国土強靱化シンポジウムin熊本

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近年、激甚化・頻発する大規模な自然災害から生命と財産を守る「国土強靱化」をテーマに、
令和5年1月30日(月)、ホテル熊本テルサでシンポジウムが開かれました。

政府広報 内閣官房
国土強靱化シンポジウムin熊本
近年、激甚化・頻発する大規模な自然災害から生命と財産を守る「国土強靱化」をテーマに、令和5年1月30日(月)、ホテル熊本テルサでシンポジウムが開かれました。有識者らが自助、共助、公助の多面的な視点から、私たちの生命と財産を守るために、被害を最小限に食い止めるためのハード整備や災害リスクコミュニケーション、平時からの社会づくりなど、災害に強い地域づくり・ひとづくりに向けて議論を深めました。

開会挨拶
星野 剛士 国土強靱化担当副大臣
 気候変動により災害が年々、激甚化し、昨年も地震や台風、大雪や大雨による被害が全国で相次ぎました。国土強靱化は災害に強い国づくり・地域づくりをめざすものであり、その実現に向けて国、地方、企業、国民が一体となって取り組みを加速化、深化させなければなりません。このシンポジウムが、災害に強いコミュニティをつくる上で、自分に何ができ、何をなすべきかを、ご参加の皆様一人一人に改めて考えていただく機会になれば幸いです。

蒲島 郁夫 熊本県知事 
熊本県では平成28年熊本地震、令和2年7月豪雨の経験・教訓を踏まえて、県国土強靱化地域計画を令和3年12月に改定し、総合的な防災体制の整備に取り組んでいます。ハード面では流域治水の推進、交通ネットワークの整備、インフラの老朽化対策などを推進し、ソフト面ではマイタイムラインの普及を通した防災意識の醸成などに取り組んでいます。本日の内容をぜひ地域の皆様とも共有し、防災意識を高めていただきたいと思います。

基調講演
村山 一弥 内閣官房国土強靱化推進室次長 
国土強靱化とは~10年の歩みとこれから~
事前の防災対策に大きな効果
日本の防災・減災対策は、過去の大災害の経験を経て、防災から減災、そして国土強靱化へと深化してきました。東日本大震災の教訓を踏まえ、平成25年に国土強靱化基本法が議員立法で成立し、翌年、国土強靱化基本計画が決定されました。国土強靱化は、大規模災害が発生しても、経済社会システムが機能不全に陥らないよう、平時からハード・ソフトの取り組みを中長期的視点に立って進める「国家百年の大計」であり、国土政策・産業政策も含めた総合的な取り組みです。
近年の水害事例からは、事前に防災対策をした場合、その費用は実際の被害額と復旧費の合計額の20%弱との試算が出ています。気象災害の激甚化、頻発化に加えて、南海トラフなどの大規模地震が切迫するなか、国民の生命・財産を守るため、事前防災対策の加速化が必要です。
このため、平成30年度からの「3か年緊急対策」実施後、令和3年度から、123の重点対策を行う「5か年加速化対策」を進めており、実際の災害被害軽減の効果も発揮されています。河道掘削や堤防整備などの事前対策が行われた宮崎県の五ケ瀬川流域では、昨年の台風14号の際、平成17年の台風時と同程度の降雨量で浸水戸数は1176戸から49戸へ約96%も減少しています。
令和5年度は国土強靱化基本計画の見直し年にあたります。より実効性の高い国土強靱化を実現するため、社会情勢の変化や近年の災害で得た知見を計画に反映するとともに、都道府県や市町村、民間との連携を一層密にして取り組んでまいります。

個別講演
岡村 郷司 氏  熊本県知事公室危機管理監 
熊本県の災害対応について~平成28年熊本地震・令和2年7月豪雨~
経験・教訓を災害対応力強化へ
熊本県の災害対応は、平成24年7月の熊本広域大水害、平成28年熊本地震、令和2年7月豪雨の3つの大災害での経験・教訓が今につながっています。災害時の初動において、まず優先するのは「人命救助」「壊滅的被害の回避」「2次災害の防止」です。そして、「初動は迅速に」「関係機関との顔の見える関係」「ニーズを先読みした素早い対応・先行きの展望」が大事です。
 初動対応とは、①初動体制の確立(危機発生の覚知、職員参集、本部設置)、②情報収集(被害状況把握、通信の確認)、③関係機関との連絡調整(自衛隊、消防、警察、市町村、国など)、④救助対応となります。また、被災者の生活支援などの応急対応や、自助・共助による対応も大きな役割があります。
県では、熊本地震、令和2年豪雨災害の初動・応急対応について検証や振り返りを行い、公表しています。
 例えば、発災直後から政府現地対策本部との連携や物資のプッシュ型支援による早期の充足、被害の大きかった市町村を支援する職員の派遣や、令和2年の豪雨では、新型コロナ禍での対応なども行いました。他方、受援側の体制が未整備だったり、通信の途絶もありました。また、住民や消防団による救助活動など、自助・共助の取り組みが行われた地域があった一方、個人の備えなどが不十分だったり、平時の訓練やリーダー不足で十分に活動ができなかった地域もありました。
 現在、県では、予測力、予防力、対応力を身に着け、想定外を少なくするため、様々な災害対応訓練を実施しています。また、自助・共助の取り組みへの支援として、「マイタイムライン」の普及や、県登録の防災士アドバイザーの派遣などを実施しています。
 さらに、今春、新防災センターがオープン予定です。センターには展示・学習室を設置する計画で、専用サイトで公開中の災害デジタルアーカイブと合わせ、災害の経験、教訓をつなぎ、今後の災害対応に生かすこととしています。

パネルディスカッション
災害に強い地域づくりに向けて
~多様性を尊重し、変化に柔軟に対応できるコミュニティへ~
住民主体に、ステークホルダーと強固に連携

毛利 真に災害に強い地域をつくる上で、今後どんな心構えや取り組みが行政、企業、個人として必要になってくるのか議論を深めたいと思います。まず、熊本地震を経験された大西さん、久我さん、片岡さんからご発言ください。
大西 熊本地震では、避難者数が想定の3倍の11万人に上り大混乱を来しました。全国からの救援物資も避難所へ配送できず、公助の限界を痛感しました。これを教訓に、校区防災連絡会の結成と地域特性を生かした避難所運営マニュアルの作成など、平時から顔の見える関係づくりを推進しています。
「ネットワークが共助で力発揮」
久我 彰登 熊本商工会議所 会頭
久我 震災後、経済活動の復興に向けて、地震に特化した小規模事業者向け補助金や施設、設備の復旧を目的としたグループ補助金を遅滞なく申請し喜ばれました。その力となったのが商工会議所のネットワークで、不測の災害を乗り越えるには「共助がとても重要」ということを改めてかみしめました。
片岡 熊本地震本震の速報を見て、茨城から熊本の実家へ車を飛ばしました。育児中の妹からリクエストされた紙おむつや離乳食、ほかには東日本大震災の折、被災者から「あるとうれしい」と聞いたヘアゴムやペン、メモ紙などの日用品をたくさん持ち込んだところ、近所や親戚からも感謝されました。
毛利 被害を軽減するカギは、地域が連携して命を守る行動が取れるかどうかだと言われます。地域防災力向上に深く関わる専門家の皆さんから、その取り組みや提言をいただきたいと思います。
松尾 水害に脆弱な熊本県球磨村で、平成27年からコミュニティタイムライン策定や村民防災ブロック会議に携わっています。住民が主体となって災害対策を考え、行政との協働で強化を図る点が特徴です。防災意識が自ずと高まり、令和2年7月豪雨でも、素早い避難で人的被害を最小限に食い止めることができました。
「AI活用し災害リスク情報を発信」
三谷 泰浩 九州大学大学院 工学研究院 附属アジア防災研究センター 教授
三谷 避難指示発令などの判断材料となる災害リスク情報を、AI技術を活用してリアルタイムで提供するシステムを開発しています。災害リスク情報は「250㍍単位」「10分更新間隔」「12時間先まで予測」という精細さで、より迅速、より正確な判断を下すための強力なツールとなるでしょう。
浅野 近年、災害対策で重要となっているのは人と暮らしの多様性の視点です。少子高齢化や共働き家庭の増加により、地域活動の担い手不足が顕在化しているからです。女性も地域リーダーや災害対策本部に加わり、被災者支援に暮らしの視点などを反映させることで、対策の効率性や質を上げることができます。
毛利 「住民主体の防災による安全・安心の向上」「最新のデジタル技術を活用した災害リスク情報システムの構築」「多様な人材の参画によるマンパワー確保」という、防災を前進させるキーワードが見つかりました。続いて、今後の取り組みや抱負を、それぞれお話しいただければと思います。
「自分自身の強靱化も大切に」
片岡 安祐美 社会人野球クラブチーム監督・タレント
片岡 今日のシンポジウムを通して、「自分自身の強靱化も大切だ」と強く思いました。「災害は避けられない」を前提に過ごせば、いざというときに「こう対処する」「ご近所にこんな手助けができる」の心構えもできます。多くの人がこの意識を持つことで、コミュニティの防災力も自然と高まるでしょう。
久我 私ども鶴屋百貨店は、市民生活に欠かせない社会インフラであると胸に刻んできました。震災2週間後の4月29日、6月からの復旧再開を発表し、間に合わせました。コミュニティをつなぐ場としての機能も再認識し、非常時に皆さんのお役に立てるよう、2年かけて耐震補強の強化も行いました。
「教訓を伝承し真に災害に強いまちへ」
大西 一史 熊本市長
大西 災害時、市民の生命や財産、個人の尊厳などを守るために、昨年10月、市防災基本条例を施行しました。7年前の熊本地震の記憶や教訓を忘れがちという人が増え、コロナ禍で地域活動の参加率も低迷することへの危機感からです。条例を契機に、真に災害に強いまちの実現をめざしたいと思います。
松尾 災害に立ち向かうには、日頃の備えが肝心です。住民、消防団、町内会など地域の構成員を主体に、防災会議には行政や関係機関も加わり、それぞれの役割を確認しながら災害に強いまちづくりやひとづくりを進めて行くのです。私は、この取り組みを「コミュニティ・レジリエンス」と総称し、その普及に力を注ぐ決意です。
「コミュニティ・レジリエンス確立を」
松尾 一郎 東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター 客員教授
三谷 災害リスクに応じて私たちの行動は変わります。必要な備えも変わります。「自分の身は自分で守る」と同時に、地域が団結し、行政と市民、専門家なども参加してまちのリスクを知ることが大事です。こうして地区防災マップや地区タイムラインを作成し毎年見直すことで、地域の防災力が鍛えられます。
「多様性を認め、差別解消を」
浅野 幸子 減災と男女共同参画研修推進センター 共同代表・早稲田大学地域社会と危機管理研究所 招聘研究員
浅野 防災を考える上で、普段から社会の格差や不平など、差別をなくしておくことが重要です。被災者には弱者や性的マイノリティーの人、外国人もいます。根強い差別は彼らを萎縮させ、支援も届きにくくなります。多様性を認め合い、力を引き出す社会づくりを促進したいです。
毛利 国土強靱化の言葉からは、どうしてもインフラ整備をイメージしがちです。しかし、パネラーのお話のように、コミュニティ単位での地道な取り組みや継続的な支援がいかに重要であるかが分かりました。また、誰しも災害と無縁ではいられません。自分事として災害リスクにどう向き合うか、一人ひとりが考えるきっかけにもなったと思います。今日はありがとうございました。
(モデレーター)
毛利 聖一 熊本日日新聞社 役員待遇編集局長

詳しくは、政府広報オンライン 国土強靭化 検索
https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/kyoujinka230130/index.html
主催:内閣府
共催:熊本県、熊本市、熊本日日新聞社
後援:国土強靱化推進本部

画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで表示されます(PDFファイル:1.79MB)

2月28日
熊本日日新聞

 

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