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August 2023

「道の駅」の役割と魅力、そして世界ブランドへの展望

  • 外国人観光案内所がある道の駅「湯西川」
  • 「道の駅」の施設配置 資料提供:国土交通省道路局
  • 丹羽克彦・国土交通省道路局長
  • 大規模災害時等の広域的な防災拠点としての役割。自衛隊、警察、テックフォース等の救援活動の拠点、緊急物資等の基地機能、復旧・復興活動の拠点等に活用されることが期待されている。
    Photo: 国土交通省道路局
  • 平成28年熊本震災時に被災地救済の拠点として使用された道の駅「あそ望の郷くぎの」
  • 北海道の道の駅「ニセコビュープラザ」の情報プラザでは、観光協会職員が町や近郊の案内を行っている。また、外国人観光客を積極的に呼び込むため、デジタルサイネージを使って英語で地域情報を提供したり、ニセコ観光圏のフェイスブックへアクセスできるWiFi-SPOTを整備している。
    Photo:国土交通省道路局, PIXTA
外国人観光案内所がある道の駅「湯西川」

「道の駅」は地域の賑わいを生み出している日本独自の施設である。「道の駅」とはどういう目的や機能を持った施設なのか、成り立ちとともに現状や展望について国土交通省道路局長・丹羽克彦さんにお話を伺った。

丹羽克彦・国土交通省道路局長

日本の「道の駅」は、どのような施設なのかをお教えください。また、その設置の経緯、発足当初の数、現在の数、種類といったこともご紹介ください。

「道の駅」は、道路利用者に安全で快適な道路交通環境を提供することや地域振興の場となることを目的に一般道に設けられる休憩施設で、設置者となる市町村等からの申請を受け、国土交通省道路局において登録を行っています。「道の駅」として登録されるには、24時間無料で利用できる駐車場とトイレ、道路情報・地域の観光情報の提供の場、地域振興のための施設を備えている必要があります。また、設置者は独自の創意工夫により、地域の特産品販売所や農産物直売所、レストラン、温泉・宿泊施設、公園・運動広場、病院・老人福祉施設など、それぞれの「道の駅」が地域の特色を活かした様々な施設を設置していたりもします。

「道の駅」の発想については、1990年1月に旧建設省中国地方建設局が企画したシンポジウムの中で、参加者から「道路にも鉄道のようにトイレがある駅があってもよいのではないか」と提案されたことに始まったとされています。そして、幾度かの社会実験を経て制度化を行い、1993年4月に第1回の登録がなされ、103の「道の駅」が誕生しました。その後、「道の駅」は日本全国に広がり、現在(2023年8月4日時点)では1209駅が登録されています。

「道の駅」の施設配置 資料提供:国土交通省道路局
「道の駅」の目的と機能 資料提供:国土交通省道路局

現在、全国各地に設置されている1200を超える数の「道の駅」ですが、なぜここまでの広がりを見せたのか、理由はどのようにお考えでしょうか。

「道の駅」が、地域の発意や創意工夫によって自由度高く設置・運営されているからではないかと考えています。「道の駅」で重要なことは、地域の状況に応じた個性豊かで主体的な創意工夫であると考えており、その意を込めて、「休憩・情報発信・地域連携の機能を備えた、地域とともにつくる個性豊かなにぎわいの場」を「道の駅」の基本コンセプトとしています。制度上、登録に国の関与はあるものの、個々の「道の駅」の具体的コンセプトを描くのは地域の人々であり、そこには自由な発想が盛り込まれることを重視しております。

これまでの「道の駅」政策の展開としても、最初はドライバーの休憩場所という役割(「道の駅」第1ステージ)でしたが、次第に旅の目的地としての発展を遂げ(第2ステージ)、現在では、地方創生や観光、防災の拠点として地域全体を活性化するきっかけとなる役割が期待されるといった進化をしています(第3ステージ)。この第3ステージで「道の駅」に託された最大の役割は、「地域の魅力を発信し、地域を元気にすること」と捉えています。

それぞれの地域の魅力を伸ばし課題を解決する役割を「道の駅」は期待されており、それに応えるべく、設置者である市町村等が様々なアイデアを出し合い、工夫や努力をしてきた結果、個性豊かな「道の駅」が数多く誕生してきたのではないかと考えています。

地域住民や訪れる人々にとっての「道の駅」の魅力とは何でしょうか。

コンビニやインターネットであらゆるものが手に入る現代において、「道の駅」が持つ「そこに行かなければ味わうことができない、手に入らない」という魅力は非常に重要なことだと考えています。そして、「道の駅」は地域の魅力再発見の場でもあり、「道の駅」に訪れた人々がその場で休憩・買い物をするだけではなく、地域の魅力や資産に共感・感動してもらい、背景にある風土への理解なども含め、地域全体のファンになってもらう、その広がりで地域全体が盛り上がってゆくことを我々は期待しています。

大規模災害時等の広域的な防災拠点としての役割。自衛隊、警察、テックフォース等の救援活動の拠点、緊急物資等の基地機能、復旧・復興活動の拠点等に活用されることが期待されている。 Photo: 国土交通省道路局

また、災害の多い我が国において、「道の駅」は防災機能としての役割も大いに期待されています。2004年の新潟中越地震や2011年の東日本大震災においては、「道の駅」が地域の避難所や道路・被災状況の発信、広域的な救援・復旧活動の拠点として活用されるなど、大きな役割を果たしました。我が国は災害が多い国であり、今後とも様々な災害に対して適切に対応し得る地域づくりが非常に重要となっています。こういった国土の特性においても、「道の駅」は防災や復旧・復興の拠点としてその機能を担うことが必要であり、期待されていると考えています。

平成28年熊本震災時に被災地救済の拠点として使用された道の駅「あそ望の郷くぎの」

最近では国内だけでなく、海外からの旅行者も増加しつつある道の駅ですが、今後の展望をお聞かせください。

「道の駅」誕生から四半世紀を経て2020年からの新たなチャレンジとして、「「道の駅」を世界ブランドへ」を目指すべき姿のひとつと掲げ、海外からの外国人観光客の取組みや海外へのプロモーションを推進しています。多言語対応や外国人観光案内所の設置、キャッシュレス決済の導入といった基本サービスを充実させて、海外からの外国人観光客を積極的に取り込み、地域の文化体験やバス・自転車・レンタカーなど周遊交通手段を活用した観光サービスを提供している「道の駅」もあります。

例えば、北海道ニセコ町にある道の駅「ニセコビュープラザ」は、背後の北海道の大自然・景勝地や国際的に評価されているニセコスキーリゾートを訪れる外国人観光客のゲートウェイとしても利用されており、多言語案内サービスや地域ぐるみで外国人向けの宿泊施設や飲食店を整備したことで、外国人観光客数が年々増加しています。

北海道の道の駅「ニセコビュープラザ」の情報プラザでは、観光協会職員が町や近郊の案内を行っている。また、外国人観光客を積極的に呼び込むため、デジタルサイネージを使って英語で地域情報を提供したり、ニセコ観光圏のフェイスブックへアクセスできるWiFi-SPOTを整備している。Photo:国土交通省道路局, PIXTA

「道の駅」には、多くの魅力と期待が込められており、そのポテンシャルは高く、まだまだ進化の過程だと考えています。これからも世界に誇れる日本発祥の「道の駅」を知ってもらい、外国の方を含め、多くの方に利用していただける「道の駅」の整備・普及に努めてゆきたいと考えています。