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Highlighting JAPAN

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特集世界に広がる日本のサービス

安く、清潔で丁寧、日本式理容店(仮訳)

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1995年に創業したヘアカット専門店のQBハウスは、「10分、1000円、ヘアカットのみ」という独自のサービスで急成長を遂げた。「世界に通じるサービス企業」を掲げる同社は、海外進出にも積極的に取り組んでいる。松原敏雄がレポートする。

日本の多くの理容店は、散髪だけではなく、洗髪、ひげ剃り、マッサージといったサービスを受けることが出来る。パーマをしなければ、料金は3000円から5000円、時間は、30分から1時間ほどだ。

こうした理容店の常識を覆したのが、キュービーネット株式会社の「QBハウス」である。QBハウスの第一号店が東京にオープンしたのは1996年だ。その特徴は、徹底した作業の効率化である。例えば、券売機を導入し、レジを廃止、散髪後は水を使った洗髪を行わず、髪の毛クズは「エアウォッシャー」と呼ばれる機械で吸い取る。こうした結果、QBハウスは、これまでの理容店にない、10分間という「短時間」と、1000円という「低価格」を実現させた。

店舗は基本的に全て3〜4席からなる小規模店で、2012年1月時点での国内総店舗数は435店に達している。

そして、キュービーネットは創業から5年目の2000年に海外進出に向けた準備を始め、2002年にはシンガポールに海外1号店をオープンさせた。

「私たちには、“海外”という意識はほとんどありません」とキュービーネットの北野泰男社長は語る。「マーケットとして魅力的な“都市”を探した結果、必然的に海外にも目が向いたのです」

最初にシンガポールを選んだのは、人口密度の高さはもちろんとして、経済発展による国民の生活水準向上、更には、海外からの進出企業に対する政府の様々な支援制度が整っているからだ。2005年には香港にも出店を果たした。徹底した作業の効率化をそのまま導入しているため、カット料金はシンガポールが10SGドル、香港が50HKドルと、現地の一般的な理髪価格の1/3程度に抑えられている。低価格&短時間という特徴はもちろんのこと、カット技術の高さや清潔さ、現地には今までなかった駅やショッピングセンターへの出店なども注目され、店舗数は順調な伸びを続けている。現時点で、QBハウスの店舗数は、シンガポール29店、香港33店だ。「短い時間なのにオシャレにカットしてくれる」と評判を呼び、日本よりも多くの女性客を集めてもいる。

QBハウスでは、ITを駆使した情報管理システムの構築に最も投資している。例えば本社や海外子会社では、全店舗・全席の利用状況がリアルタイムで確認できるようになっている。席の稼働率=「その席を担当する『スタイリスト』(QBハウスにおける理美容師の呼称)の技量」が数値として表示されるのだ。優れたカット技術は当然のこと、カットそのものも迅速に行わなければQBハウスのビジネスは成り立たない。カットに要する時間が数値で記録されることで、各スタイリストは自分の仕事のクオリティやパフォーマンスを客観的に判断することができるのである。

スタイリストのトレーニングは継続的に行われ、マネージャーや店長などの現地スタッフは日本を訪れて1週間ほどの集中トレーニングを積んでいる。

「日本の本社が全てを決定するのではなく、現地に決定権を委譲しています。これにより現地の事業を経営しているという当事者意識が高まり、様々な課題が現地でスピーディーに解決できています」と北野氏は語る。責任を任されたことで特に店長の士気が高まり、接客態度やカットの技術も短期間で向上するのだという。

年1回行われる全国店長会議では海外からの参加も含めて約400名が東京に集まり、優秀な成績を上げた店舗のマネージメントノウハウが発表され、情報の共有が図られる。こうした取り組みが功を奏し、今では1席あたりのカット人数ランキングのトップ20以内に海外店舗が12店舗もランクインするまでになった。

シンガポールのエリア・マネージャー を務めるエルバ・チャン氏は「QBハウスではお客様への接客サービスと日々の鍛練を通して、常にカットの技術を高めることができます。シンガポールでは年間110万人がQBハウスを利用します。お客様に満足をご提供するうえで、この環境は本当にやりがいに満ちていると思います」と言う。

北野氏は「日本の企業だからといって好印象で受け止められるのは、あくまで最初のみです。ご利用いただく方々を拡大していくためには、絶え間ない努力と改善が欠かせません」と語る。

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