進化する学校給食の世界
学校給食は子供たちのお腹を満たすだけでなく、学びにもつながる大切な役割を果たしています。今回は、「進化する学校給食の世界」というテーマで深掘りしました。

- ゲスト
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文部科学省
初等中等教育局 健康教育・食育課長
三木 忠一
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和4年(2022年)6月19日
- 時間
- 18分07秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)6月18日
文字で読む
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青木 - 足立さんは、給食で楽しみだったメニューは?
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足立 - 私は、竹輪の磯辺揚げが大好きで、休みの人がいると1本余るので、いつも、その1本を狙ってジャンケンしていました。
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青木 - 私は、千葉県から愛知県の岡崎市に引っ越したんですが、岡崎市は八丁味噌という赤みそが有名で、給食でも赤みそのお味噌汁が出るんです!
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足立 - 地域ならではの給食話は、面白そうですね。
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青木 - 皆さんも、給食の思い出、楽しみだったメニューなどあると思います。給食の話題は世代を超えて盛り上がりますが、では、足立さんに問題です!日本の学校給食は1889年(明治22年)、山形県鶴岡町、現在の鶴岡市の小学校で始まったと言われています。では、誰が始めたのでしょうか?
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足立 - 親御さんたちからの要請ですか?
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青木 - 答えは…お坊さんです。佐藤霊山さんというお坊さんを中心に、貧しい家庭の子どもたちも学校に通い、勉強ができるようにお寺の中に小学校を作ったんですが、貧しい家庭の子どもたちはお弁当を持ってくることができなかったため、お坊さんたちがお経を唱えて町を歩き、人々からお金や食べ物を分けていただいて、子どもたちにお昼御飯を振る舞ったそうです。その当時、振る舞われていた給食の一例がこちらです。今、写真を見ているんですが、おにぎり2個と塩シャケ、菜の漬物。
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足立 - おなかがすいてきた。
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青木 - 野菜もお肉もあってしっかりした給食ですね。こうして始まった学校給食は、その後、徐々に全国に広がったんですが、太平洋戦争で一時中断され、再開したのは戦後1年経った1946年です。当時は、戦争により国民全体が食糧不足に陥っていたため、子どもたちの栄養失調を救おうと、アメリカの民間団体などから援助物資を受けて再開されました。当時の献立の一例がこちらです。コッペパン、ミルク、いわゆる脱脂粉乳、鯨肉の竜田揚げ、千切りキャベツ、ジャム。
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足立 - ご飯からパンになっていますね。
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青木 - こうした流れの中で、学校給食を大きく飛躍させたのが1954年(昭和29年)に制定された学校給食法です。ここからは、スペシャリストをお迎えしましょう。文部科学省 初等中等教育局 健康教育・食育課長の三木 忠一さんです。
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足立 - 三木さん、学校給食法は、どんなことが定められた法律なんですか?
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三木 - 学校給食法は、学校給食及び学校給食を活用した食に関する指導の実施に関し必要な事項を定めています。 学校給食の普及充実及び学校における食育の推進を図ることを目的とする法律です。
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青木 - この学校給食法が制定されたことで、学校給食の実施率が一気に上がったんですよね。
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三木 - そうなんです。1954年に「学校給食法」が成立して、学校給食実施体制が法的に整いました。1959年(昭和34年)の調査では、小学校での実施率は45パーセントでしたが、15年後には97パーセントになりました。中学校では13パーセントから86パーセントまで上がったんです。
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青木 - ちなみに、現在の学校給食の実施率は小学校でほぼ100パーセント、中学校で90パーセント近くです。
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三木 - その後、2005年には食育を推進する食育基本法が制定、2008年には学校給食法が一部改正され、学校給食における食育の推進、学校給食における指導が、教育の一環として明確に位置付けられました。
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青木 - これに伴い、現在の学校では、各教科などにおいて食に関する指導を行うことで、健康に良い食事や食品の生産、流通、消費などの理解を深めたり、給食を通して、マナーや健康に良い食事のとり方、安全や衛生に気を付けた準備、後片付けを学び習慣化するなど、様々な工夫がされているんです。
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足立 - 学校給食は、貧困家庭の子どもを助けたいという気持ちから始まって、戦後は子どもたちの栄養を補う目的も加わり、今では食を通じて様々なことを学ぶものと、進化しているんですね。
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三木 - はい。学校給食は、栄養バランスの取れた食事の提供により子供たちの健康の保持増進を図るとともに、食に関する指導を効果的に進めるための、正に「生きた教材」として大きな意義を有していると考えております。青木さんの学校給食の思い出の中にも赤みその話が出てきましたが、正に、今、学校給食で地産地消に取り組んでいます。
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青木 - 私が中学生だった20年以上前と比べて、そういった取り組みが増えているということですか?
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三木 - バリエーションもかなり増えていると思います。
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青木 - この「生きた教材」学校給食を管理して、児童生徒へ食に関する指導を中心となって行っているのが、「栄養教諭」です。足立さんは、「栄養教諭」って聞いたことありますか?
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足立 - 聞いたことなかったです。どういうことをされる方なんですか?
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青木 - 栄養教諭は、児童生徒の栄養管理及び指導をつかさどる先生のことで、2005年に創設されました。順次、公立の小中学校に配置されるようになり、令和3年5月現在、全国に6,752人の栄養教諭がいます。
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足立 - 具体的にどんなことをされているんですか?
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青木 - 例えば、献立を作成するのも栄養教諭なんですよね、三木さん!
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三木 - 学校給食は、一日に必要とされる量のおよそ3分の1をとれるように栄養のバランスを考えた献立が作られています。そうした日々の献立の作成や栄養管理なども栄養教諭の役割ですね。
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青木 - 学校給食には食育の役割もありますから、近年は献立にも様々な工夫がされていて、例えば…福井県福井市の小学校では鹿肉カレーが提供されています。これは野生鳥獣による被害の現状と、捕獲したイノシシや鹿を食肉として利活用する意義について学ぶ一環として考えられた献立だそうです。やはり、鳥獣被害の問題がありますが、そこから派生し駆除するだけでなく、それを頂くところまで含めて、食育ですよね。そして、神奈川県愛川町の小学校では東京オリンピック・パラリンピック開催前に、月に一回世界各国の料理が提供されたそうです。初回は、オリンピック発祥の地ギリシャの料理で、「クルーリ」(ごまをまぶした円形のパン)、「ファソラーダ」(インゲン豆のスープ)、「ムサカ」(ナスとひき肉のグラタン)が提供されたとのことです。ただ食べるだけでなく、学びがあるし、会話もきっと生まれるし、ギリシャという国に対する親しみも生まれますよね。
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足立 - 確かに、何でこういう食べ物があるんだろう?と調べていくうちにその国のことも知れますよね。
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青木 - 栄養教諭はこうした学校給食を企画するだけでなく、食に関する指導もします。
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三木 - はい。今お話しいただいたように、学校給食を通していろいろな学びのきっかけにもなりますし、給食だけでなく、様々な教科で食に関して学んでいます。例えば、給食の時間に校内放送などを使った食の指導を行ったり、家庭科や保健体育、社会科などの各教科において、担任の先生などと連携して食に関する指導も行います。
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青木 - 例えば、小学6年生の社会科の授業で小野妹子が持ち帰ったとされている「はし文化の伝来」を扱い、食文化としての「はし」を学習し、併せて、学校給食で和食を取上げ「はし」の使い方を指導することで、社会科の内容についても、マナーについても学ぶ、こうした指導が挙げられます。
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足立 - これは、栄養教諭が社会科の授業をすることもあるということですか?
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三木 - はい。社会科の先生と一緒になって、教えるということなんです。栄養教諭は、教育に関する資質と栄養に関する専門性を生かして、教職員や家庭、地域との連携を図りながら、食に関する指導と学校給食の管理を一体のものとして行うことにより、教育上の高い相乗効果をもたらすことを職務としています。ですから、各教職員とともに授業を行い、教科を横断して食に関する指導を行うんです。
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青木 - いろんなアプローチがあった方が子供たちも理解が深まりますよね。
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足立 - そうなると、栄養教諭になるための道のりが大変そうですが、どういった方が栄養教諭になるんですか?資格とか必要なんですか?
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三木 - はい。資格は必要です。栄養教諭になるためには、いくつか方法がありますが、大学において必要な単位を修得し、栄養教諭普通免許状を取得することが基本です。
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青木 - そして、栄養教諭の役割はこれだけではありません。児童生徒に対する個別の相談指導も行います。
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三木 - 例えば偏食、肥満、食物アレルギーを有するなど、食に関する健康への課題を抱えた児童生徒に個別の指導を行います。特に偏食や食物アレルギーにはきめ細やかな指導が求められるので、保護者からの個別の相談にも対応し、教職員や家庭とも連携します。
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足立 - 保護者の方が栄養教諭に相談してもいいんですか?
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三木 - もちろんです。食に関して相談したいことがある場合は、担任の先生などを通じて声を掛けていただければと思っています。食事は3食ありますから、家族と一緒に考えていきます。
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足立 - 栄養教諭のお仕事は、学校給食の管理、給食や教科での指導、更に個別の指導と本当に多岐に渡っているんですね。
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三木 - そうですね。栄養教諭の配置数は年々増えていますが、一方で配置には地域による差も見られます。文部科学省としましては、引き続き、栄養教諭の配置促進に向けた取組を進めて子どもたちの食育の充実を図っていきたいと思います。子どもたちの健康と豊かな心を育むために、学校給食の充実と学校での食育の取組を進めています。是非、ご家庭でも、給食の話をしたり、一緒に食事をしたり、料理をしたり、季節や地域の料理を味わうなどして、食育を実践してみてください。
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青木 - 確かに。私には小学2年生の息子がいますが、会話の中で、今日の給食なんだった?という話をします。会話のきっかけにもなりますよね。
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足立 - 今日の話を聞いて、やっぱり食育は大事なんだと思ったのですが、その中でも「生きた教材」が特に印象に残りました。その国のことや、マナーや健康などいろんなことを学べる給食って改めて、「生きた教材」なんだと感じました。
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青木 - 私が印象に残ったのは、大切な役割を担う栄養教諭です。学校給食を企画するだけでなく、食に関する指導をする大切な役割で、今後も増えていきそうですね。
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