えるだろう。今年、ものづくり日本大賞で内閣総理大臣賞を受賞した、この極薄絹は、1500年近く川俣地区に存在してきたと言われる工芸品の中で最新の開発品だ。齋栄織物の齋藤泰行社長によると、この会社の絹の秘密は、薄くて軽いだけでなく、耐久性もあることだ。絹の色合いに変化を持たせるように縦糸と横糸を織ることもでき、動いたときに少しずつ色が変化してキラキラ光るように見える製品ができる。

現在、会社の従業員は17人。そのうち、絹生産に要求される極めて重要な5つの技能に対して、5人の「匠」がいる。その技術とは、新人がそのうちの少なくとも3つをそれぞれ学ぶとしても1年は費やさなければならないものだ。

川俣地区は、1世紀以上もの間、輸出用に絹のスカーフを手がけてきた。ただし、それは東京の南に位置する港湾都市から出荷されていたため、海外では「横浜スカーフ」として知られていた。

齋藤氏の父親は、横浜の商社で働いていた。その商社は福島県に絹を発送し、それがハンカチとなって港に送り返され、米国へ輸出されるといった事業を行っていた。 その後、取引していた会社がある川俣地区に引っ越すことを決意し、齋栄織物を設立した。

衣料業界や織物業界のほとんどの会社と同じように、齋栄織物はトレンドやファッションの気まぐれな変化に脆弱であった。

「現在の皇太子が1993年に雅子妃とご結婚された時、雅子妃が絹のスカーフを好んで使っていらっしゃったので、日本で『スカーフ・ブーム』が起こったのです。しかしそれ以来、絹のスカーフがあまり人気となることはありませんでした。」と齋藤氏は説明する。

そこで、地域の絹生産者は、ウェディングドレスや伝統的な和服など、新たな絹製品に目を付けた。齋栄織物の絹はその軽さにより、30年にわたって、デザイナーの桂由美氏のウェディング・ドレスに、よく使われていることになる。齋藤氏によれば、桂氏の繊維に対するこだわりのお陰で、結婚式用の服装を作る多くのメーカーも今では、絹を使うようになっている。

去年の東日本大震災及び津波により齋栄織物の事務所と工場も被害を受けた。しかし、その翌日には従業員の80%が会社に出社し、2週間程で従業員全員が平常通り出勤していた。

「震災後、事務所と工場は、物があらゆる所に散らばって、物が壊れていて、設備は配列が乱れていて、めちゃくちゃな状況でした。でも従業員みんなが片付けに手伝いに来てくれたのです。」 この大惨事による最も大きな影響は、人間関係、友人と家族、そしてみんなを結びつける絆の重要性に人々が気づいたことだと、齋藤氏は語る。

将来に向けて、会社はヨーロッパで妖精の羽根の絹を販売するチャンネルを開拓している。フランスの企業が既にサンプルを入手し、このユニークな繊維を使うかどうか検討している。

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