「白馬バレー」の魅力を世界に伝える

カナダ出身のデイビッド・エンライトさんは、素晴らしい山々の景色と上質の雪が豊かにあることで知られるスキーリゾート地、長野県の「白馬バレー」の魅力を世界中から訪れる人々に伝えている。

長野県北部の北アルプス山麓に広がる『白馬バレー』は、そびえ立つ山々と上質のパウダースノーが人気のスキーリゾート地で、1998年の長野冬季オリンピックのいくつかのイベントの会場となった場所でもある。ここ10年ほどで、海外のスキーヤーの間で認知度が徐々に高まり、新型コロナウイルスの影響前は冬に20万人を超える外国人スキーヤーが訪れるまでになった。

カナダ出身のデイビッド・エンライトさんは、20数年来白馬バレーの素晴らしさを海外からの訪問客に伝えてきた。デイビッドさんが初めて来日したのは、千葉県の高校の交換留学生としての1か月間で、その後1年間日本で留学の機会を得た。白馬バレーの中心である白馬村に移住したのは1994年。後に結婚することになる日本人女性が、カナダの大自然に親しんで育ったデイビッドさんが暮らすために良い場所ではと考え、紹介したのが白馬村だった。

「白馬村は雄大な北アルプスに抱かれた地。初めて訪れた時は日本にもこんなに素晴らしい山岳風景があるのかと感動しました。何より良質で十分な量の積雪があり、大好きなスキーに最適な山だったのです」とデイビッドさんは話す。

デイビッドさんによれば、20年程前までは、スキーをするには北米やヨーロッパの山が最も良いというのが世界の常識だった。しかし、今では、特にオーストラリアやアジアの国々の人々にとって、北米やヨーロッパよりも近く、時差症候群(時差ぼけ)を気にしないですむ日本は、スキーをするのに最適な場所と考えられている。しかも、白馬バレーにあるようなスキーリゾートは、スキーをする場として質が高いことでも高い評価を得ている。白馬には、スキー初心者が楽しめるゲレンデが整備されているだけでなく、上級者も楽しめる約8,000メートルのロングコースもある。

デイビッドさんは、2000年に雪崩安全講習会などを開催するエヴァーグリーン・アウトドアーセンターの前身である個人会社を立ち上げた。同時に、アウトドアツアーを提供するガイドサービス業や英語で行われるスキースクールも始めた。エヴァーグリーン・アウトドアーセンターは、スキー場で滑るのとは違った楽しさが味わえるバックカントリースキー*のツアーやスノーシュー**を履いて散策するツアーなどの活動を催している。特に、バックカントリースキーは人気が高いという。

「白馬はバックカントリースキーを行う場所としては上級者向けの山です。地形、天候、雪の性質と、様々な条件を考えて滑る必要があるのでやりがいがあります」とデイビッドさんは言う。「ただ、雪崩(なだれ)が起こる可能性もあるので、十分に安全を確保した上でチャレンジすることが不可欠です」

デイビッドさんは、英語で行われるスキー教室やインストラクターコースを開催したり、カナダの雪崩対策の公認資格を持っていることを生かして、雪崩について、対策のための安全講習会などを開いている。子供の頃に雪崩に遭遇したことがあるデイビッドさんは、その怖さをよく理解しており、シーズン中は人々の安全のためにフィールドを巡り(まわり)、雪崩の危険性があれば事前の対策を施すなどの活動も行っている。

「自然がどれだけ偉大であるかを知るには、外に出て自然を楽しむのが一番良いです」とデイビッドさんは話す。「白馬には標高の高い山々、たくさんの雪、美しい湿原や湖、深い森、きれいな空気や水があり、心身ともに癒される場所です」

冬が終わり雪が溶けた頃、エヴァーグリーンアウトドアセンターは、グリーンシーズンの季節はキャニオニング***やカヤックなどのアドベンチャースポーツのプログラムを訪れた人々に提供している。今後は、子どもたち向けに、遊びを通じて自然を学べるような様々なプログラムを増やしていきたいとデイビッドさんは考えている。

* バックカントリースキーは、スキー場として整備されたエリア以外の場所で、リフトなどを使用せず、自力で山を登り、自然のままの雪山をスキーやスノーボードで滑る。
** 雪の上を歩くための歩行具
*** キャニオニングは、渓谷を歩き、登り、懸垂下降し、泳ぐなどして移動する登山の一種。