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Highlighting JAPAN

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特集環境と都市の成長

「環境未来都市」インタビュー(仮訳)

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政府が2010年6月に閣議決定した「新成長戦略」に掲げられた主だった政策のうちの1つである「環境未来都市」構想は、まだ議論の最中ではあるが、大きな方向が定まってきた。政府の「環境未来都市構想」の有識者検討会の座長を務める村上周三・独立行政法人建築研究所理事長に、構想の目的や狙いについて話を聞いた。

──まず「環境未来都市構想」とはどういった構想なのか教えてください。

村上周三氏:「環境未来都市構想」は、政府が昨年決定した新成長戦略に基づき、特例措置を含む法整備を大規模に進め、環境、経済、そして社会の新たな価値を生み出していく都市を建設しようという構想です。最終的に「豊かで快適に暮らすことができる持続可能な経済社会」を実現することが目的です。

環境未来都市構想の計画には三つの前提があります。一つ目は優れた環境技術を軸とした国際的な連携によるベンチャー創出を進めるなど成長戦略を具体化していくこと、二つ目は低炭素社会を目指すグリーンイノベーションを進めていくこと、そして超高齢化社会に向けて地域活性化を進めていくことです。

そして成果目標は、低炭素化や豊かな生物多様性が実現すること(環境価値の創造)、高齢化が進展する下で人々が健康を維持できること、また地域自立が達成されること(社会価値の創造)、そして、知識集積が進むこと(経済価値の創造)などです。

これらの前提に立ち、成果目標を達成するべく、具体的なアクションを起こしていこうという計画です。

環境未来都市の実現は、この環境・社会・経済の三つの価値を如何に高めるかということに尽きます。最初に申し上げた通り、出発点は新成長戦略ですから、経済価値を創造できる都市を構想することが重要です。この構想推進は、地球環境や社会問題の解決をはじめ、新たな経済発展など、日本全体の進路にも大きな意味を持つことになるでしょう。

──この構想の背景にはどんなことがあるのでしょうか?

現在、世界的に見て都市は情報集積の中心となり相当大きなGDPを生み出しています。日本でもGDPの30%以上は首都圏で生み出されています。今後、さらに都市の価値を上げる要素は何かということに世界中の関心が集まっています。こうした状況を背景として、「環境未来都市構想」は議論されているのです。

──環境未来都市を成功に導くために重要な要素とは何でしょうか?

国がそれなりに実行力を持って関与することとプロジェクトマネジメントでしょう。実施体制は、大きく分けて、プログラムを策定し予算を確保する国、国が組織の内外いずれかに設置するアドバイザリーボードなどの推進組織、そして官民学のコンソーシアムによる経営・実施主体の三者になります。国の補助は有限です。環境未来都市は自立的に構想を推進出来る体制を整える必要があります。例えば環境モデル都市(ポップ)を成功させたいくつかの都市にはプロジェクトマネジメントに長けたリーダーがいます。彼らに学びながら人材育成を急ぐ必要があります。

もうひとつ大切なことは、グローバルな観点です。経済産業省が進めるスマートグリッドの実証実験では、横浜市や北九州市が海外企業と一緒に事業を進めています。環境未来都市の実現には、最初の企画段階から海外の関係者と協働する、「開国型」の発想で取り組まなければならないと思います。早い段階からの国際化は、日本社会の閉塞感、或いは高コスト体質や意志決定の遅さなど、強化が求められている事柄に対しても相当な刺激を与え、日本全体を活性化する要素になるとともに、世界の都市が抱える環境問題解決に向けた日本の国際貢献にもつながるでしょう。

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