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December 2023

希少なタンチョウに一年中出会える自然公園

  • ツルの親子が連なり空を飛ぶ。
  • 官民共同で設立された丹頂鶴自然公園
    Photo: 釧路市
  • 茶色い羽毛に覆われているタンチョウのヒナ Photo: 釧路市
  • 丹頂鶴自然公園の内部。南北180m東西340mの中にある湿地にタンチョウが放し飼いされている。 Photo: 釧路市
  • 雪景色の中のタンチョウ
    Photo: 釧路市
ツルの親子が連なり空を飛ぶ。 Photo: PIXTA

「Japanese crane」*とも呼ばれるタンチョウであるが、一時は絶滅に瀕している。1958年からその保護、増殖を目的として誕生した世界でも希少なタンチョウのための自然公園が北海道にある。公園の職員にタンチョウの生態や公園での取組などを聞いた。

官民共同で設立された丹頂鶴自然公園 Photo: 釧路市

日本列島の最北に位置する北海道の東部、たんちょう釧路空港から車で約10分のところにタンチョウを飼育している公園がある。その釧路市丹頂鶴自然公園の高嶋賢治(たかしま けんじ)さんに園での取組を聞いた。

「当園では、1970年に世界で初めて日本産のタンチョウの人口孵化(ふか)に成功した、世界でも希少なタンチョウのための公園です。特別天然記念物のタンチョウが年中いつでも観察できます。毎年4月から6月にかけてヒナが誕生し、子育ての様子も見られますよ」。

19世紀の中頃まで、北海道にはいたるところに湿地があり、タンチョウはめずらしい鳥ではなかった。しかし、日本の近代化の一環として19世紀後半半ばから開拓が進み、湿地は農地に変わり、乱獲もあり、20年から30年で絶滅の危機に瀕した。そして、1910年代には姿を消し、絶滅したと思われていた。「絶滅したと思われていたタンチョウですが、1924年に釧路湿原に10数羽が発見されたのです。すると、翌年からこの地域は禁猟区となり国の保護政策が開始されました。タンチョウは、国内で繁殖する唯一のツルです。世界の総個体数は約三千羽とされ、種の半数以上が北海道東部を中心に生息している希少な品種です」。

1935年に国の天然記念物、1967年に種としての特別天然記念物に指定された。地元の人たちによる保護活動も80年以上前から始まり、この活動が元となり、釧路市と共に丹頂鶴自然公園を1958年に開園した。「常時10数羽のタンチョウを飼育、繁殖させていて、園内で増えた個体は野外放鳥を行っています。卵の孵化(ふか)率を上げるために、孵卵(ふらん)器での卵の保護も行っています」。

茶色い羽毛に覆われているタンチョウのヒナ Photo: 釧路市

また、タンチョウの飼育のために身近で接している高島さんによると、「タンチョウの魅力は姿の美しさもありますが、人間じみた行動をする側面もあります。例えば餌が欲しくてこちらを突いてきたりするときに、まるで人間のように周囲を見回し警戒するそぶりを見せたり。優美なイメージとのギャップがあって面白いですね」。

丹頂鶴自然公園の内部。南北180m東西340mの中にある湿地にタンチョウが放し飼いされている。 Photo: 釧路市

海外からの来園する見学者は、特に東アジアからが多いという。「アジアではタンチョウは、おめでたい動物とされているので、特に楽しんでくださっているようです」。園内の案内冊子は、英語、中国語、韓国語などを揃え、海外からの観光客に対応している。

「湿原を空高く優雅に舞うタンチョウは郷土の誇りです。大切に思い、これからも飼育に努力していきます」。天然記念物のタンチョウを間近で観察できる貴重なスポットとして、機会があれば是非訪れてみてほしい。

雪景色の中のタンチョウ Photo: 釧路市

* タンチョウは、英語で「Japanese crane 」(直訳:日本のツル)とも呼ばれ、学名(ラテン語ベース)もGrus japonensis(日本のツルの意味)である。