January 2024
- PREVIOUS
- NEXT
- English
- 日本語
光と影の幻想的な現代アート―国内最大級の展示スペースで特別展―
「日本博2.0」は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の機運醸成やインバウンド需要の回復、国内観光需要の一層の喚起を目指しつつ、「日本の美と心」を体現する我が国の文化芸術の振興及びその多様かつ普遍的な魅力を国内外に発信している。国内の文化施設、芸術団体などさまざまな主体が多種多様な事業を実施、参画している一大プロジェクトだ。多くの事業の中から、今月号は、東京の国立新美術館が実施した活動などを紹介する。
日本の現代アートの国際発信拠点
東京・六本木の国立新美術館は、波打つようなガラスカーテンウォールが美しい美術館である。国立新美術館では新たな表現を発信する拠点として、国内最大級の展示スペース(14,000m2)を活用して現代アート、ファッション、デザイン、建築、マンガ・アニメーションなど国内外の優れた作品を紹介してきた。また、「日展(にってん)」*「二科展(にかてん)」**など、全国規模で活動する美術団体等に発表の場を提供している。さらに、アートに関する情報収集、シンポジウムやギャラリートークなど教育・普及活動にも力を入れている。
大空間でのインスタレーション作品***が話題に
国立新美術館は、「日本博」の一環として、2020年度から若手アーティストを含め、さまざまなジャンルにおける企画展を開催してきた。特に、2022年6月の「ワニがまわる タムラサトル」は、回転する大量の「ワニ」を立体的に配したインスタレーション作品が注目を集めた。
そして、「日本博」をリニューアルした「日本博2.0」の取組として、2023年11月に大巻伸嗣(おおまき しんじ)氏の「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」展を開催した。天井高8m、広さ2,000m2の大空間に、大きな壺と強烈な光からなるインスタレーションや、波打つような薄い布が配置され、柔らかな光と影が織りなす幻想的な世界を生み出した。この展示に合わせ、大巻氏と詩人・関口涼子(せきぐち りょうこ)氏のクロストークイベント(日英同時通訳つき)、展示空間でのダンスパフォーマンスも開催された。展示会場ではQRコードからスマートフォンなどで日本語・英語・中国語・韓国語による解説文が読め、図録も日英併記で制作された。同展には約14万人が来場したが、うち外国人が2万人を超えたという。さらには、同展はドイツやイタリアのメディアをはじめ国内外のアート誌、デザイン誌、ファッション誌などに紹介された。
同展の模様は、国立新美術館のWebサイトからアクセスできる。Webサイトには3月から開催される「遠距離現在 Universal/Remote」展も紹介されている(同展の図録は日英併記で制作、関連イベントは同時通訳つきで実施予定)。
国立新美術館では、「日本博」「日本博2.0」での実績を踏まえて、今後、海外を含めた情報発信の強化、日英の音声ガイドの導入などを引き続き検討し、外国人来場者の拡大をめざしていく。国立新美術館には、レストランやカフェ、ミュージアムショップが併設されているので、六本木観光のおりに立ち寄るのも楽しいだろう。
* 1907年から続く日本最大級の公募展(日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書)。毎年秋に国立新美術館にて無鑑査作品と入選作品を展示。
** 1914年から続く公募展(絵画、彫刻、デザイン、写真)。毎年9月に国立新美術館にて入選作を展示。日本の芸能人などの作品も話題になる。
*** 1970年代から広がった現代アートの表現方法。室内や野外にオブジェなどを設置し、立体的な空間を創造する。映像や音響を組み入れる作品もあり、鑑賞者は作品空間に身を置くことでアートの世界を体験する。
- PREVIOUS
- NEXT