ドライバー、ライダーの皆さん、「自賠責(自動車損害賠償責任)保険・共済」への加入・更新はお済みですか。自賠責保険・共済は、交通事故により被害者を死傷させてしまったとき、被害者を救済するとともに、加害者が負うべき経済的な負担を補てんする制度です。自賠責保険・共済未加入での運行は法律違反です。必ず加入しましょう。
1自賠責保険・共済とは?
自賠責保険・共済は、交通事故による被害者を救済するため、加害者が負うべき経済的な負担を補填することにより、基本的な対人賠償を確保し、被害者を迅速に救済する制度です。
交通事故の件数は減少傾向にあるものの、依然として多数の事故が発⽣しています。交通事故の当事者となったとき、重要な役割を果たすのが「⾃賠責保険・共済」です。交通事故は、被害者に⼤変に⼤きな損害を与えます。ケガによる入院や通院にかかわる費用や手間はもとより、仕事や日常生活に大きな影響をこうむり、様々な出費や収入減を伴うことがあります。さらに、重い後遺障害が残ったり、死亡事故になったりすればなおさらのことです。また、遺族や当事者の家族等にもはかりしれない精神的、肉体的、経済的な負担が生じます。
一方で、交通事故は加害者にも重い負担を生じさせます。加害者は賠償責任を負うことになりますが、それらの賠償を負うことは、加害者にとっても苦しいことです。賠償金が多額になると加害者に大きな負担となり、人生が変わってしまうことになりかねません。また、加害者の経済状況によって、被害者が十分に賠償を受けられないというのでは、被害者はますます救われません。
そこで、被害者を救済する制度として基本的な対人賠償を確保するために設けられているのが、「自賠責保険・共済」です。この自賠責保険・共済は、加害者が負うべき経済的な負担を補てんするもので、自動車損害賠償保障法によって、全ての自動車、バイク(二輪自動車)、原動機付自転車(原付)(※)や電動キックボード(特定小型原動機付自転車)等に加入が義務づけられています。損害保険会社が行っているものを自賠責保険といい、共済組合が行っているものを自賠責共済といいますが、内容は同じです。ここでは一括して自賠責保険・共済とします。
※この記事での車両についての区分は、道路運送車両法によります。例えば原動機付自転車は、排気量125cc(定格出力1.00kW)以下のものを指します。
2具体的にどのような保障?

自賠責保険・共済は、自動車事故の被害者救済が目的であり、補償範囲は対人事故における相手方の基本的な損害賠償のみとなります。そのため、自損事故による物損(対物賠償)や運転手自身のケガや死亡については適用されません。
また、全ての自動車が加入できる安価な保険料とするため、自賠責保険・共済は、傷害、後遺障害、死亡などの状況に応じて被害者1人当たりの支払限度額が定められており、それを超えた部分は補償されません。事故の被害者1人につき、ケガの場合には最高120万円、死亡の場合には最高3,000万円までが支払限度額として設定されています。
万一交通事故が起きて傷害等を負ったとき、加害者が被害者に対して賠償をする必要が生じた場合、自賠責保険・共済の請求については、加害者がまず被害者へ損害賠償金を支払い、そのあとで、加害者が加入している損害保険会社に対して保険金(共済組合の場合は共済金)を請求します。また、加害者から賠償を受けられない場合は、被害者が直接、加害者の加入している損害保険会社(共済組合)に対して、損害賠償額を請求することもできます。
加害者が自賠責保険・共済のほかに自動車(任意)保険(共済)にも加入している場合は、任意保険会社(組合)は被保険者に対して支払責任を負う限度において、加害者に代わって自賠責保険金を含めて被害者にお支払いすることがあります。これを任意保険会社(組合)が一括して賠償金を支払うことから、「一括払制度」と言います。
損害の範囲 | 保険金上限額 (被害者1名あたり) |
|
---|---|---|
傷害による損害 | 治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 | 120万円 |
後遺障害による損害 | 逸失利益、慰謝料等 | (1)神経系統・精神、胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合
|
死亡による損害 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料(本人及び遺族) | 3,000万円 |
死亡に至るまでの傷害 による損害 |
(傷害による損害の場合と同じ) | 120万円 |
なお、100%被害者の過失により発生した事故(無責事故)の場合は、相手車両の自賠責保険金(共済金)の支払対象になりません。
また、自賠責保険金(共済金)の支払金額など、支払に疑問や不服がある場合は、損害保険会社(共済組合)に対する異議申立制度や、一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構による紛争処理制度、あるいは国土交通大臣に対する申出制度があります。詳細は国土交通省「自賠責保険ポータルサイト/支払に疑問、不服がある場合には」をご覧ください。
3加入・更新の手続きはどこでできるの?
自賠責保険・共済は、各損害保険会社(共済組合)の支店などを始め、クルマやバイクの販売店などの代理店でも取り扱っています。250cc以下のバイク(軽二輪自動車、原付)等なら、一部のコンビニや郵便局、インターネットでも加入が可能です。

車検のある車種 | 普通自動車、小型自動車、軽自動車 小型二輪自動車(250cc超) |
自動車検査証(車検証) 現在契約している自賠責保険・共済の証明書 |
---|---|---|
車検のない車種 | 軽二輪自動車(126ccから250cc) | 軽自動車届出済証 現在契約している自賠責保険・共済の証明書 |
原動機付自転車(125cc以下) | 標識交付証明書 現在契約している自賠責保険・共済の証明書 |
また、自賠責保険料及び自賠責共済掛金は、一律で以下のようになっています。
60か月 | 48か月 | 36か月 | 24か月 | |
---|---|---|---|---|
自家用乗用自動車 | 23,690円 | 17,650円 | ||
軽自動車(検査対象車) | 23,520円 | 17,540円 | ||
軽二輪自動車(125cc超250cc以下) | 14,200円 | 12,470円 | 10,710円 | 8,920円 |
原動機付自転車(125cc以下) | 13,310円 | 11,760円 | 10,170円 | 8,560円 |
※令和5年4月1日以降始期の契約で、離島以外の地域(沖縄県を除く。)に適用する保険料・共済掛金
※電動キックボード(特定小型原動機付自転車)の保険料は原動機付自転車(125cc以下)と同額(令和5年7月1日時点。)
加入・更新の方法など、自賠責保険・共済についての詳しい情報は、国土交通省の「自賠責保険(共済)ポータルサイト」に掲載されています。ぜひご覧ください。
4未加入・未更新で運転した場合は?

原動機付自転車を含む全ての自動車は、自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険・共済に入っていなければ運転することはできません。もし、自賠責保険・共済に未加入だったり、期限が切れたりしているにもかかわらず更新しないまま自動車やバイク等を運転した場合には、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(自動車損害賠償保障法)」が科されます。また、無保険での運転は交通違反となり、「違反点数6点」となって即座に免許停止処分になります。
さらに、万一にも交通事故を起こし加害者になって、相手の命を奪ってしまったり、相手に一生治らない後遺障害が残ってしまったりした場合には、加害者は大きな負担を負うことになります。
5250cc以下のバイクや原付はステッカーにご注意を!
車検がある自動車は、必要な自賠責保険・共済に加入していないと車検を更新できませんが、排気量250cc以下のバイク(軽二輪自動車、原付)や電動キックボード等は車検を受ける必要がないことから、所有者や使用者の中には自賠責保険・共済に未加入であったり、一旦加入したものの更新手続を忘れたままであったり、あるいは有効期限が切れた状態となっている人が少なくありません。
排気量250cc以下のバイク(軽二輪自動車、原付)や電動キックボード等は、自賠責保険・共済に加入更新すると、保険の満期年月を示すステッカー(保険標章)が交付され、ナンバープレートなどの指定された場所に貼らなければなりません。そのステッカーを見れば、そのバイクや原付等が入っている自賠責保険・共済の有効期限が分かります。
排気量250cc以下のバイク(軽二輪自動車、原付)や電動キックボード等の所有者や使用者は、必ずステッカーの色と記載で有効期限を確認の上、期限が切れている場合は忘れずに更新してください。
自賠責保険・共済の有効期限チェック法
排気量250cc以下のバイク・電動キックボード等
排気量250cc以下のバイク(軽二輪自動車、原付)や電動キックボード等は、ナンバープレートのステッカーをチェック


※交付されるステッカーの色(デザイン)は有効期限年ごとに変わります。
自動車・排気量250ccを超えるバイク
自動車や排気量250ccを超えるバイクは、車検ステッカーの有効期限をチェック


6自賠制度による交通事故の被害者支援や事故防止対策とは?
国土交通省では、自賠責保険料の一部を活用して、交通事故の被害者支援や事故防止対策に取り組んでいます。
自賠制度は、交通事故被害者に対する保険金の支払いのほか、自賠責保険料の一部を活用して、ひき逃げ事故や無保険事故(自賠責保険に未加入の車両による事故のため、自賠責保険から補償が受けられないもの)に遭われた被害者に対して自賠責保険と同等の補償を行い、国が加害者等本来の賠償責任者に対して請求する制度を設けています。
さらに、国土交通省では、自賠制度により、交通事故の被害者支援や事故防止対策を行っています。例えば、事故被害者への支援として、重度の後遺障害を負われたかたに対して、独立行政法人自動車事故対策機構(ナスバ)において、自動車事故被害者の専門病院の設置・運営(全国12カ所)を行っているほか、在宅介護されるかたに対する介護料の支給、事故により脊髄損傷や高次脳機能障害を負ったかたへのリハビリ環境整備等の施策に取り組んでいます。また、自動車事故防止を目的として、安全な自動車の普及を促進するための自動車の安全性能評価の実施やASV(先進安全自動車)の導入補助等、様々な取組を行っています。
以下のウェブサイトで、交通事故被害者に必要な自賠責保険制度、各種支援制度及び支援相談機関などの情報を幅広く紹介しています。
交通事故の被害者に対する様々な救済対策
- 交通事故に関する相談先の紹介、介護料の支給、短期入院費用の助成、療護施設の運営、交通遺児などに対する育成資金の無利子貸付など
独立行政法人 自動車事故対策機構(ナスバ)
〒130-0013 東京都墨田区錦糸3-2-1アルカイースト19階
ナスバ交通事故被害者ホットライン
電話:0570-000738(IP電話からは03-6853-8002)
※受付時間10:00から12:00、13:00から16:00(土・日・祝・年末年始を除く) - 自動車事故被害者等に対して相談支援を実施する団体 独立行政法人 自動車事故対策機構(ナスバ)「相談支援実施団体」
- 交通遺児などに対する育成給付金、生活資金、入学支度金の支給など
公益財団法人 交通遺児等育成基金
〒102-0083 東京都千代田区麹町4-5海事センタービル7階
電話:0120-16-3611(フリーダイヤル) - 自賠責の支払いに関して紛争が生じた場合など
一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-4龍名館本店ビル11階
〒541-0051 大阪府大阪市中央区備後町3-2-15モレスコ本町ビル2階
電話:0120-159-700(フリーダイヤル) - 自動車事故の相談・示談あっ旋・電話相談など(無料)
公益財団法人 日弁連交通事故相談センター
〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3弁護士会館14階(本部)ほか全国一円
弁護士による無料の電話相談 電話:0120-078325
(取材協力:国土交通省 文責:政府広報オンライン)
関連リンク
- 国土交通省「自賠責保険(共済)ポータルサイト」
自賠責保険(共済)に関する情報や交通事故に遭われた被害者や家族が必要とする情報について分かりやすく解説しています。
国土交通省「自賠責保険(共済)ポータルサイト」携帯版
- 独立行政法人 自動車事故対策機構(ナスバ)
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