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  • 2016年、日本とシンガポールとの国交50周年の記念行事としてシンガポールで開催されたGardens by the Bay “Blossom Beats”
  • IZUMI GARDENさくら祭り2020
  • 西畠清順さん
  • 第34回国際眼科学会

April 2021

桜の花を咲かすプラントハンター

2016年、日本とシンガポールとの国交50周年の記念行事としてシンガポールで開催されたGardens by the Bay “Blossom Beats”

40か国以上を訪れ、数々の珍しい植物を探して、国内外に広めてきた、プラントハンターの西畠清順(にしはた せいじゅん)さんに、桜に寄せる情熱を尋ねた。

西畠清順さん

西畠清順さんは、様々な人々から依頼を受けて世界中から多種多様な種や大きさの植物を求め世界中を探索するプラントハンターである。また、「人の心に植物を植える」をスローガンに、造園から、植物をテーマにしたイベントのプロデュース、開催など、植物に関連した多岐にわたる活動を展開している。

40か国以上を訪れて数々の珍しい植物を扱ってきた西畠さんにとっても「桜は特別」なのだという。

「これほどカリスマ性のある植物はなかなかないと思っています。日本人の多くがその美しさに心を寄せ、春になれば“今日は開花するだろうか”と花時を気にし、古くから和歌にうたわれ、絵画に描き続けられてきました。多くの品種があることも、それだけたくさんの人が桜を愛し、園芸家が情熱を傾けた結果だと思います」

IZUMI GARDENさくら祭り2020

そう語る西畠さんの桜との忘れられない思い出は、2016年に開催されたシンガポールと日本の国交50周年の記念行事として、日本を象徴する「桜の花」を見るイベントを開催したいとシンガポール政府から依頼された時のこと。だが、桜が開花するのに適している時期は、春とはいっても、まだ冬の寒さが残る頃である。そのため、常夏の地、シンガポールに桜を持って行き、咲かせるまで育てることは難しい。そこで、西畠さんは、日本中からたくさんの品種の桜を集めて開花調整をして、常夏の地でイベントの日時に見事に花を咲かせてみせ、シンガポールの首相始め関係者の称賛を浴びた。

「桜は冬の寒さを越さないと花を咲かせません。桜の枝を保管する間、温度を下げるなどして開花調整を行いますが、桜の品種や育った場所などによっても扱いが異なります。個々の桜について、花を咲かせるための適切な温度や調整期間を分かり得るからこそできます。こうしたイベントは、私の腕の見せ所です」

第34回国際眼科学会

実は西畠さんの実家は、150年以上続く老舗の植木卸問屋。「約100年前、すでに曾祖父は花の開花調整の『第一人者だったんだぞ』と聞いて育ちました」と、自信の技のルーツを教えてくれた。

「開花調整を100回成功させても1度失敗すれば信頼を失ってしまいます。ですから毎回気が抜けません」

西畠さんは「現在のように日本に来たくても来ることができない時にこそ、海外各地に植樹された桜が親善大使の役割を果たしてくれるのではないかと思っています」と語る。

もうすでに、西畠さんは、海外でのイベントの演出による、まだ見ぬ笑顔に思いをはせている。