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November 2023

ラオス人民民主共和国及びフィリピン共和国における気候変動対策(エネルギー、防災)に関する国際協力

  • ナムグム第一水力発電所のダム貯水池 Photo: JICA
  • ラオス電力公社主催のDevelopment Partners Coordination Meeting Photo: JICA
  • ラオスのエネルギー鉱業省大臣等関係者とJICA職員が日本の発電所を見学 Photo: JICA
  • 日本が支援した河川改修事業によって完成したパッシグ・マリキナ川護岸の状況 Photo: JICA
  • 日本とフィリピンの技術者の協働によるコンクリート構造物の出来形管理に関する技術移転の例 Photo: JICA
ナムグム第一水力発電所のダム貯水池 Photo: JICA

気候変動対策における国際協力は非常に重要だ。ここでは独立行政法人国際協力機構(JICA)が継続的に行っているラオス人民民主共和国(以下「ラオス」)における「クリーンエネルギー電力融通」、フィリピン共和国(以下「フィリピン」)における洪水対策に関する「パッシグ・マリキナ川河川改修事業」を紹介する。

気候変動問題は、国境を越えて取り組むべき差し迫った地球規模課題であり、独立行政法人国際協力機構(JICA)も、各国への支援を強化している。その一つがラオスにおける「クリーンエネルギー電力融通」であり、これは緩和策として気候変動対策に資するものである。ラオスは水力資源が豊富で、水力発電が発電設備容量の実に8割を占める。JICAでは、ラオス国内の安定的な電力供給とともに、近隣国へ持続的に電力融通するために必要な政策制度・組織の能力開発を行うことを目的に①電力政策アドバイザーの派遣、②電力品質向上プロジェクト、③電力公社経営マネジメント改善プロジェクト及び④炭素中立社会に向けた統合的エネルギーマスタープラン策定プロジェクトを実施している。これまでの活動と今後の展望をJICAの柴田久里(しばた くり)専門員に伺った。

ラオス電力公社主催のDevelopment Partners Coordination Meeting Photo: JICA

「1960年代からラオスへのクリーンエネルギー開発支援を継続して行い、水力発電所の設置や初の系統連系型太陽光発電の導入などさまざまな形で実を結んでいます。今後も、国内の安定的な電力供給とともに、近隣国への持続可能な電力融通拡大に向けて活動を進める意義は大きいでしょう。これからも地表及び地下に豊かな水源を持つラオスの理想的な優位性とポテンシャルを最大活用し、ラオスのクリーンエネルギーの近隣諸国への電力融通に資する活動が行えたら幸いです」

ラオスのエネルギー鉱業省大臣等関係者とJICA職員が日本の発電所を見学 Photo: JICA

また、フィリピンにおいては、1970年代よりマニラ首都圏の治水対策を支援してきており、マンガハン放水路の建設、治水マスタープランの作成、パッシグ・マリキナ川河川改修事業等の事業を支援してきた。これは、適応策として気候変動対策に資する取組である。現地で事業を執り行うフィリピン国公共事業道路省(DPWH)に出向しているJICAの山口正裕(やまぐちまさひろ)専門家に話を伺った。

日本が支援した河川改修事業によって完成したパッシグ・マリキナ川護岸の状況 Photo: JICA

「パッシグ・マリキナ川はフィリピンの重要河川の一つであり、下流域の沿岸部は政治・経済の中心地となっていますが、その地形的特性から、度々洪水被害が発生していました。『マンガハン放水路』を建設し上流域の洪水をラグナ湖へ迂回させることで下流のマニラ市街地の洪水被害が大幅に軽減されました。現在は、さらなる治水事業として、中流部の河川改修を進めるとともに、ラグナ湖への洪水の分派施設の建設などが予定されています」

日本とフィリピンの技術者の協働によるコンクリート構造物の出来形管理に関する技術移転の例 Photo: JICA

2020年にマニラ首都圏を襲った台風ユリシーズによる洪水被害のシミュレーションを行った結果、これまでの事業による効果で約85%の被害を低減できたと試算されている。

「長年の治水に対する事前防災投資が、被害の軽減に大きく貢献できたのは誇らしいこと。河川改修事業を通して日本の高度な技術力と高品質な施工の実績が証明され、日本に対する高い信頼に繋がっていると感じます。今後も防災分野において、日本の技術で国際社会に貢献していけたらと願います」

フィリピン国公共事業道路省(DPWH)の本事業担当プロジェクトマネージャー(右)と山口さん(左) Photo: JICA

〈参考〉ラオスにおけるJICAによる電力関係に関する国際協力の例

■「電力系統マスタープラン策定プロジェクト」

  • 協力期間:2017年6月~2019年3月
  • 概要:ラオスは、豊富な水力資源を活かした電力輸出が産業の大きな柱だ。一方、国内の販売電力が過去10年間で約4倍に増加しているため、さらなる電源開発が急務となった。この協力では、同国内及び近隣諸国の電力需要も踏まえたマスタープランが策定され、国内の安定した電力供給と近隣国との電力取引の促進に貢献した。

■「ナムグム第一水力発電所拡張事業」

  • 協力期間:(借款契約(L/A)調印)2013年6月
  • 概要:ラオスでは、首都圏を含む中部地域で電力需要が急増しており国内需要向けの電源開発が課題となっていた。この協力では、首都近郊のナムグム第一水力発電所において、発電ユニット1基の増設を支援した。これにより、同国の安定的な電力供給の拡大に寄与した。

〈参考〉フィリピンにおけるJICAによる治水関係に関する国際協力の例

■「パッシグ・マリキナ川河川改修事業(フェーズ4)」

  • 協力期間:(借款契約調印)2019年1月~
  • 概要:フィリピンのマニラ首都圏は、沿岸低地であるため台風の影響を受けやすく、経済・社会活動は洪水により深刻な被害を受けてきた。この協力(フェーズ4)では、2009年に発生した熱帯暴風雨オンドイによる甚大な人的・経済的被害があったパッシグ・マリキナ川の河川改修、可動堰(マリキナ堰)の建設及び洪水に対する非構造物対策を実施することにより、マニラ首都圏中心部の洪水被害の軽減を図る。

参考URL
https://www.jica.go.jp/oda/project/1600282/index.html
https://www.jica.go.jp/oda/project/LS-P7/index.html
https://www.jica.go.jp/oda/project/PH-P271/index.html