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May 2023

相撲力士の鯛持ち

  • 令和初の横綱(第73代)に昇進し、鯛を2匹持つモンゴル国出身の照ノ富士 Photo: 日本相撲協会
  • 内閣総理大臣杯を受け取る照ノ富士 Photo: 日本相撲協会
  • 2017年の大相撲初場所(1月開催)で優勝し、横綱(第72代)に昇進した稀勢の里(きせのさと)
    Photo: 日本相撲協会
  • 照ノ富士の横綱昇進時の取り組み Photo: 日本相撲協会
  • 東京 ・両国の国技館では1月、5月、9月に大相撲を開催。場所中はのぼり旗がにぎやかに立ち並ぶ。
令和初の横綱(第73代)に昇進し、鯛を2匹持つモンゴル国出身の照ノ富士 Photo: 日本相撲協会

日本の国技とされる相撲(すもう)。その相撲のプロの力士は、優勝したときや横綱*昇進の際に鯛を持って記念撮影をする風習がある。

相撲は、日本の伝統的な格闘技の一つで、その起源は1500年以上も前にさかのぼるとも言われている、日本の長い歴史を有する競技だ。古来、その年の農作物の収穫を占う祭りの儀式として行われ、奈良時代(710年から8世紀末)には宮中において天皇の前でも行われるようになり、平安時代(8世紀末~12世紀末)には宮中の年中行事となったという。その後、武士階級でも戦闘の訓練として奨励され、近世になると職業力士が現れて、庶民も観戦する競技となっていった。

そして、近代化に伴って職業力士の競技団体の組織化が徐々に行われ、1925年、現在の日本相撲協会のもととなる団体が設立されて今日に至っている。

現在、日本相撲協会が主催する、最も権威のある相撲の競技興行を特に「大相撲(おおずもう)」と呼称する。

この大相撲において、鯛が重要な役目を果たす時がある。鯛は日本では「めでたい魚」とされ、古来より縁起物として贈り物や祝い事などに用いられている魚だ。そのため、力士が優勝したときや横綱昇進という特別なお祝いの場に大きな鯛が用意され、それを持って記念撮影する風習がある。

2017年の大相撲初場所(1月開催)で優勝し、横綱(第72代)に昇進した稀勢の里(きせのさと)
Photo: 日本相撲協会

現在の大相撲では、年に6回「本場所」と呼ぶ日本相撲協会主催で定期的かつ公式な興業が開催され、優勝力士が決定する。この鯛は、優勝力士が所属する部屋(力士を養成するところ)が用意するという。実は、食用の鯛など市場に出回る鯛で、力士が持つ鯛ほどの大きなサイズは稀だという。その多くが天然物で、大きくて立派に見えるものが、特に縁起の良い鯛であると考えられている。

東京 ・両国の国技館では1月、5月、5月に大相撲を開催。場所中はのぼり旗がにぎやかに立ち並ぶ。

大相撲でのこういった風習は、おおよそ200年前に確立されたというが、様式や格式を重んじる競技だからこそ、その一つ一つを受け継ぎ大切にしているのだ。

照ノ富士の横綱昇進時の取り組み Photo: 日本相撲協会

現在活躍する横綱、モンゴル国出身の照ノ富士(てるのふじ)。2021年の7月場所後、73代横綱に昇進した際、大きな鯛を2匹も掲げて記念撮影に臨んだ。入門以降、順風満帆に大関**まで昇進しながら、膝の故障に苦しみ長く不遇の時代を経てから、見事に復活を遂げ、横綱となった照ノ富士。彼が手にした大鯛には、今後のますますの活躍と健康への願いが込められているに違いない

内閣総理大臣杯を受け取る照ノ富士 Photo: 日本相撲協会

* 力士の最高位の地位。現在の照ノ富士(てるのふじ)で73代目となる。歴代、日本人だけではなく、米国(ハワイ)出身や、モンゴル国出身もいる。
** 横綱に次ぐ上位力士。