Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2011年9月号 > さいたま市大宮盆栽美術館(仮訳)

Highlighting JAPAN

前へ

THE NATION’S MUSEUMS

さいたま市大宮盆栽美術館(仮訳)

English

ジュリアン・ライオールが、1923年の関東大震災をきっかけに作られた盆栽村の中心となる、さいたま市大宮盆栽美術館を訪問

まるで見事な生きた芸術作品が展示されているように、大宮盆栽美術館は小規模でありながら、完璧に構築されている。

2010年にオープンしたばかりの同美術館は、世界で初めての公立の盆栽美術館であり、盆栽にまつわる文化、盆栽を最適に見せる盆器、特徴的な形を作るための道具や各種資料、盆栽の歴史を説明する写真や絵などを展示している。

盆栽について詳しく学び、伝統を守るために同美術館で行われている活動は、重要である。日本といえばすぐに思い浮かぶ文化遺産を初めて体験する者にとって、それはとても印象深い。

美術館には屋内エリアがある。盆栽の基本コンセプトが説明されており、来園者は庭園に入る前に、多くの伝統的な浮世絵の木版画や古書、盆の上に風景を模して並べられた石を鑑賞することができる。

わたしの前には、明らかに成木であるが、高さ1メートルほどの10本以上のエゾマツの木々が広がる。幹の樹皮は所々剥がされ、まだら模様になっていて、深緑の針状葉は完璧に均整がとれている。幹の根元や、木々が植えられた平らな盆の縁には、明るい緑のシダの葉が重なり合い、風になびいている。

わたしはこの素晴らしい作品に感嘆した。誰かがこれらの植物を丹精込めて育てたのは間違いない――多くの場合、100年以上の年月が費やされている。細部へのこだわりは驚くほどだ。あるべき場所からはずれている葉や枝は一切ない。

美術館によると、盆栽鑑賞の鍵は、盆器に凝縮された素晴らしい風景を想像することだという。鑑賞者は、盆栽の形だけではなく、木の根元からの根の広がり方や幹の立ち上がり、個々の枝や葉など、ありとあらゆる要素に着目すべきである。

各部分にはしかるべき名前があるが、熱烈な盆栽マニアではなくても、吹流し――風に吹かれてなびくという意味――スタイルのマツの木、あるいはゆるやかな曲線を描く模様木のシンパクを楽しめる。

庭園の他の部分も同じように印象深い。黒松は直線の幹のデザインで仕立てられているが、一方で根元かららせんを描き、こぶや風合いを出し、まるで木が器から逃げようとするかのように見える幹もある。

フジ、サクラ、イワシデ、ウメ、カエデなど、ほかにも多くの木々が同じように、縮尺して仕立てられ、美術館は、最も印象的な時期の盆栽を鑑賞できるよう、定期的に展示を入れ替えている。秋が近づくと、カエデが深紅や赤褐色に染まり、見ごろとなる。

庭園には水の題材もあり、岩を台にして盆器の支えにした作品もある。同館には、盆器の豊富なコレクションがあり、展示室で見ることができる。その多くは数百年前に作られたものだ。器のデザインや装飾にも、盆栽そのものと同じくらい手がかけられ、風景、竜、唐草文様の牡丹、鶴や竹などが多くの器に描かれている。

大宮盆栽美術館は、東京の旧高木盆栽美術館のコレクションを受け継いでいる。1923年の関東大震災の後、東京の多くの盆栽業者が文京区などの地域からさいたまの当地に移り住んできたため、この地域が同施設の場所に選ばれた。同館は、これらの盆栽園が集まる大宮盆栽村に近接している。

わたしのような普通の素人にとって、剪定ばさみや針金で作品を表現するのは身のすくむような体験だが、同館では、創造的で、なおかつ癒しにもなる趣味を体験してみたい人に、盆栽のワークショップも開催している。

前へ