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October 2023

農業にも取り組みつつ、福島の魅力を世界へ発信するイラストレーター

  • エミリーさんが描いた福島を伝えるイラスト。(写真の上部や下部に「赤べこ」のイラストが見える。)
  • 農園に立つエミリーさん
  • 収穫したジャガイモを販売したところ、「皮まで食べられる」と好評ですぐに完売した
  • ラズベリーやインゲンなど、様々な果物や野菜を育てている
  • 農園につくったブランコ
  • 福島県会津地域の伝統的な民芸品「赤べこ」
エミリーさんが描いた福島を伝えるイラスト。(写真の上部や下部に「赤べこ」のイラストが見える。)

フランス出身のイラストレーター、ブケ・エミリーさんは、2023年2月に福島県大熊町(おおくままち)に移住し、農地を借りてラズベリーなどの果樹や野菜を栽培。自身のイラストや農業を通して居住する大熊町を始め福島の様々な魅力を伝えている。

フランスの自然豊かな土地で生まれ育ち、幼い頃から農業に関心を持っていたエミリーさん。旅行で何度か来日したのち、2011年から東京で生活を始めた。フランス語講師をしていたエミリーさんに転機が訪れたのは2018年。生徒の1人が福島出身だったことから、福島に興味を持った。

「最初は福島に対して原発のイメージがあり、抵抗感を持っていました。でも、話を聞くうちに自分が福島のことを何も知らなかったことに気がつき、実際に自分の目で見てみたいと思いました」

農園に立つエミリーさん

福島県の西側を占める会津(あいづ)地方や、磐梯山(ばんだいさん。標高1816m)の北、裏磐梯と呼ばれる地域にある大小30余りの小湖沼群・五色沼(ごしきぬま)などを訪れたエミリーさんはその美しい景色に魅了され、温かく接してくれる地元の人々との出会いにも心を動かされた。「みんな大好きな場所になりました」と語るエミリーさんは、その後も毎年福島を訪れ、その魅力を発信するイラストを描くようになった。会津地方の伝統的な民芸品であり、真っ赤な牛の形をした玩具「赤べこ」を可愛らしくデフォルメしたイラストをはじめ、彼女のイラストが入ったグッズやポストカードは各地の雑貨店などでも販売されている。

収穫したジャガイモを販売したところ、「皮まで食べられる」と好評ですぐに完売した

2021年には福島県の会津若松市に移住。福島で暮らす中で、「東日本大震災から復興しようとしているこの場所で、いつか農業をやりたい」という夢が膨らんでいったエミリーさん。理想とする農場のプランを事業計画書にまとめて大熊町の役場に提案したところ、約1.7haの農地を借りることができた。今年、2023年の2月からはいよいよ大熊町へ移り、「あまの川農園」と名付けた農園でラズベリーや桃、サクランボなどの果樹やさまざまな野菜、ハーブなどを育てている。地元の方の協力を得て、収穫した果樹を使ったジャムなどを販売することもあるそうだ。

ラズベリーやインゲンなど、様々な果物や野菜を育てている

「農園では農薬を使わず、なるべく人の手をかけない自然に任せた農業に取り組んでいます。植物が自分の力でバランスを取りながら成長していくことが本来の自然の姿。自然のサイクルを大切にし、自然から学びながら農業をしていきたいと思っています」

「海外の人にも大熊町の多彩な魅力を知ってほしい」という想いから、エミリーさんは、原子力発電所の所在地として知られるだけでなく、大熊町の持つ美しい景色や農園の様子を自身のイラストを混じえてSNSに投稿し、日・英・仏の3か国語で紹介している。

農園につくったブランコ

「地元の人の中には『大熊町には何もない』と言う方もいますが、四季折々で表情を変えるのどかな里山の景色に癒やされますし、美しい神社などもある。それに、人がみんな温かい。ぜひ一度、訪れてみてほしいです」

将来的には、大熊町の景色や果物狩りを楽しめる観光農園をつくろうとしているエミリーさん。今は少しずつ農園の整備を進め、栽培する作物を増やしている段階だ。「農業を通して大好きな大熊町の魅力を発信する」というエミリーさんの夢は、これからも続いていく。

福島県会津地域の伝統的な民芸品「赤べこ」