宇宙科学を身近に感じられる施設のある道の駅

岐阜県の最北端に位置する飛騨市（ひだし）には科学館を併設した道の駅がある。宇宙の仕組みを解き明かす物質の実験を体感することができる科学館だ。道の駅にあることで、研究そのものを広く知ってもらうことにもつながっている。

岐阜県飛騨市神岡町内には、宇宙と素粒子の謎を探究するための日本有数の研究拠点が集まっている。特に、ノーベル物理学賞を受賞した故小柴昌俊（こしば まさとし）先生などが研究していた「カミオカンデ」があり、現在では、同じくノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章（かじた たかあき）先生などが研究しているその後続施設「スーパーカミオカンデ」「カムランド」*が稼働していることがよく知られている。巨大な最先端の宇宙素粒子観測装置が神岡町の地下1000mの地中に設置されており、主にニュートリノという素粒子を日々観測し、宇宙の進化や物質の謎の解明に迫っている。それらの研究内容に多くの人たちが触れられる場所として「ひだ宇宙科学館 カミオカラボ」が2019年春から開館し、「道の駅 スカイドーム・神岡」に併設されている。この道の駅の事務局の川上さんはこう語る。「以前は、ここ神岡町にある最先端の研究施設を一般の方が見学できるのは年に数回と限られていましたが、この宇宙科学館ができてからは展示や映像などによって、いつでも、だれでもが親しむことができるようになりました。東京大学宇宙線研究所と、東北大学監修のもと、高さ7mの大きなスクリーンで、本物のスーパーカミオカンデ内部に入ったような映像により、巨大な水槽が実験に使うための純水で満たされる様子や、ニュートリノの突入により光センサーが明るさに応じて反応する様子を大パノラマで擬似体験（写真参照）したり、ゲームを通じて目に見えない素粒子のミクロの世界を体験できます。宇宙科学館には、サイエンスコミュニケーターが滞在し、解説などを行っています。展示物の解説には英語が併記され、スクリーンで流される映像は英語版もあります。道の駅の売店でもスーパーカミオカンデグッズは一番人気で、ロゴ入りマグカップや、東京大学宇宙線研究所監修のパズルなどがよく売れています」。また、道の駅内には、飛騨のグルメも味わうことができるレストランもある。飛騨牛**という岐阜県内で育てられたブランド和牛を使った料理や、地元でとれるえごま***を使ったソフトクリームも味わえる。

「道の駅 スカイドーム・神岡」周辺の観光スポットも魅力的だ。道の駅から車で30分ほどの飛騨古川は、白壁土蔵街という日本の伝統的な建築の街並みが残る一角が魅力的だ。街中を流れる瀬戸川には1000匹もの色とりどりの鯉が泳ぎ、その川沿いに白壁土蔵と石垣が500mつづく、風情あふれる光景が楽しめる人気のスポットだ。川上さんは道の駅の魅力をこう語る。

「神岡を含む飛騨地方は、昔ながらの日本の風景とともに、最先端の科学研究施設があり、日本が誇れるものが一度に体感できるという他にはない個性をもった地域です。そのような地域にある「道の駅 スカイドーム・神岡」へぜひ立ち寄って魅力に触れ、この地域を好きになってもらえたらうれしいです」

* 東京大学宇宙線研究所が運用する世界最大の地下ニュートリノ観測装置。ニュートリノとは「ニュートラル=電気を持たない中性」「イノ=（イタリア語で）小さい」という意味をもつ、素粒子の一つ。その性質を調べるとともに、ニュートリノを使って宇宙の歴史の解明が進んでいる。宇宙線の影響を減らすため地下に建設する必要があったため、元鉱山の神岡の固い地盤と優れた掘削技術、豊富な雪解け水があることからこの地が選ばれた。「カミオカンデ」は1983年〜1996年まで稼働し、その跡地に「カムランド」が設置され、2002年より稼働。「スーパーカミオカンデ」は1996年から稼働している。
** 岐阜県内で14ヶ月以上肥育された黒毛和種の中でも特にきめ細かな肉質、すぐれた風味を持つと評価された牛肉に与えられる銘柄。
*** えごまはシソ科、東南アジア原産の一年草。食用・油（えごま油）として利用。ごまとは別の品種である。