お子さんの将来のために
よく話し合って決めておきましょう
「養育費」と「面会交流」
令和3年(2021年)4月19日

離婚の際には、当事者が離婚の条件について「話し合って合意を」といっても、難しいことがあると思います。しかし、まだ社会的に自立していない子どもがいるご夫婦が離婚する場合は、子どもの養育費と面会交流について、よく話し合い、合意した内容を文書に残しておきましょう。何よりも子どもの健やかな成長のために。養育費の分担と面会交流の方法等について、合意文書のひな形と併せてご紹介します。
ここがポイント!
コラム
1
どうして養育費を支払うの?
離婚して離れて暮らす親も、子どもの成長を支え、親の責任を果たすためです
子どもを育てることは親の義務です。離婚して子どもを引き取った親だけでなく、親権者でなくなり子どもと離れて暮らすことになった親も、子どもの親であることに変わりはありません。法律上の親子関係も存続し、子どもの成長を支えるという親の責任も変わりません。
子どもが経済的、社会的に自立するまでには、衣食住や教育、医療など、様々なことにお金がかかります。こうした子どもの養育に必要なお金を「養育費」といいますが、離婚によって子どもと離れて暮らす場合でも、親には子どもの養育費を負担し、子どもが自分と同じ水準の生活をできるようにする義務があります。

子どもと離れて暮らすことになる親と子どもの関係を大事にするためにも、離婚するときには、養育費の支払いについてきちんと取り決めておくことが重要です。例えば、次の表のようなことについて、よく話し合って具体的に取り決めておきましょう。
養育費について取り組めておくこと(例)
(1)金額
両親の経済状態や子どもの事情に応じてよく話し合って決めましょう。
その際には、実際に家庭裁判所の調停・審判においても目安として参照されている「算定表」を参考にしてもよいでしょう。(※)
※平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
「算定表」は、両親双方の収入額と、子の年齢・人数に応じ,標準的な養育費等の目安を算出するものです。調停・審判においては、「算定表」の額を参照しつつ、個別事情も考慮して、具体的な養育費等の額が検討されることが一般的とされているようです。
(2)支払期間
いつからいつまで支払うか、明確に支払期間を定めておくことが望ましいでしょう。例えば、18歳、20歳、22歳など、子どもが一定の年齢に達するまで、と具体的に定めておくことが考えられます。
また、既に、子の養育費について、「子が成年に達するまで養育費を支払う」との取決めがされていることがあります。このような取決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことからすると、2022年4月1日以降、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたとしても、従前どおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられます。
また、養育費は、子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので、子が成年に達したとしても、経済的に未成熟である場合には、養育費を支払う義務を負うことになります。
(3)支払方法
毎月、一定の日に定期的に支払う例が多いようです。
(4)臨時の費用
大学などの入学金や授業料など、子どものためのまとまった費用が必要になった場合の扱いや、突然の傷病による入院・治療費など、臨時の費用が生じた場合の取扱いについても、決めておくことが考えられます。
こうした取り決めの内容は、口約束だけだとトラブルが生じる可能性があるので、お互いの約束事を証明するものとして、「合意書」や「公正証書」などの書面に残しておきましょう。書面の作成方法については3章でご紹介します。
2
どうして面会交流を行うの?
子どもが健やかに成長するためです
面会交流は、子どもと離れて暮らす親が、子どもに定期的、継続的に会って話をしたり、一緒に遊んだり電話や手紙などで交流したりすることをいいます。

子どもにとって両親の離婚は大きな出来事です。両親の離婚を経験した子どもは、一方の親と離れることを寂しいと感じたり、両親の離婚の原因が自分にあると思ったり、また、今後の生活について心配したりします。面会交流はそんな子どもに、両親がそれぞれの立場から「あなたは悪くないよ」、「離れていても大好きだよ」という気持ちを伝える方法の一つです。

面会交流の方法や時期、回数などについては、子どもの年齢や健康状態、生活状況などを考えて、無理のないように決めましょう。離婚により離れて暮らす親と、子どもが暮らす場所との距離や移動の時間なども考慮した方がよいでしょう。
また、親同士が互いに守らなければならないルールも決めておくようにしましょう。例えば、次の表のようなことについて、よく話し合って具体的に取り決めておきましょう。
こうした取り決めの内容は、口約束だけだとトラブルが生じる可能性があるので、お互いの約束事を証明するものとして、「合意書」や「公正証書」などの書面に残しておきましょう。書面の作成方法については、3章でご紹介します。
面会交流について取り組めておくこと(例)
(1)頻度
週または月に何回程度か、など。
(2)内容
1回あたり何時間程度を目安とするか。日帰りか、宿泊を伴うか、など。長期の休みなどの場合は、一定期間の宿泊を伴う交流を行うか、など。
(3)場所
受け渡し場所について
(4)その他
事情が変わった場合の連絡先や、子どもの年齢や状況に応じて調整するか、など。
3
養育費や面会交流の取り決め文書の作り方は?
「子どもの養育に関する合意書」のひな形を参考に作りましょう
養育費の支払いや面会交流の取り決めに関する文書を作成しやすくするために、法務省では「子どもの養育に関する合意書」(以下、「合意書」といいます)のひな形を用意し、法務省サイトからダウンロードできるようにしています。
また、法務省では、パンフレット「子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」を作成し、市区町村の窓口で配布するとともに、法務省サイトからダウンロードできるようにしていますので、こちらも合意書をつくる参考にできます。
どちらも一般的に必要と考えられる項目を記載・紹介しているものです。細部は子どもの立場に立って、それぞれの事情に応じて取り決めを行って記載してください。
なお、子どもの成長や、離婚後の両親の状況によっては、合意書の修正・変更が必要になることがあるかもしれません。その場合も、よく話し合い、子どもに十分に配慮するようにしましょう。
合意書は、子どもの養育費と面会交流についてお互いの約束事を証明する文書です。離婚届を出す際に提出する必要はありませんが、2通作成して、双方が1通ずつ保管してください。
(ひな形 記入例画像)

なお合意書は、父母の間の契約書ということにはなりますが、家庭裁判所における審判書や調停調書とは異なり執行力がないため、取り決めの内容が守られなかったときに、それだけでは相手方の財産に対して強制執行を行うことはできません。合意書を「公正証書」として作成しておけば養育費については、家庭裁判所における審判書や調停調書と同様に執行力を有する文書となりますので、未払いなどのトラブルが起きた時に備えることができます(ただし、相手方の執行認諾文言が記載されていることが必要です。)。公正証書の作り方や手数料などについては、最寄りの公証役場にご相談ください(※)。
また、養育費や面会交流について、市区町村によっては相談窓口を設置したり、無料法律相談を行ったりしているところもありますので、まずは、お住まいの市区町村に聞いてみてください。
また、養育費相談支援センターでも相談に応じていますし、母子家庭等就業・自立支援センターでも相談に応じている所があります。
このほか、裁判手続や強制執行手続等の法律的な問題について相談したい場合には、日本司法支援センター(法テラス)に相談してみてもいいでしょう。また、家事調停の申立て等をお考えであれば、必要な書類等の手続きについて、最寄りの家庭裁判所にお問い合わせいただくことも考えられます。
相談窓口
- 養育費相談支援センター
フリーダイヤル 0120-965-419/03-3980-4108 - 最寄りの母子家庭等就業・自立相談センター
- 日本司法支援センター(法テラス)
法テラス・サポートダイヤル 0570-078374 - 法務大臣の認証を受けたADR(かいけつサポート)
あなたと相手方との話し合いをサポートする民間業者もいます。
→家事事件を取り扱う認証紛争解決事業者一覧
※家族の問題を取り扱っているかいけつサポートが掲載されています。 - 日本公証人連合会
- 裁判所
こんな場合はどうなるの? ~基本的な3つのQ&A
Q.養育費や面会交流の取り決めをしないと離婚はできないの?
→A.離婚できます。
養育費や面会交流の取り決めは、離婚の条件にはなりません。ただし、民法には、離婚をする際に両親が話し合って決めるべき事柄に養育費の分担が定められており、養育費の取り決めをする際には、子どもの利益を優先して考慮しなければならなければならないとされています。離婚という結論を出すまでには、様々ないきさつや事情があり、親にとっても、それを乗り越えて新しい生活を築いていくことは大変なことですが、子どもにとっては親以上につらいことであり、子どもが両親の離婚を乗り越えて健やかに成長することができるためにも、養育費や面会交流の取り決めはとても重要です。したがって、離婚をするに当たっては、可能な限り、養育費や面会交流の分担の取り決めをしておくことが望ましいといえます。
Q.養育費を払わないと面会交流はできないの?
→A.養育費の支払いと面会交流の実施は関係ありません。
面会交流と養育費の支払いは別々の問題ですので、「面会交流に応じられなければ養育費を支払わなくていい」ということにはなりません。同様に、「養育費が支払われないから面会交流を認めなくていい」ということにもなりません。
養育費も面会交流もその目的は、第一に子どもの心身の健やかな成長のためです。このことを両親は離婚後もよく考えるようにしましょう。
Q.相手が養育費や面会交流についての話し合いに応じない場合は?
→A.家庭裁判所の家事調停手続を利用することができます。
相手が話し合いに応じない、話し合いがまとまらないという場合は、家庭裁判所の家事調停手続を利用することができます。調停は裁判官と民間から選ばれた調停委員が間に入り、非公開の場で双方の言い分を聞きながら、話し合いによって適切な解決を目指します。調停で話し合いがまとまらない場合は調停手続は終了しますが、引き続き、家事審判手続に移行し、そこで必要な審理が行われた上で、審判によって結論が示されます。
→参考
(取材協力:法務省 文責:政府広報オンライン)
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