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  • 蔦沼の湖面に映る彩り豊かな紅葉

September 2021

湖面を焦がす青森の紅葉

蔦沼の湖面に映る紅葉

青森県十和田市にある蔦沼(つたぬま)は、赤く紅葉した木々が、水面にそのまま鏡のように映り込み、美しい絶景を生み出す。

蔦沼の湖面に映る彩り豊かな紅葉

日本の東北地方北部の山岳地帯に広がる十和田八幡平国立公園には、活発な活動を続ける火山や手つかずの原生林に囲まれた湖沼群など、風光明媚な景勝地が数多く点在する。蔦沼もその一つで、特に近年、紅葉の素晴らしさで人気を集めている。一般社団法人十和田奥入瀬観光機構の三戸瑠衣(さんのへ るい)さんは蔦沼の魅力を次のように語る。

「蔦沼の人気の理由は、何よりも水面が、水鏡となって映し出す紅葉の美しさにあります。ただ、これは早朝の限られた時間帯や気象条件でしか見られない、とても貴重な眺めなのですよ」

10月初旬に、蔦沼から望む八甲田連峰の山頂が色づき始めると、麓へ向かって赤い絨毯が徐々に広がってゆく。空気が澄み、晩秋に差しかかる頃、それは七つの沼からなる「蔦七沼」と称する一帯に到達する。そして、最も大きい周囲約1キロメートルの蔦沼の紅葉がピークを迎える10月下旬、夜が明け、沼に朝日が差し込むとブナやカエデなどの木々が朝日に照らされて、赤く色づき、燃え上がるように浮かび上がる。そして、風のない日には蔦沼の湖面が水鏡となって、その鮮やかな色を映し出す。この「奇跡の絶景」とも呼ばれる光景に、実は三戸さん自身、まだ一度しか出会ったことがないという。

八甲田連峰の南にある蔦温泉を起点として蔦沼と六つの沼を結ぶ一周約2.8キロメートルの自然観察路や展望デッキが整備され、紅葉の季節はもとより、大小様々な沼やブナの原生林が織りなす四季それぞれの変化に富んだ自然の美しさを散策しながら堪能することができる。

しかし、早朝の蔦沼の美しい紅葉がメディアやSNSで盛んに紹介されたことで、昨今はオーバーツーリズムが起き、周辺環境への影響を心配する声が高まった。そこで、新型コロナウイルスの感染状況も踏まえて、2020年から、紅葉シーズンに限って早朝時間帯の蔦沼展望デッキへの入場は事前予約制としている。

こうした取組により、蔦七沼の自然環境が後世へ受け継がれていき、蔦沼の紅葉が、これからも長きにわたって人々を感動させることができることを、三戸さんは願っている。

蔦沼の湖面に映る空と紅葉