January 2023
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世界遺産・富士五湖の魅力
富士山の北の麓(ふもと)にある五つの湖を総称して「富士五湖(ふじごこ)」と呼ぶ。このエリアでは、富士山の間近で、釣り、キャンプ、トレッキング、温泉などを楽しめ、一年を通じて多くの人々が湖を訪れる。
富士山の北の麓には「富士五湖」と名付けられた五つの湖からなるエリアがある。その五つは、西から順に本栖湖(もとすこ)、精進湖(しょうじこ)、西湖(さいこ)、河口湖(かわぐちこ)、山中湖(やまなかこ)で、富士箱根伊豆国立公園*に含まれ、それぞれが世界遺産の構成資産にもなっている。かつて富士山の周囲にはいくつか大きな湖があり、それが当時の富士山の噴火に伴う溶岩流によって分断されたり、せき止められるなどの過程を経て現在の富士五湖が形成されたと考えられている。
「富士五湖の、大きな魅力は、湖の向こうに大きくそびえ立つ富士の眺めの素晴らしさでしょう」と話すのは一般社団法人富士五湖観光連盟の専務理事を務める上野裕吉(うえの ゆうきち)さんである。「しかも五つの湖は周囲の景観や地形が異なるため、私たちはそれぞれ個性的な眺めを味わうことができます」
富士五湖は、首都圏から近く、鉄道やバスで簡単にアクセスできることから、人々が気軽に楽しめる観光地として人気を博している。特に、桜や紅葉の名所も多く、春や秋には、それらと富士山の心躍るような競演を楽しむことができる。また、それぞれの湖では釣り、カヤックやウインドサーフィンなどができるほか、周辺地域では、トレッキングや温泉も楽しめ、スキー場やスケート場、キャンプ場などのアウトドアレジャー施設や、美術館や博物館も点在しており、季節ごとに何度訪ねても決して飽きることはない。
そして、富士五湖の湖面に映る富士山の姿を楽しめ、一年のある時期には、稀有な景色にも出会えることがあるという。「これは、よその土地にはない特別なものだと思います」と上野さんは語る。富士山の山頂と日の出あるいは日の入りの太陽が重なる瞬間に、太陽光がダイヤモンドのように輝く現象を「ダイヤモンド富士」と呼んでいる。富士五湖の一つ、山中湖では10月半ばから2月末頃までの日没時、本栖湖では12月下旬から1月上旬の日の出時、気象条件に恵まれれば、富士山の山頂でダイヤモンドのように輝いた太陽が湖面に映り込む「ダブルダイヤモンド富士」というさらに稀な現象を見ることができるという。
上野さんは、そのような神秘的な姿を見せる富士山への信仰と富士五湖との関わりについて説明してくれた。「17世紀から300年あまり続いた民間信仰『富士講**』でも富士五湖は重要な役割を果たしてきました。富士講の参加者は富士五湖や、近くの忍野八海(参照)などを巡って、身を清めてから、聖なる山への参拝登山へと向かったのです」。こうした歴史的背景もあって富士五湖は、2013年に『富士山-信仰の対象と芸術の源泉』の構成資産の一部としてユネスコの世界遺産に登録されることになったのである。
富士五湖を巡って、日本人の信仰と驚きの対象ともなった富士山の神秘性を感じるような旅もおすすめだ。
- * Highlighting Japan 2018年1月号「富士山の麓を巡って」参照 https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/201801/201801_13_jp.html
- ** 富士山を崇拝する人々によって組織された講社