今こそウッド・チェンジ! 木のある暮らし
日々の癒やしだけでなく、森林のサイクル守るためにも、身近な素材である「木」を暮らしに取り入れてみませんか? 今回は、「今こそウッド・チェンジ! 木のある暮らし」というテーマで深掘りしました。

- ゲスト
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林野庁
木材利用課長
小島 裕章
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和4年(2022年)10月16日
- 時間
- 17分20秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)10月15日
文字で読む
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青木 - 足立さんに早速問題です! 日本は国土のおよそ7割が森林であり、世界でもトップクラスの森林国です。では、国土面積に占める森林面積の割合、これを森林率といいますが、この森林率はOECD(経済協力開発機構)の加盟国の38か国中、何位くらいだと思いますか?
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足立 - 15位くらいでしょうか?
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青木 - なんと、第3位なんです! 1位フィンランド、2位スウェーデン、そして3位が日本です! 日本は北欧の国々に次ぐ世界有数の森林国なんです。
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足立 - フィンランドやスウェーデンには、自然のイメージがありますが、日本は、その次に入ってくるんですね。そう聞くと誇らしいことですね。
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青木 - 実際に様々な取組により、国産材の供給量は12年連続で増加していて、2020年には、自給率がおよそ半世紀ぶりに40%台に回復しました。でも、1955年の自給率は96%ほどでしたので、まだまだ回復の伸び代があるんです。しかも、今、日本の人工林は切り時を迎えているそうです。
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足立 - 切り時? 木を切るのにも旬があるんですか?
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青木 - ここからはスペシャリストに伺っていきます。林野庁 木材利用課長の小島裕章さんです。
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足立 - 小島さん、木を切るのにも適したタイミングがあるのは本当ですか?
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小島 - はい。人が植えて育てた木は、一般に50年を超えると「主伐期」といって、森林の更新のために伐採が必要な時期を迎えます。日本は戦後間もなく、荒廃が進んだ山に積極的に植栽を行ったので、今、正に50年を超えた人工林が収穫の時を迎えているんです。
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青木 - その量は、なんと日本の人工林面積のおよそ半分だそうです!
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小島 - はい。そのため、より森林資源の利用が求められており、政府でも積極的に取組を行っています。
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足立 - 素朴な疑問なんですけど、お米や野菜などの収穫と違って木は収穫できるようになったからといって、必ず切らないといけないものじゃないですよね?
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小島 - そのように思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、人工林を良い森林として維持するためには「伐って」「使って」「植えて」「育てる」という森林のサイクルが守られる必要があるんです。
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青木 - 足立さんも、森林には様々な機能があることはご存知ですよね。
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足立 - はい。木が土の中でしっかりと根を張ってくれるので、大雨のときなど、土砂が流れ出したり、崩れたりするのを防いでくれるんですよね。
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青木 - そうですね。また、「緑のダム」としての働きもあります。森林に降った雨や雪は、森の土の隙間の中にゆっくりと浸み込んでいき、地下水となり流れ出ます。このように水を貯めてゆっくり流すダムのような働きによって、川の水の量の変化を小さくし、洪水や渇水が緩和されています。さらに、森の土に浸み込んだ水は地層の隙間や岩の割れ目を通るうちにろ過され、そこに適度なミネラルも溶け出して含まれるので、おいしい水にもなります。つまり森林の土は浄水器の機能も果たしているんです。
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足立 - 森林は役割がたくさんあって優秀ですね。
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青木 - それだけではありません! 森林は光合成により、大気中の二酸化炭素を吸収して炭素を貯え、酸素を排出しています。こうした森林の多面的な機能が適切に発揮されるためには、「伐って」「使って」「植えて」「育てる」という森林のサイクルを維持し、良い森林が保たれることが大切なんです。また、十分に成長した人工林が伐採されないと、新しい木を植えられず、木材の販売による収益もないので、他の森林の手入れもできなくなってしまいます。そして、行く行くは老木や手入れ不足な森林ばかりになってしまい、土砂が流れるのを防ぐなどの森林機能の発揮ができない上、必要なときに良い木を調達することも難しくなります。
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足立 - 今、植えても伐採をする時期になるまでは50年も先ですから、将来を考えると定期的に植えて、手入れをしていく必要があるんですね。
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青木 - しかも、衝撃的な事実があるんです。森林は高齢化するとCO2の吸収量が減少します。つまり、50年生の木より20年から30年生の若い木の方がCO2の吸収量が大きいんです。木も人間と同じように、成長期の方が活動が盛んなので若い森林のほうがCO2を吸収してくれるそうですよ!
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足立 - 樹齢によって、CO2の吸収量が違うなんて、知らない人が多いんじゃないですか?
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小島 - 日本は2050年までに、二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの排出を全体として、ゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。その実現のためにも、高齢化した人工林を伐採し、成長著しい若い森林を確実に造成していくことが重要です。
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青木 - また、人工林を若返りさせることはSDGsの目標である「気候変動に具体的な対策を」などに貢献することにもつながりますよね。
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足立 - では、人工林を若返えらせるためにはどうしたらいいんですか?
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青木 - 答えは簡単! 私たちがウッド・チェンジすればいいんですよ!
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足立 - 小島さん【ウッド・チェンジ】って何ですか?
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小島 - 【ウッド・チェンジ】とは、身の回りの物を木に変える、木を暮らしに取り入れる、建築物を木造・木質化するなど、木の利用を通じて持続可能な社会へチェンジする行動を指します。
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足立 - あの、森林が防災などに役立っていることは十分に分かっていますけど、それを守るために、すぐ身の回りの物を木に変えられるかというとなかなか、できないかなと思うのですが。
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小島 - そうですね。ただ、木には優れた性質がありますので、目的に応じて活用してみてほしいんです。例えば、木には心地よい香りがありますよね。スギの木の香りは、血圧が下がるなどのリラックス効果が科学的に確認されているので、インテリアなどに利用するのもお薦めです。
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青木 - 他にも、木材は湿度に応じて湿気を吸収したり放出する調湿能力や、断熱性能、衝撃吸収力も他の素材と比べて高いそうなのでこうした特徴に応じて使い分けてみてもいいんじゃないでしょうか。
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小島 - 実は、近年、建築物における木材利用の促進に関する法律が改正されたことやSDGsへの配慮などから、建築物に木材が利用される動きが目立つようになりました。新しい技術もどんどん生まれ、中高層建築物での木材利用の動きが活発化しています。
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青木 - 日本国内において、大学のキャンパス、企業のビルなどで木材を利用した中高層の建築物が続々と誕生しているんですよね。
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小島 - はい。鉄筋コンクリ―トや鉄骨と木材のハイブリッド建築による中高層の木造建築物が建設されています。すでに14階建てのビルもあります。2028年度には、都心に地上約100m、20階建ての木造建築物が誕生する予定ですし、 将来的には、70階建ての木造超高層建築物も登場するという話もあります。
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青木 - 最近、全国規模のチェーン店が新規店舗の内装や外装に木材を利用しているケースも、ちらほら見かけますし、足立さんも家を建てるときには、木材利用を考えてみてください。
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足立 - 急に家を建てる話が出てきましたが(笑) もっと身近なことでウッド・チェンジできませんか?
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小島 - 木製というと、素朴な印象の製品を思い浮かべる方もいると思いますが、最近は「ウッドデザイン賞」という、木の良さや価値を再発見できる製品や取組について、特に優れたものを消費者目線で評価し、表彰する顕彰制度があります。「ウッドデザイン賞」を受賞したものには、スタイリッシュで、機能性も高い製品が色々あるんですよ。
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青木 - 今、ここにいくつかお持ちいただいたんですけども。
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足立 - ん? この曲はなんですか?
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青木 - 今、流れている曲は、農林水産省一推しの『ウッドチェンジ・ソング』です! 職員の方が作った曲なんだそうですよ。せっかくですからこの曲をBGMにスタイリッシュな木材製品をご紹介していきましょう! まず、『木のヘッドフォン』があります。ボディ全体に岩手県産のブナを使用。音の減衰や反射などの音質的なメリットがあり、デザインが美しいのが特徴です。デザインだけでなく、音にもこだわっているのがいいですよね。
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足立 - 木のヘッドフォン。どんな風に音が聴こえるのか、試してみたいですね。
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青木 - 見た目がとってもオシャレですよね。さらに、『木製の冷凍ご飯容器』 ヒノキで出来た枡型のおひつで、ご飯を入れて冷凍し、電子レンジで温めると炊きたてのようによみがえる。これは、先ほどもお伝えしたように、木の調湿機能によって蒸すように温められるそうです。また、こうした木材製品を利用することだけではなく、間伐材を利用した紙製品を使うこともウッド・チェンジですよね、小島さん。
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小島 - はい。間伐された木の一部は加工されて紙製品に生まれ変わっています。封筒や紙コップ、紙皿などを購入するときには、間伐材マークがあるものを選ぶなど意識していただければと思います。また、近年は間伐材等の国産材を利用した「森を育む紙製飲料容器」通称『カートカン』も徐々に普及しています。こちらなんですけども。
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青木 - 今、私たちの手元に通称「カートカン」があります。
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足立 - 小さい缶コーヒーと同じサイズ感ですね。
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青木 - 原料は紙なんですよね?
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小島 - はい。カートカンは、容器の紙の原料に、間伐材を含む国産の木材を30%以上使用しています。カートカン飲料を買うと、間伐材などの国産材の利用を推進することになり、国内の森林の整備や、山の資源の循環利用につながります。
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青木 - このカートカンを使うことによって、国内の森林の整備や山資源の循環につながるのなら、いいですよね。
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足立 - しかも、カートカン飲料を買って飲むだけで、「伐って」「使って」「植えて」「育てる」森林のサイクルを維持することに私たち消費者が積極的に関わることにつながるというのがいいですね。
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青木 - そして、是非皆さんには「間伐材マーク」も覚えていただきたいです。スコップを掲げているようなマークで、今後も気にしていただければと。そして、実は10月は「木材利用促進月間」なんです。10月は是非、ウッド・チェンジを気に掛けてみてほしいです。
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小島 - はい。森林が様々な機能を発揮し、私たちが森林資源を持続的に利用していくために大切なのは「伐って」「使って」「植えて」「育てる」森のサイクルです。10月の「木材利用促進月間」に、皆さんも木や森について考えていただければと思います。意識を変えることで環境を良くしていきましょう。是非、皆さんの暮らしに木を取り入れてみてください。レッツ・ウッド・チェンジ!
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足立 - 今日の話を聞いて、木は、古き良きものというイメージがあるかもしれないんですが、そうではなく、木はとても機能性があるし、見た目もオシャレだなと、今回、知ることができたので、私も少しずつ、ウッド・チェンジしてみようかと思いました。
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青木 - 私が印象に残ったのは、森林は高齢化するとCO2の吸収量が減少することです。地球環境のためにも、植栽から50年以上たって切り時になった木は、どんどん切っていくことが良いんだということです。
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