どうするの? 災害時のトイレ対策
前触れもなく突然やってくる大地震。水や食料などを備えている方も多いと思いますが、トイレはどうでしょう?今回は、「どうするの?災害時のトイレ対策」というテーマで深掘りしました。

- ゲスト
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NPO法人日本トイレ研究所 代表理事
加藤 篤
ストリーミング(音声で聴く)
- 放送日
- 令和4年(2022年)3月27日
- 時間
- 17分31秒
- 配信終了予定日
- 令和5年(2023年)3月26日
文字で読む
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青木 - 足立さんは災害に備えてどんな対策をしていますか?
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足立 - 災害時に持ち出せるカバンに色々入れていたり、多めに水をストックしていたり、非常食も準備しています。
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青木 - では、携帯トイレはどうですか?
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足立 - そこまで、まだきちんと揃えていないです。
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青木 - では、大地震で下水道が使えなくなった時の事を考えたことはありますか?そもそも、下水道の役割をご存知ですか?
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足立 - 各家庭で使用した水が流れていく…場所ですよね。
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青木 - 下水道の基本的な役割は、汚れた水を家の排水管や下水管から下水処理場へ流し、きれいな水にして海や川に戻すことです。これにより、街を清潔に保ち、大雨などによる浸水から街を守っています。電気、ガス、水道と同様に暮らしを支えるインフラです。でも、そんな下水道も大地震により使えなくなる可能性があります。では、質問です!大地震が発生した直後、トイレへ行きたくなりました。自宅は断水していて、水が出ません。足立さんならどうしますか?(1)備えておいた災害用の携帯トイレを使用する。(2)自宅の水洗トイレを使用し、浴槽に貯めてある水で流す。
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足立 - 直後であれば、携帯トイレは今後に備えて、取って置き、浴槽に貯めていた水を使って、水洗トイレを使っちゃいます。
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青木 - では、その辺り、スペシャリストに詳しく伺いましょう!トイレを通して社会をより良い方向へ変えていくことをコンセプトに活動されているNPO法人 日本トイレ研究所 代表理事 加藤篤さんです。
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青木 - 先ほどの質問に対する、この二つの選択肢、(1)備えておいた災害用の携帯トイレを使用する。(2)自宅の水洗トイレを使用し、浴槽に貯めてある水で流す。どちらの行動が適切でしょうか?
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加藤 - 答えは、(1)の「携帯トイレを使用する」です。
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青木 - (2)自宅の水洗トイレを使用し、浴槽に貯めてある水で流す。これは、何がダメなのでしょうか。
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加藤 - 災害直後は、携帯トイレがいいんです。2番の場合、もしかすると、家の中の排水設備、それから下水処理場などが大地震により被害を受けている可能性があります。それなのに、無理やり流してしまうと、水を流した時に溢れたり、漏れたり、汚い水が逆流してしまうことも考えられます。人それぞれ違いますが、一日に、トイレに行く目安は大体5回と言われています。水や食料はある程度、我慢できると思いますが、排泄は待ったなしで我慢することができません。実際に、東日本大震災では、災害発生から3時間以内に「3割の人がトイレに行きたくなった」という調査結果もあります。
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足立 - 確かに我慢できませんよね。でも避難所へ行けば災害用の仮設トイレが利用できますよね?
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加藤 - 避難所の仮設トイレは、期待される一つではあります。ただ、東日本大震災の時に調査したところ、仮設トイレが避難所に行き渡るまでの日数、「3日以内に行き渡りました」という市町村は約3割だったんです。
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青木 - 中には、1カ月以上かかった自治体もあったそうですね。仮設トイレがすぐに設置できる、というのは、見込みが甘いということですね。
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加藤 - そうですね。一日に、トイレに行く目安は大体5回とお伝えしましたが、できれば、自分がトイレに行く回数を数えて欲しいです。私と青木さんは、回数が違うでしょうし、足立さんとも違うと思います。ただ、1人1日5回分とすると、それに合わせて、携帯トイレは、1人1日5回分、最低でも3日分は備えておいて欲しいと思います。仮設トイレが届かない場合を考慮すると1週間分は備えておいたほうが安心できるのではないかと思います。
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青木 - 4人家族なら3日分で60個、1週間分なら140個も必要になるんですね。
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足立 - 思ったよりも多く、準備しておいた方がいいですね。
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青木 - 1人1日5回分で計算していますが、だからと言って、トイレの回数を減らすことは他の問題を生み出す可能性がありますよね。
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加藤 - そうですね。トイレの回数を減らそうとすると、水分摂取や食事を控えてしまうことに繋がります。これらが原因で体調を崩したり、慢性的な脱水状態からエコノミークラス症候群を発症する恐れもあります。最悪、死に至る可能性もありますので、もしもの時のために携帯トイレは十分に準備しておくことが大切です。
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足立 - 携帯トイレの重要性は、十二分にも分かりました。災害時のトイレ対策は、携帯トイレを準備しておくこと以外にも、もちろん、あるんですよね?
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青木 - もちろんです!ここからは、今、避難所などで整備が進められている【マンホールトイレ】を深掘りしてまいります。
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足立 - 初めて聞いたんですけど【マンホールトイレ】って何ですか?
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加藤 - マンホールトイレは、避難所などにある災害トイレ用のマンホールの上に便器や仕切りを設置するだけですぐに使えるトイレです。オムツは流せませんが、トイレットペーパーや排泄物は下水道へ直接流れていくように整備されていますので、衛生的で臭いも少ないのが特徴です。
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青木 - 2020年度末時点で、全国におよそ3万9000基、整備されていて、東日本大震災の時は宮城県東松島市で、熊本地震の時は熊本市で実際に使用されました。
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足立 - いわゆる仮設トイレとは別のものなんですよね?
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加藤 - はい。仮設トイレは建築現場などで日常的に利用されるもので、繰り返し使用し、輸送にも耐えられるよう、ある程度、頑丈に作られています。そのため保管しておくことが比較的難しいです。一方、マンホールトイレは、その場にある物になりますので、外から運び込む必要がなく、便器や組立て式の仕切りなどを備蓄するだけなので保管場所を確保しやすく、災害発生時には、すぐに取り出して設置することができます。
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青木 - また、仮設トイレは便器の下に汚物を貯めておくタンクがあるので、便器が入口よりも一段高い位置にあり、高齢者や子供、障害のある方には不便な点がありますよね。しかし、マンホールトイレはマンホールに直接、便器を設置するので、段差が無く車椅子の方でも利用しやすくなっています。
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足立 - 段差が無いのは、良いですね。
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青木 - 最近整備された都心にある公園のマンホールに「このマンホールは災害時トイレになります」と書いてあるのを見かけたことがあります。
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加藤 - 災害用のトイレには様々なタイプがあります。それぞれの状況に応じて使い分ける、組み合わせるのがオススメです。例えば、災害が発生した直後は携帯トイレを利用し、その後は避難所のマンホールトイレや仮設トイレを利用するようにすれば、排泄を我慢して体調を崩すようなこともないと思います。
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青木 - あらかじめ自分が住んでいる地域にマンホールトイレが整備されているかどうかそれぞれの自治体に確認しておくと安心ですね。
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加藤 - またマンホールトイレの整備が整っている地域にお住まいの方は是非、地域の防災訓練などに参加して、マンホールトイレの場所、備品の保管場所、組立て方法を覚えておいてください。
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足立 - 組立ては住民が自分たちで行うんですか?
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加藤 - そうなんです。災害時は、人も足りず、自治体の方もすぐに駆け付けることが難しいです。大規模な災害が起こった時は地域の方々、全員が被災者です。一刻も早くマンホールトイレを設置するには、住民自ら行動することが必要です。マンホールトイレは一度、組立て方を練習しておけば、大人2名で15分もあれば設置することができます。
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青木 - 災害時のトイレ対策で、ほかに大切なことはありますか?
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加藤 - はい。これはマンホールトイレでも、仮設トイレでも、どちらも同じですが、みんなが気持ちよく利用できるように、利用者がトイレを清潔に保つよう心掛けることが大切です。避難所のトイレが不衛生だと、利用したくなくなりますよね。
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足立 - 仮設トイレやマンホールトイレが汚いと、より一層、トイレに行くのを我慢して、体調を崩してしまうかもしれませんよね。
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加藤 - トイレが不衛生だと、今は、新型コロナウイルスのこともありますが、それ以外にも、ノロウイルスなどの感染症が避難所に蔓延する恐れがあります。みんなで使うトイレですから、利用した後は次に利用する人のことを考えて汚してしまったら掃除をしてから退出するなど、心掛けて欲しいですね。避難生活は精神的にも体力的にも負担が強いられます。食べること、排泄することなど当たり前のことが普段以上に重要になります。災害時に慌てることがないように、日頃から災害時のトイレ対策をお願いします。
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足立 - 今日の話を聞いて印象に残ったのは、携帯トイレを多く備えておくことです。皆さんにも知って欲しいですし、自分自身にも言い聞かせていきたいと思いました。
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青木 - 平常時に準備しておくことが大切ですよね。
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足立 - 一度使ってみることも大切ですね。携帯トイレの使い方が分からないと、いざという時に、携帯トイレを使えない可能性が高いと思ったので、一回、使ってみたいなと思いました。
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青木 - 私は、最近増えているマンホールトイレが印象に残りました。組立ては、自分自身、住民自身が行うこと。ですので、地域で行っている防災訓練などに積極的に参加してみるという視点が大事なのではないでしょうか。
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