命を守るために 家具類の転倒防止対策
今、あなたがいる部屋で、大地震が起きた場合、その部屋は安全ですか?いつ起きるか分からない大地震だからこそ、日頃の備えが大切に。今回は、「命を守るために 家具類の転倒防止対策」というテーマで深掘りしました。

- ゲスト
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内閣府
政策統括官(防災担当)付企画官(普及啓発・連携担当)
前川 絋一郎
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和4年(2022年)9月4日
- 時間
- 18分29秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)9月3日
文字で読む
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青木 - 足立さんは、家具類の転倒防止対策、していますか?
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足立 - 引っ越した際、業者の方が大きな棚の下に転倒防止としてストッパーを付けてくれました。
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青木 - 内閣府が2017年に行った調査によりますと、大地震に備えて家具類を固定し、転倒・落下・移動を防止している人の割合は41パーセントほどです。家具類の転倒防止は、食料や水の備蓄と共に基本的な防災対策ですが、その実施率は半数に満たない状況です。実はこの状況が続くことは、とても深刻な問題なんです。なぜなら、阪神・淡路大震災や新潟県中越沖地震では多くの方が倒れてきた家具類の下敷きになって尊い命を失ったり、大ケガをしました。また、近年発生した地震でケガをした人のおよそ30パーセントから50パーセントの方が家具類の転倒・落下・移動によるものだからです。
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足立 - 食料や水の備蓄も重要なことですが、それらが必要になるのは、災害発生時に命を守った後のことですよね。まずは、命を守るため、そしてケガをしないためにも防災対策として、家具類の転倒防止対策はとても重要ということですね。
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青木 - そうですね。ここからはスペシャリストと共に深掘りしてまいります。内閣府 政策統括官 防災担当の前川 絋一郎さんです。
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足立 - 前川さん、家具類の転倒防止対策はとても大切なことなのに、どうして、できていない人が多いんでしょうか?
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前川 - 実は、その理由も調査しているんですが、「やろうと思っているが先延ばしにしてまっている」とか、「面倒」、「自分ではできないと思う」などの理由が挙がっています。こうした理由が挙がるのは、「自分は大きな災害に遭うことはない」と漠然と考えているからではないかと思います。でも、近年は思いも寄らないところで多くの災害が発生しています。誰もが災害に遭う可能性があるので、危機感を持って防災対策をすることが大切です。
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青木 - そこで内閣府では、多く方に防災を自分のこととして考え、備えてもらえるように【一日前プロジェクト】という取組を行っているんですよね。
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前川 - はい。【一日前プロジェクト】とは「災害の一日前に戻れるとしたら、あなたは何をしますか」と、地震や水害などの被害に遭われた方々に伺いまして、その体験談を多くの方と共有し、災害に備える行動につなげていくことを目的とする取組です。
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青木 - 内閣府のホームページでは、ヒヤリングした体験を公開しており、災害の種類や地域、場面ごとに検索できるようになっています。実際にエピソードを見てみると、災害に遭ったときの様子や困りごとが体験談として具体的に書かれているので、「自分だったら」と置き換えて考えやすいんです。本日は、【家具類の転倒防止】に関する体験談をピックアップしてご紹介します。20代男性、2007年に発生した新潟県中越沖地震の体験談です。この地震の発生時刻は午前10時13分でした。『前の日の夜が仕事で遅くて、その時間までまだ寝ていたんです。最初軽く揺れ出して、「あ、また地震だな。まぁ、いつものことだから」と思って、そんなに慌てもしなかったんですけど、すぐにクレーン車か何かが突っ込んで来たんじゃないかと思うほどの揺れになりました。で、あわててパジャマのまま、2階の部屋の窓から1階の屋根の上に飛び出たんです。
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青木 - 「上から2階の屋根のかわらが落ちてきたりして、かえって危ないよ」とあとで人に言われたんですけど、その時は夢中でした。私が寝ていた場所というのは、頭のほうにテレビが置いてあって、足元には冷蔵庫が置いてありました。やっと揺れがおさまって、振り返って自分の部屋の中を見たら、テレビと冷蔵庫が自分の寝ていた場所にドン、ドンと転がっていたのです。それを見て、「逃げてよかったな」と思うと同時に、「そんなところで寝ていちゃいけないな」と思いました。』…ということですが、この体験談もリアルですし、いろいろと考えさせられますね。
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足立 - まず、気になったのは、そもそも、外に飛び出す行為は危険ですよね。
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前川 - そうですね。この方の場合、たまたまケガをするようなことがなかった訳ですが、地震のときは上から何が落ちてくるかわかりませんし、また、車両も通行しているかもしれないので、慌てて外に飛び出してはいけません。揺れを感じたら慌てず、頭を保護し、落下物にも気を付けながら大きな家具類から離れ、丈夫な机の下などに隠れてください。その後、揺れが収まって避難することもあると思います。その地震が深夜に起こった場合は、玄関に行くまでに散乱している物が見えない可能性があります。その際にケガをしないよう、枕元に、履くものを準備しておくことも重要ですね。理想は踏抜防止の中敷きを敷いたスニーカーなどですが、まずは手軽に用意できるスリッパなどを準備してみてはいかがでしょうか。
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足立 - 確かに、家の中にスニーカーはちょっと、、、と思う方もいるかもしれませんが、避難する際、歩けなくなる危険性もあるので、靴は重要ですね。また、大きな家具類から離れ、丈夫な机の下などに隠れるという話がありましたが、一人暮らしなどでワンルームに住んでいると、隠れられるような机などがない場合もありますよね。それに、寝る場所の周りに冷蔵庫やテレビが置いてあっても仕方ないのかなと思う部分もありますよね。
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青木 - 若い方を中心に、そういう環境に住んでいる方もたくさんいらっしゃると思います。だからこそ、家具類の転倒防止対策が大切なんです。ここからは具体的に家具類の転倒防止対策を伺ってまいります。
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足立 - 家具類の転倒防止といえば、一般的なのはL字型の金具で壁に穴を開けて固定する方法ですよね。賃貸住宅などで、壁に穴を開けたくない場合は突っ張り棒のようなポール式の器具を使って固定したりもしますよね。
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前川 - はい、「大地震では家具は必ず倒れるもの」と考えて、日頃から家具類の固定や配置の見直しをして【安全空間】を作ることが大切です。例えば、寝室や子どもの部屋など、家族やお子さんが長時間を過ごす部屋にはできるだけ家具類を置かないようにしたり、背の低い家具類だけを置くように工夫できればいいですね。
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足立 - それが理想ですけど、現実的に難しい方も多いと思います。対策する上でポイントはありますか?
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前川 - はい。お勧めなのは、複数の対策を講じて効果を高めることです!
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青木 - 例えば、背の高いタンスの場合、ポール式の器具を家具類と天井の間に立てて固定します。その際、器具はタンスの奥の方、そして、天井や家具類の固い所に取り付けて下さい。それに加えて、タンスと床の間にもストッパー式の器具を差し込み、タンスが移動しにくいように固定します。タンスが上下に分かれるタイプならば、連結金具でそれぞれがズレないようにタンス同士を固定します。
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足立 - 確かに、一つしか対策しないより効果が高まりそうですね。
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前川 - 食器棚の場合も複数の対策が効果的です。特にガラス窓がある食器棚は、中の食器がガラス窓を割って飛び出してくる場合があります。食器やガラスが凶器にならないように万全な対策をお勧めします。
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青木 - 食器棚は、観音扉という中央から左右に広がって開くタイプのガラス窓の扉がありますが、この観音扉が地震の揺れで開いてしまわないようにフック式の留め金をつけたり、ガラス窓にガラス飛散防止フィルムを貼ったり、中の食器が動かないように、棚に滑り止めシートを敷くなど、食器棚にも様々な対応ができますね。
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足立 - 一つの対策で安心しないで、念には念を入れることが大事なんですね。
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前川 - 最近は防災用のアイデアグッズがいろいろあるので、上手に組み合わせて被害を最小限に抑えられるようにしていただきたいと思います。
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青木 - そうですね。主なものには、粘着マットやストラップ式の固定器具、ベルト式の器具があります。テレビや冷蔵庫、電子レンジやオーブンなど、使用するものや場所に合わせて工夫したいですね。
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前川 - また、家具類の転倒防止対策を考えるときは、家具類の配置にも十分な注意が必要です。万が一、家具類が倒れてきたときに、寝ている人や座っている人に家具類が直撃しないように、さらに、出入り口を塞いでしまわないように、家具類の向きや、配置を工夫していただきたいですね。
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青木 - 足立さんの家は、出入り口を塞いでしまうような置き方の家具類はありますか?
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足立 - 一応ないですけど、その棚、家具がどこまで倒れてくるかにもよりますね。
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青木 - 今日は防災対策のうち、家具類の転倒防止について深掘りしてきましたが、ここで、兵庫県51歳の女性、「さちさん」から番組宛てに届いたメールをご紹介します。土砂災害を深掘りしたときの放送を聞いて送ってくださったメールです。『私は阪神大震災を経験したこと、医療関係の仕事をしていたことなどもあり、被害にあった時に手元にあったら良いものなどを準備しているのですが、それに加えて普段からの人とのつながりがとっても大事だと思いました。今はネットで情報を得られる環境がありますが、震災直後は瞬断されてしまうことがほとんどです。その時にご近所さんとの繋がりがあれば、アナログな情報も「3人寄れば文殊の知恵」となり、心の安心が得られるような気がしています。今回をきっかけに、もう一度、身の回りの方々との関わりのこと考えたいなと思いました。』
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足立 - 今のご時世、なかなかご近所付き合いがなくなってきているし、あんまり、ご近所付き合いをしたくないという方もいると思うんです。
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青木 - 中には、プライバシーを守りたかったり、ちょっと面倒だなと思っている人もいると思います。
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足立 - ご近所の方、全員と関わるのは難しいですが、それなりに何人かの方と付き合うのは大切なのかなと思いました。
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前川 - 阪神・淡路大震災のときには、家の下敷きになった人の多くを助けたのは家族や近所の人たちでした。大災害が発生した際には自治体、消防・警察などの対応が追い付かない場合もありますので、普段からご近所付き合いを大切にすることが地域防災力の向上にもつながります。
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青木 - 地域防災力、しっかり高めていきたいですね。
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前川 - 明日、9月5日までは防災週間となっています。今日の放送をきっかけに、まず家の中を見回して危険な場所がないか再確認してください。そして、必要に応じて家具類の転倒防止対策をお願いします!
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足立 - 今日の話を聞いて印象に残ったのは、やはり、大地震が起きた際、「家具は必ず倒れるもの」これを大前提に考えないといけないということが頭の片隅から離れていました。私は家具類の転倒防止対策として、一か所固定していましたが、それでいいのか?とか、もし、それでも倒れてきたらどうなるのか?といったことを考えていなかったので、そういったことを考慮した上で、部屋のレイアウトを改めて考えてみたいと思いました。
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青木 - 今日の話の中に、リアルな経験談もありましたが、これまでも家具類が倒れてきて、ケガをしたり、命を落としている方もいるわけですからね。私が今日の話の中で印象に残ったのは、家具類の転倒防止対策のポイントとして、複数の対策を講じて効果を高めること。やはり、念には念を入れて、一つではなく、複数でしっかりと対策をしたいと思いました。
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