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Highlighting JAPAN

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連載|日本の伝統を受け継ぐ外国人

日本茶の味を世界に(仮訳)

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フランス人のステファン・ダントン氏は、東京郊外の吉祥寺を拠点に、これまでにはない発想で日本茶の魅力を国内外に伝えている。ダントン氏オリジナルの日本茶をいただきながら日本人記者の山田真記が話を聞いた。

多くの若者で賑わう吉祥寺の商店街の一角に、ダントン氏が経営する日本茶専門店「おちゃらか」がある。さまざまな種類の日本茶が入った箱が並ぶ店内は瀟洒な喫茶店といった趣で、次々と訪れるお客さんのほとんどが若い女性だ。

「日本茶は、どちらかと言うとお年寄りが好むものと思われがちですが、ウチに来るお客さんは若い女性がすごく多いんです。彼女たちは、私が作った“フレーバーティー”を飲んで、日本茶の新しい味や楽しみ方を発見したんじゃないかな」とダントン氏は言う。

フランスのリヨン出身のダントン氏が、以前からその文化に興味を寄せていた日本にやって来たのは1992年のことだ。母国でワインのソムリエの資格を得たダントン氏は、日本でワインに関わる仕事をやってみたいと来日したが、結果的に東京の青山にある紅茶専門店に就職した。その店では中国やスリランカ、インド、ブラジルなど世界中の440種類ものお茶が売られており、その中に日本茶もあった。

「日本茶はワインと一緒で、素材によってその味や香りが微妙に異なります。この繊細さが私にとっての日本茶の魅力です。しばらく紅茶店で働いているうちに、日本茶を世界に通じる新しい飲み物にできないかと考えるようになりました。だけど私には日本茶の種類や素材についての知識がほとんどない。そこで日本中のお茶の産地を見て回ろうと決めたのです」

北は北海道から南は沖縄まで、ダントン氏は全国のお茶農家を訪ね歩き、生産者に直接話を聞いたり、自分の目で農園のお茶の木や葉っぱの状態を見て、日本茶の知識を深めていく。そうして出会ったのが日本有数のお茶の産地として知られる静岡県川根町で生産されている川根茶だった。

「川根茶は、目、鼻、口の全てで私を満足させてくれるお茶でした。ただ、これをこのままの状態で販売しても海外ではなかなか受け入れてもらえないと思ったのです。欧米人にとって日本茶といえば抹茶(HJ6月号リンク)で、苦いというイメージが強い。それに日本茶は、ワインのように気軽に飲めるものという印象がありません。そこで思いついたのが、果物の香りを調合した水出しの日本茶、すなわち日本茶のフレーバーティーでした」

ダントン氏は、川根茶の味わいを生かしながら、これに夏みかんや巨峰、桃、カシスなどの香りを調合した30種類ほどのフレーバーティーを商品化し、海外展開のベースとなる店として、2005年に「おちゃらか」を開店した。「おちゃらか」という店名は「おちゃ」と「おちゃらかす」をかけている。2008年のスペイン・サラゴザ万博では、日本館でダントン氏が作ったバレンシアオレンジのフレーバーティーが配られ好評を得た。

実際に私も巨峰のフレーバーティーを味わってみたが、ほんのり甘酸っぱいブドウの香りと、フルーティーでさっぱりした喉ごしは、確かに日本茶としては未体験のものだった。

「今はインターネットを通じて海外にフレーバーティーを販売していますが、今のところ海外からの注文は売り上げ全体の10%ほどしかありません。売り上げを伸ばすには様々な手法があると思いますが、私は、日本茶の素材の魅力や日本茶が商品化されるまでのストーリーを直接お客さんに伝えたいため、直販にこだわっています。だからまずは、私の生まれ故郷であるリヨンに日本茶の直営店を作ることが夢ですね。それにフレーバーティーの種類ももっと増やしていきたいです」

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