June 2023
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東京のオフィス街を照らす和傘のイルミネーション
2018年から、東京駅の近く大手町にて、和傘を用いたライトアップイベントが開催されている。「オフィス街と和の明かりが写真映えする」と話題となっている。そのイベントを企画した主催者に話を聞いた。
会社勤めをしながらまちづくりの勉強をしていたメンバーで実行委員会を立ち上げて生まれたライトアップイベント「和ルミネーション」。開催地・大手町は、東京の表玄関とも言われる東京駅と、天皇陛下のおすまいである皇居を挟んだエリアの北西部に位置する。大手町は大企業や金融機関などの本社ビルが集まる日本屈指の「オフィス街」であるが、同時に歴史的にも興味深いエリアであるといった魅力があり、イベント開催地として選んだという。
大手町は、現在ほとんどおもかげはないが、17世紀〜19世紀後半半ばまで、徳川幕府の将軍に仕える大名たちの屋敷*が立ち並んでいたという歴史を有するエリアだ。かつて大名たちが住み、多くのサムライたちが行き交っていたエリアに‶和を感じられる空間づくり"を演出するため、日本の伝統工芸品である和傘を使ったイルミネーションイベントを行うことにしたという。
「『和ルミネーション」では、開催2年目の2019年には、和傘を100本ほど用いて、行燈**に見立てて展示しました(写真参照)。大手町の中でも人々でにぎわう仲通りの両サイドに直線状、あるいは曲線状に並べるなど、和傘の並べ方にも変化をつけてライトアップし、好評でした。ほかの年では、道路に並べるだけではなく、和傘を組み合わせてタワー状にするなどして、オブジェのような作品として、ビルのエントランスや通りに展示しました。和紙を貼って作る和傘から漏れる灯りは柔らかく、その光を見ているだけで美しいです。灯りを通じてまちの魅力に触れて欲しい』と話す実行委員会の北村あゆみさん。
また、過去の開催企画では、職人による和傘製作実演や、和傘の骨組みに紙を貼るワークショップも行われ、外国から来た方々にも好評だった。「とてもきれい」「技を見せてくれてありがとう」「AMAZING! Beautiful Japan!」などのコメントをもらい、和傘を日本の伝統工芸であると認識したうえで、海外の方もワークショップを楽しんでいたそうだ。
2023年も「和ルミネーション」は、10月開催で調整中のようだ。「オフィス街ですが、週末や、勤務時間以外にも多くの人が行き交う街になり、大手町のファンがどんどん増えていくと嬉しい」と実行委員の北村あゆみさんは開催への意気込みを語った。
* 徳川幕府は、徳川家に仕える諸大名に江戸に住居を与え、1年交代で江戸と領地を行き来する生活をしていた。江戸城跡は現在皇居として使われ、一部が皇居東御苑として一般公開されている。
** 行燈(あんどん)とは、竹や木などで作られた枠に和紙を貼った照明器具。昔は、光源に油やろうそくを用いたが、現在では電気を使うものも行燈と称する。