事業の新たな展開を応援! リスキリング支援
仕事で新たに必要となる知識や技術を習得する「リスキリング」。企業内に知識や技術を持つ人材を確保できるため、事業展開がスムーズに進むなど、大きなメリットがあるのですが、人材育成にはコストが掛かります。そこで番組では、企業が取り組むリスキリングを支援するために新たに創設された「事業展開等リスキング支援コース」を深掘り!助成の内容や、対象となる取組について事例を交えて紹介します。

- ゲスト
- 厚生労働省 人材開発統括官付
企業内人材開発支援室長
和田山 純一
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和5年(2023年)2月26日
- 時間
- 16分26秒
- 配信終了予定日
- 令和6年(2024年)2月25日
文字で読む
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青木 - 「リスキリング」という言葉、最近よく耳にしますが、足立さんは聞いたことはありますか?
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足立 - 聞く機会は増えましたが、その意味は理解してないです。
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青木 - 足立さんと同じように聞いたことはあるけれど、意味は知らないという方も多いのではないでしょうか?「リスキリング」とは、「リ・スキリング」つまり「再び・スキルを習得する」ということで、仕事で新たに必要となる、知識や技術を身に付けることを言います。特に近年、企業では、デジタル技術を活用して業務の効率化を図る、技術革新などが進められていますよね。
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足立 - この番組でも、DX、デジタルトランスフォーメーションといったデジタル技術の必要性について、いろいろ学びましたが、そういうことですか?
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青木 - そうなんです。そうした技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、事業主が新しい知識や技術を従業員に「学ばせること」、そして、従業員は「学ぶこと」などに対して、特に「リスキリング」という言葉が使われています。単なる社会人の学び直しとは異なるんです。
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足立 - やっぱり、リスキリングのメリットは大きいんですか?
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青木 - もちろんです!企業が新たな事業を展開したいときに、その事業に必要な知識や技術を持っている従業員がいれば、事業展開がスムーズに進みますよね。リスキリングにより、新しい知識や技術を従業員に学ばせれば、企業内で知識や技術を持っている人材を確保できますので、企業のメリットは大きいです。企業が持続的に発展していくためには、社会の変化に合わせて成長分野などに事業展開していくことが大切ですから、今、従業員のリスキリングの必要性を感じている事業主は多いと思います。
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足立 - でも、従業員に新しい知識や技術を学ばせるには、コストが掛かりますよね。
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青木 - そうなんです!そこで創設されたのが「事業展開等リスキリング支援コース」という助成金メニューなんです。ここからは、スペシャリストに伺っていきましょう。厚生労働省 企業内人材開発支援室長の和田山 純一さんです。
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足立 - 和田山さん、この「事業展開等リスキリング支援コース」について、詳しく教えてください。
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和田山 - はい。「事業展開等リスキリング支援コース」は「人材開発支援助成金」という助成金制度に、新たに創設された支援コースです。そもそも「人材開発支援助成金」というのは、従業員が職務に関連した専門的な知識や技能を習得するために、事業主が計画的に人材育成を行うことを、厚生労働省が支援する助成金制度のことです。
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足立 - 今回、新たに創設された理由は何ですか?
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和田山 - はい。政府は、リスキリングと成長分野への投資を推進することで、企業の生産性が向上される環境を整備し、更なる賃上げを生むという好循環による「構造的な賃上げ」の実現を目指しています。こうしたことから、経営の安定や持続的な発展のため、事業展開をしていく上で、企業が取り組むリスキリングを支援する「事業展開等リスキリング支援コース」を創設したんです。
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足立 - 確かに、日本は30年間、年間の平均賃金がほとんど上がっていないと聞きました。
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青木 - そうですよね。働き手の立場で考えても、同じことをやっていて、賃金が上がっていくということは、なかなかないですよね。やっぱり、企業は成長が必要ですし、自分自身も働き手として、どんどんブラッシュアップしていくという視点も大切なので、それを支援してくれるというのは、うれしいですね。
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足立 - では、「事業展開等リスキリング支援コース」はどんな特徴があるんですか?
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和田山 - はい。この支援コースは「事業展開など」と「デジタル・DX化」、そして「グリーン・カーボンニュートラル化」、これら3つのいずれかに取り組む事業主を対象に、人材育成に係る訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。
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青木 - ちなみに、この支援コースは、その助成率が非常に高いのも特徴の一つなんです。中小企業の場合は75パーセン、大企業でも60パーセントで、 1事業所の助成限度額は、なんと1年度あたり1億円です!!
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足立 - 結構ありますね!!
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青木 - 例えば、中小企業の場合ですと、1年間の訓練経費が1,000万円掛かったとしても、750万円サポートしてもらえるので、実際に事業主が支払うのは250万円で済んでしまうということです。さらに、訓練で掛かった経費とは別に、賃金助成として、1人1時間当たり960円も出るそうですよ。
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足立 - そうなの!?
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青木 - 雇用しているわけですから、学んでいる間も賃金が発生します。その賃金もサポートしてくれるということで、これは、活用しない手はないでしょう!
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足立 - というか、活用しないともったいないという気がします。具体的には、どういう取組をした場合にサポートしてもらえるのか知りたいです。
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青木 - では、「事業展開など」のケースから、和田山さん、お願いします!
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和田山 - はい。助成の対象となる「事業展開など」とは、これまで行ってきた事業にとらわれず、新たな製品を製造したり、新たな商品やサービスを提供することなどにより、新分野に進出することを指します。また、事業や業種の転換や、既存事業の中で製品の製造方法、商品やサービスの提供方法を変更する場合も「事業展開など」に当たります。
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青木 - 例えば、医療系システムの開発を行っていた事業主が、「農業支援システム」の開発を行う。飲食店で外食の事業を行っているが、テイクアウト及びお弁当の製造販売を新たに開始する、などです。こうした展開をする場合、新しいことへの挑戦ですから、従業員を学校で学ばせたり、専門家を招いて講習を受けさせたりする必要がありますよね。
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足立 - これまで、医療系システムのエンジニアとして働いていた方を、農業関係の学校に通わせる、ということですか?
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青木 - そんなイメージです。そこで掛かる学費、教科書代、教材費などが助成の対象となります。また、講師を招いて講習会を行う場合、その講師への謝礼金、旅費交通費、そして、講習会場となる施設や設備を借りた場合の費用も対象です。さらに、資格試験や認定試験を受験させた場合の費用も対象になります。
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足立 - 思っていた以上に対象が広いんですね。
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青木 - こんな場合も、「事業展開など」に含まれます。カーナビ画面のフィルム製造をしている企業が、新しくゲーム機専用のフィルムを開発する場合です。
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足立 - 同じフィルム製造なのに、対象になるんですか?
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青木 - これまでゲーム機のフィルムを製造していなかったのであれば、「事業展開など」に当たり、その専門知識や技術を得るための訓練に掛かる費用は助成の対象となります。
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足立 - 聞けば聞くほど、企業の人材育成に優しい制度ということが分かりました。これから新しく事業展開などをしていく事業主の方にとっては、お得な情報ですね。
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青木 - そうなんです。ただ、足立さん、この支援コース、必ずしも、新たな事業展開などをする場合だけが対象となるわけではないんです。忘れていませんか?この支援コースは「事業展開など」のほか、「デジタル・DX化」、そして「グリーン・カーボンニュートラル化」、この2つの展開に取り組む事業主も対象となって、その人材育成に掛かる訓練経費や、訓練期間中の賃金の一部を助成されるんですよね?
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和田山 - はい。まず、「デジタル・DX化」とは、デジタル技術を活用して 業務の効率化を図ることや、製品やサービス、ビジネスモデルを変革させることです。企業がDX化を進める場合に、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識や技能を習得させるための訓練の実施など費用が対象となります。
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青木 - これに関しては、様々な業種であると思います。例えば、建設現場における3次元設計などのICT技術の習得。ITツールを活用したWEB集客のノウハウの習得など、企業のDX化に関する人材育成であれば助成の対象となります。つまり、この支援制度では、例えば、経理担当の従業員に簿記を学ばせるために学校に通わせても、その費用の助成はないけれど、経理処理のシステム化、または、経理システム導入のために、従業員に知識を学ばせるのに掛かった費用はデジタル化に関する訓練なので助成の対象となるんです。
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足立 - なるほど。幅が広がりますね。では「グリーン・カーボンニュートラル化」というのは、どういうことなんですか?
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和田山 - 「グリーン・カーボンニュートラル化」とは徹底した省エネ、再生可能エネルギーの活用などにより、CO2などの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることです。これに関連する業務に従事させるための人材育成に掛かる費用が対象になります。
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青木 - 例えば、農薬の散布にトラクターを使用していたが、ドローンを導入することによるCO2削減を実施。風力発電機や太陽光パネルなどの環境に配慮した電力供給システムを導入などです。このような場合、ドローンの操縦などは、一から学ばなければなりませんし、新しいシステムを導入したら、その専門知識を学ばなければなりませんから、そうした訓練費用も対象となります。
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和田山 - 今は、「デジタル・DX化」も、「グリーン・カーボンニュートラル化」も多くの企業に求められていることですから、そのために必要な人材育成は国がしっかりとサポートします。
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足立 - 話を聞いていたら、初めは中小企業の事業主の方にとってうれしい制度だなって思いましたけど、従業員にとっても、これからの時代に必要な新しい知識や技術を身に付けることができるわけですから、積極的にチャレンジしてほしいと思いました。
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青木 - そうですよね。技術はどんどん進化していますし、自分自身も進化や変化に対応していくということはとても大事ですよね。それに、新しいことを学び仕事に生かすというのは、働きがいにもつながります。だから、事業主の方々は積極的にこの制度を活用して、従業員の人材育成に力を入れてほしいですね。
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和田山 - はい。リスキリングした人材が力を発揮することで企業価値が向上します。人材育成に取り組む際は、人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」を是非、活用してください!
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足立 - 初めは、中小企業の事業主の方にとっての制度なのかなと思っていたら、改めて最後まで聞くと、これは従業員にとっても、これからの時代に必要な新しい知識や技術を身に付けることができるんだなということが分かりました。私たちにも深く関わってくる制度なんですね。
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青木 - 私が印象に残ったのは、足立さんが今、お話したことに伴って「リスキリング」した人材が力を発揮すると、企業価値が向上するということです。企業にとって、従業員のスキルが向上するのは良いことですから、それをサポートする制度があるということですね。
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