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  • 人気の柄を施した江戸切子
  • 回転する砥石にガラスの器を押し当てて文様を作る。
  • 最新デザインの江戸切子

January 2021

ガラスに刻まれる文様の輝き

人気の柄を施した江戸切子

東京の伝統工芸品「江戸切子」。西洋へのあこがれに始まるガラス器に日本独自のデザインの輝きが浮かび上がる。

回転する砥石にガラスの器を押し当てて文様を作る。

ガラスの表面を削ることで文様をつくり出すカットグラス「江戸切子」は、江戸時代(1603~1867)の後期に西欧から日本にもたらされたガラスの器の美に憧れ、それを日本でも再現しようと工夫を重ねたのが始まりである。その結果、切子(きりこ)と呼ばれる技法が生み出された。

江戸切子は、ガラス器の販売を行っていた加賀屋久兵衛が、1834年に創始したと伝えられる。国をあげて近代化が進められた明治時代の初期1881年には、日本初の洋式ガラス工場を政府が設置し、イギリス人の指導者を招き、技術導入によって、現代につながる技法が確立された。

現在の江戸切子の文様は、高速で回転する砥石にガラス器を押し当てる手仕事によってつくられる。文様は、日本の伝統的な文様や意匠も取り入れられて、独自のデザインが施されている。例えば、魚の卵を表す伝統的な文様の魚子文(ななこもん)は、日本では子孫繁栄の願いが込められる。そのほか、伝統的で縁起の良い文様から菊籠目文、矢来文、麻の葉文、亀甲文などが刻み込まれている。さらに新しい文様と形状の意欲的な新作が発表され、その表現も多彩さを増している。

最新デザインの江戸切子

「切子は、キラキラ光を反射する、宝石のような輝きが美しい。漆器や陶器に比べれば、切子は伝統工芸としての歴史が浅いです。それゆえ、現代の文化や生活様式に柔軟に対応して、新しいことへも挑戦しています」と、江戸切子協同組合広報部の清水祐一郎さんは、その魅力を語る。

最近、特に注目されるのは、「和食」や「酒」の器としての江戸切子である。ガラスの器の透明感は涼しさを与えるとして、夏季を中心に、季節感や盛りつけの美しさを大切にする日本料理に使われてきた。

日本酒の冷酒には、シャープな印象の江戸切子のグラスがよく似合う。店の雰囲気や料理に併せて、店と共同で切子の器をオーダーメイドする試みも増えている。日本料理や日本酒が海外で浸透するにつれて、江戸切子は日本らしさを表現する器として新たな役割を担い始めている。

伝統的な江戸切子の文様のタイル