力を合わせて実現しよう! 30by30 (サーティバイサーティ)
生き物たちの豊かな個性とつながりを意味する「生物多様性」。私たち人間も、生物多様性により様々な恩恵を受けています。しかし、近年、地球温暖化や森林伐採などの影響により、生物多様性の損失が心配されています。番組では、生物多様性を守るために2030年までに陸と海の30%以上を保全する目標「30by30」を深掘り!目標達成へ向けた具体的な取組や、個人からも参加できる新しい仕組みをご紹介。

- ゲスト
- 環境省
自然環境局 自然環境計画 生物多様性主流化室 室長補佐
渡邉 加奈
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和5年(2023年)1月1日
- 時間
- 17分21秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)12月31日
文字で読む
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青木
足立 - 明けましておめでとうございます!
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青木 - 今年は卯年ですから、この番組も私たちも脚力を生かして大いに飛躍していきたいと思っています。足立さんの今年の抱負は?
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足立 - 30歳になったことですし、楽しく過ごして、現状維持できるように、頑張るということが今年の目標です。
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青木 - 今日、元日にお届けするテーマも、日本が掲げている抱負です!「力を合わせて実現しよう! 30by30(サーティバイサーティ)」
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足立 - 「30by30」って、何ですか?
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青木 - 数字の30と30の間に、英語の小文字で“b”と“y”の“by”で「30by30」です。初耳という方がいると思いますが、この言葉は、生物多様性という言葉が広まったように、2023年には、多くの人が知ることになる言葉だと、私、確信しております!
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足立 - 生物多様性って、新しい言葉なんですか?
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青木 - はい、「生物多様性biodiversity(バイオダイバーシティ)」という言葉は、1980年代後半から使われるようになったと言われているんです。 改めて「生物多様性」とは何かを説明しておくと、生き物たちの豊かな個性とつながりのことです。地球上の生き物は、40億年という長い歴史の中で、様々な環境に適応して進化し、種を増やしてきました。これらの生命は、一つ一つに個性があり、全てが、直接、間接的に支え合って生きています。そして、私たち人間は、こうした生物多様性により様々な恩恵を受けています。
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足立 - この番組でも、これまでに、話題に上がりましたよね。海の生態系が守られるからいろんな種類のお魚が食べられたり、豊かな森があるから木材や紙が手に入るし、森の浄水機能のお陰でおいしい水が飲めたりするんですよね。
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青木 - 生活の中で使われている技術も、自然界からヒントを得たものがたくさんあるんです。例えば、ある生き物の形状を模倣して、痛くない注射針が開発されたのですが、これは、何の生き物からヒントを得ていると思いますか?
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足立 - 痛くない注射針?
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青木 - 痒いけど痛くない、生き物いますよね。
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足立 - 蚊ですね!
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青木 - そうなんです。答えは、蚊だそうです。蚊の口の先端部は、顕微鏡で見るとギザギザした構造になっていて、この構造で人の痛みを最小限に抑えることができているそうなんです。
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足立 - すごいなぁ。普段、何気なく使っている物の中にも、自然界からヒントを得た物って、たくさんあるんですね!
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青木 - そうなんです。さらに、医療の分野でも生物多様性の恩恵を受けているんです。例えば、抗生物質として有名なペニシリンも、パンなどに生えるアオカビ、つまり、細菌から作られていますし、その他にも、植物の成分を活用した医薬品が多く存在しています。つまり、私たちが健康を維持できるのも、生物多様性のお陰とも言えるんです。ところが、近年、地球温暖化や森林の過剰な伐採などにより、こうした生物多様性の損失が心配されているんです。
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足立 - 確かに、地球温暖化の影響で、北極の氷が溶けて、ホッキョクグマが大変って聞きますよね。
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青木 - そうですよね、住む場所が減って、痩せこけたホッキョクグマの映像とかも目にする機会がありますよね。もちろん、ホッキョクグマだけでなく、他の生き物や、私たち人間にも多くの影響があると考えられています。そこで、「30by30」なんです!ここからは、スペシャリストと一緒に深掘りしていきましょう!環境省 自然環境局 自然環境計画課 生物多様性主流化室 室長補佐渡邉加奈さんです。
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足立 - 渡邉さん、「30by30」って、一体何ですか?
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渡邉 - はい。「30by30」とは、2030年までに陸と海の30パーセント以上を保全しようとする目標のことです。2021年6月に開催されたG7サミットで、G7各国は自国で30by30目標に取り組むことを約束しました。
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青木 - 「30by30」の30は、2030年までの30と、陸と海の30パーセント以上を保全しようという30なんですよね。
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足立 - この、保全するというのは、具体的にどういうことなんですか?
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青木 - その辺りを説明してもらう前に、足立さん、今、日本には、国立公園などのように保護地域として保全されている面積がどれくらいあると思いますか?
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足立 - それは以前、国立公園をテーマにしたときに、「日本には国立公園が34か所ある」と教わりましたよね。だから、保護地域として保全されている面積は、全体の30パーセントを目標にしているわけですから、10パーセントくらいでしょうか?
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青木 - 足立さん、今年はとても冴えていますね!渡邉さん、答えは、いかがでしょうか?
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渡邉 - はい。現時点で、陸は20.5パーセント、海は13.3パーセントが保護地域として保全されています。
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足立 - 陸が意外といってますね!
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渡邉 - 実は、2010年に愛知県名古屋市で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)で、2020年までに、陸は17パーセント、海は10パーセントを保存するという「愛知目標」が採択されました。日本は、陸では当時から20パーセント以上が保全されており、既に、愛知目標を達成していたのですが、海は8.3パーセントと目標には足りていませんでした。そこで、沖合の海底の生態系を保護するために、2020年に小笠原方面を新たな保全地域に指定し、愛知目標を達成したんです。
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足立 - やると決めたら確実にやるのが、日本て感じしますよね。
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青木 - そうですよね。ただし、この「愛知目標」は10年前の目標であって、生物多様性の損失を止めるには、まだまだ十分ではないんです。そこで、2030年に向けて、新たな目標30by30が掲げられ、今、この目標達成に向けて、取組が進められているところなんです。
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渡邉 - はい。昨年の4月には、目標達成に向けた行程と具体策について、関係省庁が一緒にまとめた「30by30ロードマップ」を公表しました。
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足立 - こうやって聞くと、愛知目標は達成したんですから、次も達成したいですよね。でも、目標値まで、陸であと10パーセントほど、海は17パーセントほど、保全地域を拡大していかなければならないわけですよね。どうやって達成するんだろうと思いますよね。
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青木 - 結構、数字の開きがありますもんね。
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足立 - 渡邉さん、具体的にはどうやって目標を達成していこうとしているんですか?
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渡邉 - まず、新たに国立公園などの保護地域を拡張し、管理の質も向上させます。そして、それだけでなく「OECM(オーイーシーエム)」で目標を達成していきます!
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足立 - OECM? 初耳ワードです。
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青木 - 渡邉さん、ご説明をお願いします。
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渡邉 - はい。OECMとは、Other Effective area-based Conservation Measuresの略で、保護地域「以外」で生物多様性の保全に貢献する地域、ということです。日本では、まず民間の所有地を「自然共生サイト」に認定し、認定した区域のうち、保護地域と重複していない区域をOECMとして、国際的なデータベースに登録していきます。
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青木 - つまり、民間の所有地がOECMに登録されるには、まずは「自然共生サイト」に認定される必要があるということですよね。
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足立 - そうなんですね。でも、よくイメージできないのですが、そもそも「OECM」とは具体的にどういう場所のことを言うんですか?
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渡邉 - 日本では、例えば、企業の管理する水源の森や、田んぼといった里地里山、都市の緑地、研究や環境教育のための森林、河川敷など、こうした場所で生物多様性の保全が図られている地域などがOECMになりうると想定されます。
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青木 - 企業などによる生物多様性の保全の取組の一例を紹介いたしますと、ある企業では、社有林に、絶滅危惧種であるヤイロチョウという渡り鳥のつがいが複数生息していることが判明したことから、ヤイロチョウが生息できる環境を保全するため、独自に環境保全林として位置付け、森林が持つ生物多様性を十分認識した森林保全を行っているそうです。
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足立 - 社有林を企業が主体的に保全することで、絶滅危惧種を守ることにつながっているんですね。では、そのOECMで、どうやって30by30の目標を達成するんですか?
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渡邉 - はい。環境省では、生物多様性の保全に貢献する場所を、OECMに登録する仕組みを作り、OECMを30by30の保全地域の中に組み込んで、目標達成を目指していこうとしているんです。まずは「自然共生サイト」の認定を2023年度、今年の4月からスタートする予定です。
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足立 - つまり、豊かな自然が保全されているのに、これまでは保全面積の達成率に含めることができなかった地域を、新しい仕組みを作ることでカウントできるようにするということですね。
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渡邉 - はい。そういうことです。2023年4月のスタートに向け、現在は、30by30アライアンスの協力を得て、「自然共生サイト」認定の試行や、課題解決のための調査を行なっています。
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足立 - また、新しいワードが出てきました!30by30アライアンス?これは、何ですか?
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渡邉 - はい。環境省では、「生物多様性のための30by30アライアンス」を2022年4月に発足させました。これは、自らの所有地や所管地内のOECM登録や保護地域の拡大を目指す、あるいは、そうした取組を応援するなど、30by30の実現に向けた行動を取る仲間たちの集まりです。産業界や研究機関、社団法人など、各分野にネットワークを有する21団体がコアメンバーとなっています。
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青木 - 簡潔に言うと、30by30目標を通じて世の中を変えることを目指す仲間、応援団ということです。既に、企業や自治体、NPOなど合計300者以上が参加しているんですよね。個人の方も参加しているそうですね!
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渡邉 - はい。現在もこのアライアンスに参加する方々をホームページで募集していますので、是非、環境保全に意欲のある方は参加していただきたいです。
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足立 - 個人も参加できるんですね。参加資格などあるんですか?
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渡邉 - 所有地などをOECMにすることを目指す方だけでなく、こうした生物多様性の保全を行なっている方々を支援する意思のある方なら、どなたでも参加できます。参加方法は、「30by30」のホームページからご覧ください。このアライアンスのロゴマーク、里山の生き物を代表する、カエルをモチーフにしています。
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青木 - 生物多様性の損失を防ぐためには、生物多様性の保全を国に任せるだけでなく、企業、団体、NPO、そして、私たち一人一人が積極的に関わっていくことが求められているんですね。
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足立 - 私たちが、日々の生活の中でも、生物多様性の保全のためにできることもいろいろありますよね。例えば、自然環境を壊さないように、プラスチックゴミの捨て方に気を配るとか。
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青木 - そうですね。日々の暮らしの中で、私たちにできる行動があると思いますし、一人一人の積み重ねでも、大きなものになりますからね。
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渡邉 - 昨年12月に、カナダのモントリオールで、生物多様性条約COP15が開催されました。今年は生物多様性を考える上で、非常に重要なタイミングであり、ますます生物多様性に注目が集まる一年になると確信しています。そして、世界・国内ともにキーワードになるのが、今日、紹介した30by30なんです。2030年までに、陸と海の30パーセント以上を保全する30by30目標を達成するには、地域、企業、そして一人一人の力を結集して、オールジャパンで取り組む必要があります。まずは、皆さんに生物多様性の大切さについて理解いただき、そして、関心のある方には是非、30by30アライアンスにもご参加いただければと思います。
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足立 - 今日の話は、いろんなことを知ることができた回だったなと思いました。その中でも、私は「30by30アライアンス」。30by30目標を通じて、世の中を変えていくことを目指す仲間、応援団があって、既に、企業や自治体、NPOの方々が参加していますが、個人でも参加できるというのは驚きました。企業の方々が参加しているイメージがあったんですが、私たち個人もできることがあるんだ!ということを知ることができたので、今日の放送を聴いて、興味がある方は、参加してほしいなと思いました。
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青木 - 私が印象に残ったのは、「OECM(オーイーシーエム)」。保護地域「以外」で生物多様性の保全に貢献する地域が印象に残りました。保護地域ももちろん大事なんですが、それ以外の部分も大事なんだということを改めて知ることができました。
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