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February 2023

雪原を飛ぶカラフルな熱気球

  • 新潟県小千谷市「おぢや風船一揆」
  • 夜、ライトアップされる熱気球
  • 雪原の熱気球
新潟県小千谷市「おぢや風船一揆」

新潟県小千谷市(おぢやし)の真っ白な雪原と澄み切った青空に、色鮮やかな熱気球が舞い上がる。冬から春へ向かう頃の雪国の祭典である。

夜、ライトアップされる熱気球

日本の本州の日本海側北部、新潟県のほぼ中央に位置する小千谷市は、日本有数の良質な米の産地、そして豪雪地帯として知られる。この地で1977年に始まった「おぢや風船一揆」は、2日間に渡って真っ白な雪原にカラフルな熱気球が浮かぶ壮観なイベントだ。人口約3万3000人(2022年4月現在)の小千谷市に、新型コロナウイルスの流行前は国内外から数万人の見物客が集まっていた。今年は2月25日と26日に開催される予定となっている。

おぢや風船一揆が始まった当時、日本国内で熱気球が流行し、機体を手作りし、飛行する愛好家が各地で増えてきていた。

「小千谷市内で熱気球が飛行するようになったのは、1970年半ばです。冬になると田んぼに雪がぶ厚く降り積もる小千谷市は、飛行後の熱気球が、安全に着地できる場所が多いことから、熱気球を楽しむ絶好の場所として注目されるようになりました」と、小千谷市観光交流課観光係長の荻野隆太(おぎの りゅうた)さんは話す。

「雪原に着陸した熱気球を初めて見た地域の人たちは、見慣れない乗り物に驚くとともに、話題にもなりました。そこで、世界最大級の四尺玉花火(直径約120センチメートルの打ち上げ花火の玉の一種)を製造する小千谷市内の企業の社長(当時)が中心となり、地域を盛り上げるためにおぢや風船一揆が開催されたのが始まりです」

おぢや風船一揆の“一揆(いっき)*”とは、一つの目的のために一致団結すること。雪が降り積もる冬をみんなで乗り越え、無事に春を迎えようという地域の人々の思いが、このイベントの名に込められているのではないか、と荻野さんは話す。

雪原の熱気球

今年のおぢや風船一揆では、“泳ぐ宝石”ともたとえられる小千谷特産の色鮮やかな錦鯉が描かれた熱気球の試乗体験**が開催されるほか、県内外の愛好家チームの熱気球も飛行する予定だ。

また、毎年人気を集めているのが、初日の夜に開催される熱気球と花火による幻想的な光のショー「グローバルーンフェスティバル」。夜間の雪原に並ぶ5~8基の熱気球が音楽や号令に合わせて点火され、オレンジ色の炎が雪原に浮かび上がる。さらに熱気球の後方では、たくさんの花火が打ち上げられ、ショーを華やかに盛り上げる。その迫力に歓声が上がる。

「小千谷市は日本有数の米の産地です。このイベントのほかにも、冬はしぼりたての日本酒の新酒***や、新そば****、バラエティ豊かなラーメンなどおいしいものがたくさんありますから、ぜひ楽しみに来てください」と荻野さんは言う。

冬から春に向かうころ、小千谷に吹く南風にゆられ、熱気球は周囲の山並みを背に越後平野をゆっくりと飛んで行く。おぢや風船一揆は、地域の人々にとって春を呼ぶ大切なイベントとなっている。

* 日本語においては、領主などに反抗して、農民らが団結して起こした暴動を指す意味もあるが、心を一つにすること、一致団結の意味もある。
** 小千谷市民優先の抽選制
*** 直近の秋に収穫されたお米で醸した日本酒。冬場に出回る。
**** 直近の秋に収穫された「蕎麦の実」で作った日本そば