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Highlighting JAPAN

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特集震災から1年:被災地で活躍する外国人

日本の「おもてなしの心」を学ぶ(仮訳)

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岩手県の花巻南温泉郷は豊かな自然に囲まれた東北でも有数の温泉地として知られる。その温泉地にある、創業180年の老舗温泉旅館「湯の杜ホテル志戸平」は、昨年3月に台湾から二人の研修生を迎え入れた。東日本大震災を経験しながらも、研修を続けた彼女たちを山田真記が報告する。

湯の杜ホテル志戸平は、年間およそ2,000人の外国人が宿泊しているが、そのうち実に9割が台湾からの観光客だ。そうした宿泊客へのサービス向上のために、同ホテルは台湾のワーキング・ホリディ制度を利用して来日した謝麗君さんと張佩珊さんを研修生として迎えた。

今では、ホテルでの仕事を順調にこなす二人であるが、ホテルでの研修が始まってからわずか8日目に東日本大震災を遭遇している。湯の杜ホテル志戸平は、震災によって建物そのものが被害を受けることはなかったが、3日間、停電が続いた。エアコンが使えなくなり、従業員がロビーに石油ストーブを集め、そこで宿泊客は暖を取った。また一部の交通網が寸断され、帰宅できなくなった宿泊客も数多く出た。研修生の二人は、日本人の従業員とともに、ホテルに残った宿泊客への対応に追われた。しかし、「日本でおもてなしの心を学ぶ」という強い気持ちを持っていた二人は、台湾に戻ることは全く考えなかった。

震災発生後しばらくの間、ホテルの宿泊客は一時的に減少したが、1ヶ月ほど過ぎると、国内外からの客足が少しずつ戻り、現在は震災前とほとんど変わらないという。

「ここでは、満開の桜や瑞々しい新緑、美しい紅葉や雪景色など、四季折々の景観を露天風呂に浸かりながらゆっくり楽しむことができるので、多くの台湾人が宿泊するのだと思います」台湾でホテル勤務の経験がある謝さんは言う。「台湾では雪が降らないため、特に冬の雪景色は台湾人にとって、とても珍しく、人気があるんです」。

謝さんと張さんの主な仕事は、60種類のメニューが楽しめるホテル自慢のバイキングや宴会場での宿泊客対応だ。食習慣やテーブルマナーの違う異国での仕事に、最初は戸惑うことの多かった二人だが、次第に仕事にも慣れ、日本ならではのきめ細やかなサービスを提供できるようになっている。

「宴会場では、お客様が手に取りやすいようにお箸やお椀、おしぼりを置く位置まできちんと決まっています。台湾のホテルでは、ここまでの気配りはありませんね」と謝さんは言う。

また、多くの従業員がホテルの玄関に一列に並んで宿泊客の出迎えと見送りをすることも、台湾のホテルでは見られない光景だという。

「特にお客さんがお帰りの時には、お客さんの車が見えなくなるまで、従業員一同、手を振ってお見送りするんです。とても素晴らしいことだと思います。まさに、『日本のおもてなしの心』です」と謝さんは話す。「台湾が震災被災地に多額の義援金を送ったことを知っている多くの日本人のお客様が私に、『どうもありがとう』と声を掛けてくれることが何より嬉しいですね」

謝さんと張さんは、台湾からさらに多くの宿泊客をホテルに迎えるため、ホテルのブログを通して花巻南温泉郷の魅力を母国に向けて積極的にアピールしている。

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