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Highlighting JAPAN

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特集未来をつくる科学技術

第4期科学技術基本計画が目指すもの(仮訳)

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2011年8月、第4期科学技術基本計画が閣議決定された。計画の策定に関わった相澤益男総合科学技術会議議員にジャパンジャーナルの澤地治が話を聞いた。

──第4期科学技術基本計画のポイントをお教え下さい。

相澤益男議員:科学技術基本計画は1995年に制定された科学技術基本法に基づいて、日本の科学技術に関する施策を具体的に推進するために、政府が5年ごとに策定しています。第4期科学技術基本計画(以下、「計画」)は、2011年4月からスタートする予定でしたが、その直前の3月に東日本大震災が発生したため、「計画」の内容を再検討いたしました。

8月に閣議決定された「計画」の、第一のポイントは、科学技術を活用した震災からの復興・再生の実現、第二は、科学技術イノベーションの推進による日本及び世界が直面する課題の解決、第三に、基礎研究の抜本的強化と科学技術を担う人材の育成、第四に、国民と密接に連携した上での科学技術イノベーション政策の推進です。そして、官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上にすること、そのうち、政府研究開発投資を対GDP比1%にすることを目指します。その場合、政府研究開発投資の総額は今後5年間で、総額約25兆円になります。

──東日本大震災の教訓を活かし、例えば、どのような科学技術を推進するのでしょうか。

東日本大震災は、言わば、自然からの「挑戦」です。この「挑戦」に対処するためには、地球規模で自然の変化をきちっと観察する必要があります。そのために、衛星による観測、海域や陸域における地球観測ネットワークをさらに充実させることで、地震や津波といった自然災害からの防御につなげます。 また、東日本大震災によってものづくり産業を支えるサプライチェーン、農業や漁業が大きな被害を受けましたが、それらをただ単にもとにもどすだけではなく、自然災害に強い産業へと再構築する必要があります。例えば、先端技術により、生産性が高く、しかも安定的な農業生産を可能にする植物工場、あるいは、魚の完全養殖といった研究開発が挙げられます。

──「計画」では、「グリーンイノベーション」の推進が挙げられていますが、具体的にはどのような研究開発でしょうか。

グリーンイノベーションは、気候変動に対応するための低炭素社会の実現、そして、エネルギーの安定的な供給確保の実現という両方を目指しています。

例えば、基幹エネルギー供給については、原子力発電の今後を見据え、火力発電の二酸化炭素排出をさらに削減する研究開発を進め、再生可能エネルギーの飛躍的な拡大を図ります。

また、「計画」では、分散エネルギーシステムの革新を盛り込みました。電力の消費地で、太陽光発電や燃料電池発電などの創エネルギー技術で発電、その電力を蓄電池に貯え、スマートグリッド等のエネルギーマネージメントによって効率的に利用するスマートハウスやスマートコミュニティで大幅なエネルギー削減を実現します。

──おなじく「計画」で挙げられている「ライフイノベーション」には、どのような研究開発が含まれているでしょうか。

日本人の科学者の研究によって、病気がどのように起こるのか、体内で免疫機能がどのように働いているのか、また、細胞がどのように分化をしているのかなどが解明されつつあります。そうした研究成果によって、革新的な病気予防法や治療法の開発が実現しようとしています。

例えば、山中伸弥京都大学教授が発見した iPS細胞は、再生医療や創薬に大きく貢献すると期待されています。また、岡野光夫東京女子医科大学教授が開発した細胞シートは、今までの治療方法を根本的に変える可能性を持っています。細胞シートを治療の必要な臓器に移植すると、移植した細胞が増え、その臓器の機能回復を助けるのです。

2010年に、政府は最先端研究開発支援プログラム(FIRST)を立ち上げて、こうした日本のトップサイエンティストの研究を支援しています。

──今後、日本は科学技術の分野で世界にどのような貢献をすべきでしょうか。

2025年に、世界の人口は現在の70億人から80億人へと増加します。そのうち、アジアの人口が約3分の2を占めるようになります。そのため、アジアにおいて、環境、エネルギーなどの問題がますます深刻になると考えられます。こうした観点に立ち、「計画」では「東アジア・サイエンス&イノベーション・エリア構想」の推進を盛り込んでいます。これは、日本とアジアが抱える共通課題の克服につながる研究開発を共同で実施する共に、アジアにおける人材育成を促すという構想です。環境問題や高齢化の問題をすでに経験し、これらへの対策で先を行く日本がリーダーシップをとって、相互依存関係であるアジアの国々に貢献することが、日本の役割であると思います。

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