日本のパートナー 成長大陸アフリカ
日本から遠く離れた場所にあるアフリカですが、実は、とても身近で、様々な可能性に溢れているんです。今回は、「日本のパートナー 成長大陸アフリカ」というテーマで深掘りしました。

- ゲスト
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外務省
アフリカ部参事官
宮下 匡之
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和4年(2022年)8月21日
- 時間
- 18分17秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)8月20日
文字で読む
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青木 - 足立さんは、アフリカへ行ったことはありますか?
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足立 - アフリカはないですね。
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青木 - アフリカというと、十分な医療や教育が受けられない貧しい国が多いとか、多くの紛争があり住む場所を追われた避難民や難民がいるなど、ニュースになるような出来事を思い浮かべる方も少なくないと思います。実際、アフリカ大陸は日本からおよそ1万キロメートル以上離れて位置しているので遠い地域ですし、貧困で苦しんでいたり、情勢が不安定な国や地域があることは事実です。でも、アフリカ大陸は54か国を有する大きな大陸です。面積も日本のおよそ80倍、アメリカと比べても3倍も大きい大陸です。私たちが抱いているのは、その大きな大陸の中の一面であって、思っているのとは違う一面があるんです。
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足立 - 例えば、どんな面があるんですか?
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青木 - まず、アフリカは日本にとって遠い国ではありません!とっても身近な国なんです。例えば、海産物のタコ。日本が輸入しているタコの多くはモーリタニア又はモロッコ産。足立さんが好きなおふくろの味“タコトマト”、そのタコもアフリカ産の可能性があるんです!
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足立 - 意外とアフリカ産の物を口にしているということですね。
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青木 - また、チョコレートの原料となるカカオ豆の80パーセント程はガーナからの輸入です。携帯電話やスマートフォン、LED照明、自動車の排気ガス浄化装置など、日本の主要産業に不可欠な素材であるレアメタルの中でも、プラチナ、マンガン、バナジウムなどをアフリカから多く輸入しています。
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足立 - 私たちの暮らしに欠かせないものをアフリカの国々に提供してもらっているんですね。遠いアフリカがぐっと身近になってきました!
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青木 - 思っていたのと違うアフリカ、この程度ではありません!近年のアフリカ経済はダイナミックに成長しているんです!ここからはスペシャリストに伺ってまいります。外務省アフリカ部参事官の宮下匡之さんです。
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足立 - 宮下さん、アフリカ経済が成長しているということですが、具体的にはどんな状況なんですか?
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宮下 - 21世紀に最も経済成長を実現している地域の一つが実はアフリカです。今日は、知られざるアフリカを御紹介したいと思います。東アフリカのケニアを例に取ると、2017年からナイロビ新幹線と呼ばれる高速鉄道が走っています。また、ケニアの携帯電話保有率は2台持ちもあるので100パーセントを超えているともいわれ、【M-PESA(エムペサ)】という電子マネーサービスも広く活用されています。モバイル決済については日本より進んでいるのではないかと、いわれているくらいです。
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青木 - この電子マネーサービス【M-PESA(エムペサ)】ですが、銀行口座を所有していない人でも携帯電話と身分証明書さえあれば、送金や受取などのモバイル決済ができるものです。ケニアでは2007年からこのサービスが広がっていて、多くの店で支払いの際に利用されています。このシステムで、何と預金やローンも組めるんです。
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足立 - 2007年から、使われているんですね!日本でも携帯電話は広く普及していますけど、モバイル決済が普及し始めめたのは、ここ数年ですよね。日本よりも進んでいますね。でも、なぜケニアではモバイルの普及が早かったんですか?
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宮下 - それは【LEAPFROG(リープフロッグ)現象】が起こったからといえます。【LEAPFROG現象】とは、先進国がたどってきた道を一つずつたどるのではなく、カエルが宙を飛ぶように、現状から一気に世界最先端の技術を利用するという現象です。先進国では新たな技術やアイデアが生まれても、様々な規制があって普及までに時間が掛かる場合があります。でも、アフリカでは、そうした規制がそれほど厳しくないため、便利なものは一気に広がることができます。
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青木 - ということは、宮下さん。アフリカはビジネスを始めやすい国といえますよね。
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宮下 - はい。そもそもアフリカは天然資源の宝庫です。プラチナやダイヤモンドといった貴重な鉱物を始め、産業のビタミンとも呼ばれるレアメタルも産出します。それに加えてアフリカの人口は現在13億人を超えていて、世界全体で約6人に1人がアフリカ人という状況となっています。しかも、アフリカの平均年齢は実に19歳ほどといわれており、働き手も消費者も多い状況です。こうした背景があるので、世界の様々な企業がアフリカに生産拠点を置いたり、また、マーケットとしてのアフリカに注目して経済をダイナミックに成長させています。
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青木 - 日本の人口は減少を続けていて、2050年には1億人を切ると見込まれていますから、アフリカにビジネスの活路を見出すのは当たり前のことといえますね。実際に日本から様々な企業がアフリカへ進出していて、例えば、大手化学・日用品メーカーがウガンダのサトウキビを原料にしてアルコールの手指消毒剤の現地生産・販売を開始。そして、大手食品メーカーは、セネガルで子会社を設立して加工用のトマトの栽培と仕入れ、販売を行っています。さらに、大手化学メーカーがアフリカの独特の文化であるヘアスタイルに注目し、独自の人工毛髪の技術をいかしてエクステやウィッグを販売。大きな収益を上げているそうです。
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足立 - 既にアフリカで事業を進めている日本の大企業があるんですね。
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青木 - もちろん、日本だけではなく中国や欧米の企業も進出しています。
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足立 - そう考えると、やはり、大きな企業だったら遠いアフリカでもビジネスが可能なんだろうと考えてしまいますが。
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青木 - 足立さん。アフリカに進出しているのは大手企業ばかりではありません。革新的なアイデアを新しいビジネスにして市場を開拓する企業のことをスタートアップ企業といいますが、アフリカにはアフリカ社会の課題解決に役立つビジネスを展開しているスタートアップ企業が少なくないんですよ。そこで、ここからは、スタートアップ企業がアフリカで展開しているビジネスに注目します。宮下さん、どういったビジネスがあるんですか?
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宮下 - アフリカは成長している国や地域がある一方で、いまだに電気や携帯電話の通信網が整備されていない地域があります。そうした未電化・未電波の村落へ、電気と通信を届ける事業が展開されています。例えば、あるスタートアップ企業は、簡易に整備できる太陽光発電設備と、無線LANを搭載した通信装置を組み合わせた独自の電力・通信設備の簡易キットを開発し、西アフリカの村落にキットを普及させることで、夜間の診療所での出産のリスクを軽減するといった事業に取り組んでいます。
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青木 - 未電化の地域向けの電力サービスは他にもありまして、別のスタートアップ企業はタンザニアで現地の小売店を介して、自社が開発した太陽光充電式のLEDランタンを、所得の安定しない一般消費者にレンタルしています。現地で普及する電子マネー送金サービスで利用料金を支払える仕組みで、必要なときだけ手軽に電気を手に入れられるサービスとして急速に成長しています。
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足立 - ここでも、電子マネーが出てきましたね。どちらも太陽光発電ということですから、CO2の排出もなく環境にも優しい事業ですね。そして、何より電気や通信が利用できるようになれば、医療を始め、様々なサービスの向上にもつながりますからいいことだらけですね。他にはどんなビジネスがありますか?
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宮下 - 日本の企業が出資したアメリカのスタートアップ企業ではルワンダやガーナなどで、ドローンを使った血液や医療用品などの配達事業を展開しています。ルワンダは、主要な道路は整備されているものの、地域によっては十分ではなく、車での輸送に大変な時間が掛かる地域も少なくありません。そのため飛行機型のドローンを開発し、独自の物流システムを構築して、最先端の医療サービスを提供しています。
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足立 - 人が運ぶより、ドローンを使えば輸送時間が短縮できることもありますよね。血液など、緊急で必要になる物もあると思うので、すごくいいビジネスだと思いました!
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青木 - このビジネスモデルを活用して、日本でも医療用医薬品をドローンで離島に配送するサービスも始まっているんです。
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宮下 - はい。これはリバースイノベーションともいわれるイノベーションの逆輸入の一例だと考えております。また、日本人とウガンダ人の若者が共同で創業者となり、井戸の料金回収システムを開発し、井戸が継続的に維持管理される仕組みづくりをして、住民がいつでも安全な水を得ることができる環境の実現を目指している企業もあります。
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青木 - リバースイノベーション。アフリカで行ったことがヒントとなり、逆に日本に取り入れられる。
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足立 - いいことは、取り入れていきたいですよね。
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青木 - また、井戸の話でいえば、ウガンダでは政府などによって井戸が設置されても、その後、住民による維持管理の体制がうまく機能せず、井戸のメンテナンスに必要な料金が回収できない課題があったんですよね。
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宮下 - はい。そこで、事前に井戸の使用料金を電子マネーで支払うと、村人に事前に配布されたIDカードに同料金がチャージされ、そのIDカードを井戸に差し込むと、払った分だけ水が出る仕組みを構築しました。それにより、料金に対する不公平感をなくしたり、住民による料金回収に掛かる負担をなくし、継続的な井戸の稼働を目指しているんです。
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足立 - 水道や電気など、私たちにとっては当たり前のインフラ整備がアフリカではまだ十分になされていない地域があるんですから、これから、まだまだ、斬新なアイデアでそうした課題を解決していくビジネスが展開されていきそうですね。
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青木 - 実は、日本はアフリカの開発について世界をリードする立場でもあるんですよね。
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宮下 - はい。今度の週末、8月27日、28日にアフリカのチュニジアで第8回アフリカ開発会議TICAD8(ティカッドエイト)が開催されます。この会議は日本とアフリカが持続可能な世界を共に創るべくアフリカの開発について議論するためにアフリカ各国首脳級などが集まるもので、1993年から日本が主導して行っている国際会議です。新型コロナウイルス感染症がアフリカの経済・社会にも影響を及ぼす中、国際的な連携が重要になっています。日本として、TICAD8を通じてアフリカ自身が主導する発展を引き続き力強く後押しし、ポストコロナを見据えてアフリカ開発の針路を示していく考えです。是非、多くの日本企業、なかでもスタートアップに、アフリカの今を知っていただきアフリカでのビジネスに挑戦していただきたいと思っています。
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青木 - アフリカの課題を解決するビジネスであれば国際貢献、社会貢献の側面もあります。将来性あふれるアフリカに注目してもらいたいですね。
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足立 - 私が想像していたアフリカは、自然豊かで、身近に動物がいて、貧しい国や地域が多いイメージだったのですが、こんなにも発展している国と地域もある!というのを今日の話を聞いて、初めて知ることができました。まだまだ、出来ることや可能性があるので、アフリカはビジネスを始めやすい国なんだと思いました。
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青木 - 今度の週末、8月27日、28日に開催されるアフリカ開発会議TICAD8(ティカッドエイト)。日本が主導して行っている国際会議、これを何としても成功させてアフリカ諸国とも良好な関係をどんどん築いてほしいと思います。良好な関係が築けると、カントリーリスクが減るため、企業の出資や投資がしやすくなりますので、是非、この国際会議が成功してほしいと思っています。
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