いのちをつなぐ 臓器移植

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ラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection

10月16日は、家族や大切な人と「移植」や「いのち」のことを話し合い、臓器提供に関する意思を確認する記念日「グリーンリボンデー」。番組では、医師もゲストにお招きし、臓器提供の基本を深掘りします。また、臓器移植を希望する人のうち提供を受けられる人が少ない日本の現状と課題、臓器提供に関する法整備、近年はインターネットで登録もできる意志表示の方法、さらに、臓器を提供されたご家族の声などをご紹介します。

ゲスト

一般社団法人 日本救急医学会 評議員
脳死・臓器組織移植に関する委員会委員
林 宗博

スペシャリスト
厚生労働省 健康・生活衛生局
難病対策課 移植医療対策推進室 室長補佐
吉川 美喜子

ストリーミング(音声で聴く)

放送日
令和5年(2023年)10月15日
再生時間
19分19秒
配信終了予定日
令和6年(2024年)10月14日

文字で読む

青木
明日、10月16日は「グリーンリボンデー」です。
足立
レッドリボン、ピンクリボン、パープルリボンは聞いたことがありますが、グリーンリボンデー?
青木
「グリーンリボンデー」は、家族や大切な人と「移植」のこと、「いのち」のことを話し合い、お互いの臓器提供に関する意思を確認する記念日です。26年前の1997年10月16日、臓器移植法が施行されたことを契機に設けられました。足立さんはご結婚されたばかりですが、パートナーと臓器移植について話したことはありますか?
足立
そう言われると、ないですね。これは、今後、夫婦という形の中でも大事なことになってきますよね。
青木
臓器移植は提供する方、される方、そして、そのご家族、様々な方の思いが尊重されるものです。家族で話し合うにも、まず基本的なことを知ることが大切です。今日はゲストがお二人です。一般社団法人日本救急医学会評議員脳死・臓器組織移植に関する委員会委員林宗博さんと、厚生労働省健康・生活衛生局難病対策課移植医療対策推進室室長補佐の吉川美喜子さんです。林さんは日本赤十字社医療センターの救急科部長でもいらっしゃって、臓器提供の現場に立ち会うことも少なくないそうですね。
はい。実際に臓器を提供していただくご家族と接し、その思いを伺うことも多く、様々なケースに立ち会っています。亡くなる方からの臓器提供は「死」が前提となるため、多くの方に配慮が必要な医療です。そして、今は元気であっても、突然の病や事故により誰もが臓器を提供する、また、臓器の移植を受ける立場になる可能性があります。ですから是非、この機会に考えていただきたいと思っています。
青木
吉川さんも医師なんですよね。
吉川
はい。私も臓器移植を医師として担当したことがあります。
青木
現在はその経験をいかして施策に携わっていらっしゃいます。足立さん、分からないこともたくさんあると思いますけど、まず、何から伺っていきたいですか?
足立
そうですね、やっぱり臓器移植というと、ドラマで描かれることがあるので、そういう医療があることは知っていますけど、詳しくは分からないので、是非、基本から教えていただきたいです。
青木
林さん、まず臓器移植とは、どういう医療か教えてください。
はい。人間のからだの中には、心臓、肺、肝臓、腎臓などの臓器があり、それぞれが決められた仕事をしています。これらの臓器が、薬や手術では治せないほど機能しなくなったとき、亡くなった方や親族で健康な方の臓器と交換することで、元気なからだを取り戻す治療法を「臓器移植」と言います。臓器を提供する人を「ドナー」と言い、移植を受ける人を「レシピエント」と言います。
足立
臓器移植はどのくらいの頻度で行われているんですか?
吉川
はい。日本で臓器移植を希望して登録している人は、今年の3月末時点でおよそ1万8,000人です。そのうち、1年間にいずれかの臓器の提供を受けられる人は、およそ5.5パーセントで、990人程度です。
足立
臓器移植を希望している全ての方が移植を受けられているわけではないんですね。
吉川
実は日本は臓器提供の件数が、欧米などと比べて非常に少ないんです。亡くなられた方からの臓器提供が多いアメリカやスペインが、人口100万人当たり40人から50人のドナーがいるのに対して、日本は多いときでも0.99人です。
足立
それは、何か理由があるんですか?
吉川
大きな要因は二つあると考えられています。一つは、国民の皆さんに対する臓器移植への啓発がまだ十分でないことです。例えば教育に関して言えば、2019年度から中学教育の一環として、移植医療が取り上げられる機会が増加しましたが、それまでは、義務教育で移植医療について教えられることは多くはありませんでした。そして、もう一つは医療側の体制も十分とは言えないことです。
足立
確かに、言われてみると学校で教わった記憶はないですね。林さん、医療側の体制が十分に整っていないというのは、どういうことですか?
これに関してはいろいろな要因があります。一つ挙げるとすると、医療従事者から、臓器提供が可能な全ての方、あるいは、そのご家族に対して、「臓器を提供する意思があるかないか」の確認をすることが、残念ながらできていません。こうしたことも、ドナーが少ない要因と考えられます。例えば、医療従事者から「臓器提供についての情報提供」がされていれば、それがきっかけとなって、家族が患者さんとの最後の時間をどのように過ごすか、臓器提供をどうするか、これらを考えるきっかけになると思います。このため、確実に家族に臓器提供に関する情報を提供する医療の仕組みを考えることが大事だと思います。ちなみに、アメリカやスペインでは、このような医療の仕組みがすでに構築されています。
足立
家族に対して「臓器提供」の確認をするときは、患者さんの死を前提にお話をしなければならないわけですから、簡単なことではないですよね。臓器提供は、全ての方が臓器を提供できるわけではないですよね。どのような場合、人は臓器を提供できるのでしょうか?
はい。まずは、人が臓器を提供する場合の「死」について理解することが必要です。「死」には、「心臓死」と「脳死」の2種類があります。「心臓死」は心臓が止まり血液が流れなくなる「死」です。こうなったからだは、だんだん冷たくなっていきます。
青木
一般的に「死」というと、恐らく多くの方がこの心臓死をイメージしますね。
もう一つの「脳死」は、脳が機能しなくなる「死」のことを言います。事故や病気などで脳が傷ついて、全ての機能を失ってしまうと、意識がなくなり呼吸は止まってしまいます。しかし、機械を使って、酸素を肺に送り、呼吸ができると心臓はしばらく動き続けます。
青木
機械を使っているとはいえ心臓は動いているので、からだは温かい状態です。
ただ、一度「脳死」の状態になってしまうと、元の元気な姿に戻ることはなく、血圧を維持したり、酸素を肺に送るなどの医療を行わなければ、すぐに心臓も止まってしまいます。日本では1997年に臓器移植法が施行され、脳死で臓器を提供する場合に限り、法的脳死判定を行い脳死診断することになりました。
青木
心臓死の場合、提供することができる臓器は、現在、腎臓、膵臓、眼球にとどまりますが、脳死の場合、心臓、肺、肝臓、小腸も提供できるそうで、法律ができた意義は大きいですね、吉川さん。
吉川
はい。移植でしか命をつなぐ方法がない患者さんやご家族にとって、あるいは、臓器の提供の意思があり、一人でも多くの方の命を救いたいと思われるご本人やご家族の思いをつなげる、ひとすじの希望になったかと思います。
足立
そうですよね。いろいろな方々が法律ができるのを待っていたんだろうなと思います。
吉川
ただ、1997年に施行された臓器移植法では、脳死での臓器提供には、本人の書面による意思表示と家族の承諾を必要とするとしていました。また、この意思表示は15歳以上を有効としていたため、15歳未満の脳死後の臓器提供はできませんでした。そのため、小さな臓器が必要な、からだの小さなこどもへの心臓や肺の移植は不可能でした。
青木
そして法律が改正されたんですよね。
吉川
はい。そうした背景もあり、2010年には法律が改正され、本人の意思が不明な場合にも、家族の承諾があれば脳死での臓器提供ができることになりました。このことにより、15歳未満であっても、脳死での臓器提供が可能となり、日本国内でもこどもたちの心臓や肺の移植の道が開かれました。
足立
それは良かったなと思う一方で、「本人の意思が不明な場合にも、家族が承諾すれば脳死での臓器提供ができるようになった」ということは、家族が本人に代わって決断しなければならないんですよね。もし、私が家族の立場になったら、かなり悩むと思います。林さん、実際、そのような場面に立ち会ったことはありますか?
はい。何度もあります。
青木
ご家族はどんなご様子でしたか?
まず、突然、最愛の家族を失うことが明らかとなった、悲嘆な状況にあると思います。脳全体の機能が失われていて、目を覚ましたり、食事も自身でとることもできず、自身の力で生きていくのが困難な状況にあることを理解していただいていることが重要なんです。
足立
移植を拒まれたご家族ももちろんいらっしゃったと思うのですが、それは、どのような思いからだったんでしょう?
やはり、亡くなるご家族の体に傷を付けたり、臓器を取り出す、提供することが受け入れられない、恐らく、ご家族が亡くなることが受け入れられないのだと思います。ですが、これも家族がご本人を思う大切な考えであると思います。
青木
逆に、移植を決断したご家族は、どのような思いで決断されたように見えましたか?
予期せず亡くなる状況になったご家族が、臓器を提供することで、どこかで生きている、誰かのもとで役に立ってほしいとお考えになる、あるいは元気なときにご家族で臓器提供についてお話になったことをもとに決断されていると思います。
足立
話し合うことも大事なんですね。
青木
やはり、事故や病気などで突然、そういう状況に直面する場合もあると思います。悲しみや混乱の中で、そういった決断ができるというのは、すごいことだなと思いますね。
足立
この決断は、早めにしないといけないんですか?
必ずしもそうではありません。やはり、時間をかけて、ゆっくりとお話することも大事だと思います。
青木
吉川さん、日本で臓器移植法が施行されて明日で丸26年ですよね。これまでに、脳死により臓器の提供が可能になったケースはどれくらいあるのでしょうか?
吉川
9月末時点で992名、あと少しで1,000名になります。これは、臓器を提供してくださる方はもちろん、そのご家族の理解と重い決断があってこその成果ですから、改めて敬意を表したいと思います。
青木
林さんは、これまで多くのご家族と接していて、どんなことを感じていらっしゃいますか?
まずは、臓器を提供してくださる方、そのご家族にいつも敬意を表しています。その上で、私が感じていることは、臓器移植に関して日頃から家族や大切な人と話し合うことがとても大切だということです。もし自分や家族が臓器移植により命が助かるかもしれないとしたら、「臓器移植を受けたい」か「受けたくない」か。もし自分や家族が死に直面したとき、「提供できる臓器をあげたい」か「あげたくない」か、よく話し合っていただきたいと思います。
青木
どちらの考えが「良い」「悪い」「正解」「不正解」ではないんですよね。自分はどうしたいかを考えて、家族に伝えておくこと、逆に、家族はどうしたいのか、その思いを聞いておくこと、それが大切なんですよね、吉川さん。
吉川
はい。臓器移植に対する考えは、どのような考えであっても尊重されるべきもので、どの気持ちも守られます。ですから、皆さんには、その意思を正確に伝えるための手段を知っておいていただきたいと思います。
足立
確か、意思を表示できるカードがありますよね?
吉川
はい。もしかしたら医療機関や薬局等でご覧になったことがあるかもしれませんが、臓器提供意思表示カードという専用のカードがあります。この「意思表示カード」は、「自分の臓器を提供したい」という意思も、「提供したくない」という意思も書いておくことができます。「提供したい」という意思を書くのは15歳以上が有効ですが、「提供したくない」という意思は15歳未満でも有効です。
足立
「提供したくない」ということも書いておくべきなんですね。
吉川
はい。その通りです。
青木
また、健康保険証の裏や、マイナンバーカード、運転免許証にも意思表示欄がありますよね。いつも持ち歩くカードに意思を表示しておけば、もしものときに医療関係者に見付けてもらいやすいですね。それから近年は、インターネットからも意思表示をできるそうです。
吉川
はい。臓器提供に関する意思表示には、インターネットからの登録方法もあります。運転免許証や意思表示カードが手元にない場合でも、その意思を登録できます。日本臓器移植ネットワークのホームページをご覧になってください。
臓器移植を受けると、必ず1年間、臓器を提供いただいたご家族にお便りが届くようになっています。臓器移植により、健康な人々と変わらない生活を送っている方を拝見することもありますし、我々のもとから提供いただいた方の臓器も、同じように日々過ごしているのかと思います。明日はグリーンリボンデーですから、是非、「いのちの尊さ」や「臓器移植」について、考えてみていただきたいと思います。
足立
今日の話を聞いて、グリーンリボンデーがあることが頭の隅からすっかり抜けていたことに気付きました。グリーンリボンデーがあるということを知ると同時に、皆さん臓器移植したいのか、したくないのか、ご家族、そして自分がどうしたいのか、話し合うきっかけになればいいなと思いました。
青木
今日の話を聞いて、1997年に施行された臓器移植法が印象に残りました。心臓死の場合は、提供することができる臓器は現在、腎臓・膵臓、眼球にとどまるんですが、脳死の場合は、心臓・肺・肝臓・小腸も提供できるということで、助かる命が増えるんじゃないかなと思いました。

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